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「情報の科学と技術」2017年7月号 (67巻7号). 特集= 特許情報と人工知能(AI)

特集:「特許情報と人工知能(AI)」の編集にあたって

新聞やインターネットでは,毎日のように人工知能(AI:artificial intelligence)に関する記事が掲載されており,最近ではチェス・将棋だけでなく,より複雑といわれる囲碁で対局しても,名人に勝利できるほどに進化しているようです。日本国特許庁(JPO)でも,将来,人工知能を業務システムに組み込むことを検討していることについて,「特許庁における人工知能(AI)技術の活用に向けたアクション・プラン」や,「人工知能技術を活用した特許行政事務の高度化・効率化実証的研究事業」などの資料にて公表しました。また,ここ数年の間には,人工知能を用いて特許情報を分析・解析するというシステムが,各情報提供事業者より発表され,業務の効率化やユーザの問題解決に利用する動きが始まりました。
一方で,数年前に話題となったオックスフォード大学の論文で,コンピュータ(人工知能)によって「消える職業」「なくなる仕事」として,サーチャーが上位にランクされたこともあり,特許情報の検索者とその業務は,人工知能によって,少しずつ業務の範囲を狭められていくのか,それとも共存していくのかについても,興味のあるところだと思います。
そこで,今号では特許情報と人工知能(AI)というテーマで,人工知能という技術を特許情報に対しどのように適合させていくのか,あるいは,特許情報を人工知能というフィルタに通した場合,どのような知見をえられるのかについて,参考となる特集を企画しました。
はじめに,桐山勉氏と安藤俊幸氏の共著による総論によって,現状における特許情報と人工知能の全体動向について論じていただきました。つづいて,岩本圭介氏には人工知能を用いた情報処理システムの概念と株式会社NTTデータ数理システムにおける分析ツールへの取組みについて,鈴木祥子氏には特許文書解析へのアプローチ方法と課題について,藤田肇氏には独自開発の人工知能エンジンについて,その開発の経緯や実務への応用例など,太田貴久氏には,特許情報を人工知能に適用させる際の問題点について,田辺千夏氏には,サーチャーとシステムユーザーという複数の視点から,人工知能というツールをどのように利用するのかについて,それぞれ解説をいただきました。
今回の特集が,「人工知能」というツールに興味をもたれている方の参考になるだけではなく,既に利用されている方にも新しい何かに気づくきっかけになっていただくことになれば幸いです。

(パテントドキュメンテーション委員会)

特許情報と人工知能(AI):総論

桐山 勉*1,安藤 俊幸*2 情報の科学と技術. 2017, 67(7), 340-349. http://doi.org/10.18919/jkg.67.7_340
アジア特許情報研究会 知財情報解析研究グループ
*1きりやま つとむ はやぶさ国際特許事務所,顧問
〒503-0983 岐阜県大垣市静里町
*2あんどう としゆき 花王株式会社 研究開発部門 知的財産部部
〒131-8501 東京都墨田区文花2-1-3        (原稿受領 2017.4.18)
人工知能の第三次ブームによりこの2~3年で巷の会話の中にでも頻繁に人工知能(AI)という言葉が聞くようになった。畳込み深層学習の進歩によりイメージネット大規模視覚認識コンテストの正解率が95%を超えた。更に,画像を見て言葉概念を理解する高度なレベルの研究が盛んになりつつある。AIの多方面への応用研究が急激に加速され,特許情報をその研究対象にすることに着目されるまでに至った。米国特許商標庁での先行技術調査への活用研究が盛んになって来た。プロバイダーでもその応用を特許情報サービスに活用しようと盛んになって来た。ここで,特集号にちなみ総論を纏める。
キーワード:特許情報,人工知能,知能,畳込みニューラルネットワーク,子供の人工知能,大人の人工知能,三極の動向,プラットフォーム,インターフェース

AIの要素技術としての機械学習,その特許情報への適用

岩本 圭介 情報の科学と技術. 2017, 67(7), 350-354. http://doi.org/10.18919/jkg.67.7_350
いわもと けいすけ 株式会社NTTデータ数理システムデータマイニング部
〒160-0016 東京都新宿区信濃町35番地信濃町煉瓦館1階 E-mail: iwamoto@msi.co.jp        (原稿受領 2017.4.10)
近年発展の目覚ましい人工知能は,様々な要素技術の集合体から構成されている。人間が知能を用いて行う活用をコンピュータに実現させるという課題において,機械学習の技術は中核をなす要素である。当社(株)NTTデータ数理システムは,適用分野と問題設定に応じた機械学習のツール群を開発・販売し,またそれらのツールを用いたコンサルティング等のサービスを通じて顧客の問題解決にあたっている。本稿では,こういった当社の取組みを紹介するとともに要素技術の概観を行い,機械学習技術の特許情報・技術文書に対しての適用例について述べる。
キーワード:機械学習,データマイニング,テキストマイニング,日本語解析処理,ルール抽出

機械による特許分析の課題とアプローチ

鈴木 祥子 情報の科学と技術. 2017, 67(7), 355-359. http://doi.org/10.18919/jkg.67.7_355
すずき しょうこ 日本アイ・ビー・エム 東京基礎研究所
〒103-8510 東京都中央区日本橋箱崎町19番21号 E-mail: e30126@jp.ibm.com        (原稿受領 2017.4.28)
本稿では,近年注目を浴びている自然言語処理の手法を特許分析に適用する際の課題をまとめ,各課題に対するアプローチの例を示す。特に,特許特有の情報へのアプローチには,特許の専門家の知見を組み込んだ手法が有効であることが分かってきた。一方で,課題によっては分析者と機械との対話的な分析によるアプローチが適していることも議論する。
キーワード:自然言語処理,請求項構造解析,キーワード抽出,大量データ

人工知能エンジン「KIBIT」を用いた自然言語処理と特許調査への応用

藤田 肇 情報の科学と技術. 2017, 67(7), 360-365. http://doi.org/10.18919/jkg.67.7_360
ふじた はじめ 株式会社FRONTEO 行動情報科学研究所 技術戦略課
〒108-0075 東京都港区港南2-12-23明産高浜ビル E-mail: tech_strat@fronteo.com        (原稿受領 2017.4.19)
「人工知能」は,次世代の情報処理技術として現在多くの注目を集め,様々な従来産業の形態を大きく替えようとしています。本稿では,FRONTEOが独自開発した人工知能エンジン「KIBIT」の特徴とその搭載製品を紹介します。また,KIBITが特許調査の実務において専門家をサポートする特許調査・分析システム「KIBIT Patent Explorer」と当社の取り組みを説明し,AIが変える未来の特許実務を紹介します。
キーワード:人工知能,KIBIT,自然言語処理,特許調査,Patent Explorer

機械学習等の情報技術を用いた特許調査について

太田 貴久 情報の科学と技術. 2017, 67(7), 366-371. http://doi.org/10.18919/jkg.67.7_366
おおた たかひさ 株式会社アイ・アール・ディー/IRD国際特許事務所
〒105-0001 東京都港区虎ノ門5-13-1 虎ノ門40MTビル9F E-mail: tota@ird-pat.com        (原稿受領 2017.6.1)
近年,深層学習をはじめとする機械学習技術の発達により,様々な分野で機械学習を用いた業務の効率化が進められている。特許分野もその例外ではなく,人工知能を利用して特許関連業務を効率化する研究や製品,サービスの展開がはじまっている。本稿では,「自社・他社の強みや弱みの分析」や「特定の開発目的や特定の技術に関する出願動向の把握」といった目的の特許調査に対して,機械学習を含む様々な情報技術を活用し,1) 大量の特許文献から調査対象となる文献を探し出し,2) 探し出した文献から自動的にパテントマップ生成する方法について紹介する。
キーワード:機械学習,人工知能,自然言語処理,パテントマップ,特許分類

ビッグデータ時代における特許情報調査への人工知能の活用

田辺 千夏 情報の科学と技術. 2017, 67(7), 372-376. http://doi.org/10.18919/jkg.67.7_372
たなべ ちなつ 昭和電工株式会社 法務・知的財産部 知的財産グループ
〒105-8518 東京都港区芝大門1-13-9 E-mail: tanabe.chinatsu.xhqoy@showadenko.com        (原稿受領 2017.4.26)
現在の第3次人工知能ブームは,情報の蓄積が爆発的に進んだことと情報処理能力が向上したことがきっかけとなっている。特許情報も例外ではなく,特許調査・解析分野への人工知能の応用は既に始まっている。筆者の所属企業である昭和電工(株)でも数年前から人工知能の特許調査分野への応用に着目しており,Patent Explorer,XLPATといった人工知能を用いた商用ツールの導入により特許調査の効率化,自動化を推進している。本稿ではシステムユーザーとしてこれらのツール導入にあたっての期待効果,使用感ならびに今後の展望を紹介する。
キーワード:特許調査,人工知能,AI,ビッグデータ,効率化,自動化,知識創出

新規課題抽出からの商品開発提案~「高齢者」をテーマとして~

3i研究会 第3期東京Cグループ 正角 彰朗*1,東 智朗*2,矢部 悟*3,伏見 祥子*4,橋本 正義*5 情報の科学と技術. 2017, 67(7), 377-382. http://doi.org/10.18919/jkg.67.7_377
*1しょうかく あきお 積水化学工業(株)
*2あづま ともあき (株)ライズ
*3やべ さとる (株)日立ハイテクサイエンス
*4ふしみ さちこ 昭和産業(株)
*5はしもと まさよし
〒300-4292 茨城県つくば市和台32 E-Mail: shoukaku002@sekisui.com        (原稿受領 2016.9.26)
「高齢者」をテーマとして,新規課題抽出の手法および経営者向け商品開発提案の手法を提案した。本手法の狙いは,特許と非特許情報の件数対比によって未開拓市場(ブルーオーシャン)における課題を見つけることである。「特許件数が少なく非特許文献が多い分野は,社会的関心が高い分野でありながら開発が未成熟なブルーオーシャンに属する」という考えに基づき検討を行った。抽出された新規課題に基づく商品開発提案では,「①顧客,②顧客ニーズ,③目標売価,④市場規模,⑤参入障壁構築」に基づいて検討されるべきであり,その方針のもと,歩行補助装置を事例として取り上げ,商品開発提案のフォーマット化を試みた。
キーワード:課題抽出,ブルーオーシャン,非特許文献数,特許文献数,商品開発提案

次号予告

2017.8 特集=図書館の人材育成
(特集名およびタイトルは仮題)

  • 総論
  • 慶應義塾大学における図書館員の海外研修への取り組み
  • レファレンス・ライブラリアンを育てるのは誰なのか?
  • 目録技術に未来はあるか
  • インフォプロ人材育成への新たな視座

など

「情報の科学と技術」2017年6月号 (67巻6号). 特集= 海外における日本研究

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