「情報の科学と技術」2016年12月号 (66巻12号). 特集= インフォプロの仕事術

特集:「インフォプロの仕事術」の編集にあたって

2016年最後の特集は「インフォプロの仕事術」です。「働き方改革」というキーワードとともにライフワークバランス,テレワーク,ダイバーシティなどといったキーワードを耳にすることが多くなりました。それに加えて,デジタルコンテンツの増加,便利なウェブサービスの登場,度重なる人員削減,求められるスキルの変化,業務の多様化など,インフォプロを取り巻く環境は日々変化しています。こうした変化の中,インフォプロとして変わらずに仕事に取り組んでいくためには,効率的な作業方法から始まって,組織としての仕事の在り方に至るまで,個人や組織といった様々なレベルで仕事・生活の見直しを行っていく必要性が高まることは想像に難くありません。本特集号タイトルでの「仕事術」は様々なレベルでのノウハウや仕組みを包含した言葉として使用しています。一人一人がすぐに取り組むことができる仕事術が存在する一方で,組織全体で取り組む仕事術,あるいは課外活動や研修などの外部組織や人脈から良い循環を生み出していくことのできる仕事術もあるだろうと考え,様々な立場から執筆いただきました。
田島氏には,日本マイクロソフト社の働き方改革として位置付けられている「フレキシブルワークスタイル」について解説いただきました。オフィス空間のリニューアルやICTを効果的に活用した働き方などが,業務効率や生産性の向上だけでなくダイバーシティ推進につながり,さらにイノベーション創発も期待できるという社内業務分析も合わせて執筆いただきました。
屋ヶ田氏には,情報科学技術協会が主催している3i研究会へ1期と2期にそれぞれ参加され,研究会での成果を所属組織の分析へと発展させていった経緯と分析内容をご自身の仕事術とともに執筆いただきました。
是住氏には,京都府立図書館の職場内自主学習グループ「ししょまろはん」がどのように走り始め,メンバーのアイディアを実現するために内部そして外部の人を巻き込んで,活動の裾野を広げてきたのかをその活動内容の紹介とともに執筆いただきました。
山﨑氏には情報科学技術協会の研修事業について解説いただきました。開催されているセミナー・見学会の種類やここ数年の開催情報とともに企画の意図や参加された方の感想なども交えご紹介いただきました。
最後に,6名の図書館員に集まっていただき「インフォプロの仕事術」をテーマとした座談会を開催し,その様子を記事としてまとめました。誰もが経験をする引継から始まり,仕事での工夫,ストレス解消方法,最後はキャリアパスについて存分に語っていただきました。
本特集号が読者のみなさまにとって仕事やプロジェクト,そして生活をますます充実させていくためのノウハウあるいはヒントとなれば幸いです。

(会誌編集担当委員:長屋俊(主査),田口忠祐,畑野繭子,福山樹里,水野翔彦,研修委員会)

「働き方改革」と日本マイクロソフトの「フレキシブルワークスタイル」

田島 定尚 情報の科学と技術. 2016, 66(12), 608-611. http://doi.org/10.18919/jkg.66.12_608
たじま さだひさ 日本マイクロソフト株式会社
〒108-0075 東京都港区港南2-16-3 品川グランドセントラルタワー        (原稿受領 2016.9.20)
日本マイクロソフトでは,働き方改革のリーディングカンパニーを標榜し,グローバルなインフラを活用しつつ日本独自の制度整備も進め,マイクロソフトのOffice 365を始めとしたICTを効果的に活用することで「フレキシブルワークスタイル」を全社で実践している。またテレワーク週間を主催し,賛同企業と共に社会全体の働き方改革に取り組んでいる。これらの事例の紹介を通じて,今働き方改革が必要とされる背景や,推進するためにどのような取り組みが必要と考えられるのか,また働き方改革が企業経営にもたらす効果とその検証結果などについて解説する。
キーワード:日本マイクロソフト,働き方改革,フレキシブルワークスタイル,テレワーク,Office 365,ダイバーシティ,一億総活躍

多様性を活かしながら個性を発揮するアダプタに

屋ヶ田 和彦 情報の科学と技術. 2016, 66(12), 612-614. http://doi.org/10.18919/jkg.66.12_612
やがた かずひこ 住ベリサーチ株式会社 技術調査部
〒140-0002 東京都品川区東品川二丁目5番8号天王洲パークサイトビル E-mail: yagat@sumibe.co.jp        (原稿受領 2016.9.9)
これまでの経験と,情報科学技術協会の3i研究会での活動,それを活かした社内での取り組みを紹介し,私の仕事に対する思いや姿勢について述べた。私は,様々な仕事や所属部署に就く事ができ,様々な業種の多様な人材が集まって創造する事の楽しさ,難しさを数多く経験させてもらってきた。できるだけ幅広い分野の人と出会い,コミュニケーションを取りながら,互いに考え話しあう事で,新しい考えが浮かびイノベーションへと結びついて行くのだと思う。そしてこれまでの体験を活かして,「この人の調査なら」と顧客に信頼されるような,調査の専門家:インフォプロを目指したいと考えている。
キーワード:3i研究会,仕事術,INFOPRO,イノベーション,異業種交流

やりたいことを仕事にしよう!ししょまろはん流仕事術

是住 久美子 情報の科学と技術. 2016, 66(12), 615-618. http://doi.org/10.18919/jkg.66.12_615
これずみ くみこ ししょまろはん(京都府立図書館勤務)
〒606-8343 京都市左京区岡崎成勝寺町9 E-mail: korezumi@gmail.com        (原稿受領 2016.9.21)
職場内自主学習グループ「ししょまろはん」は,業務では出来ないメンバーのアイデアをいくつか実現させてきた。「ししょまろはん」は,司書としての専門性を活かしつつ,みんなの役に立ち,自分たちも楽しんで取り組めるアイデアを出し合い,それを試すことが出来る場であり,正職員や非常勤職員の関係を越えて対等に意見を出し合える職場内のサードプレイスにもなっている。また,ウィキペディアタウンなどの外部のコミュニティ活動に司書として参加し,役割を果たすことで新たな図書館の可能性に気付くこともある。取り組みの一部は,外からの評価や中の理解を得て,業務として取り組むことができるものも出始めている。ボトムアップでやりたいことを仕事に近づける一つの方法として事例を紹介する。
キーワード:学習会,専門職,公共図書館,ウィキペディアタウン,エンベディッド・ライブラリアン,コラーニング,フューチャーセンター,図書館計画,非常勤職員

インフォプロであり続けるために-一助としてのINFOSTA研修事業-

山﨑 美和 情報の科学と技術. 2016, 66(12), 619-622. http://doi.org/10.18919/jkg.66.12_619
やまざき みわ 国立研究開発法人科学技術振興機構
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3 サイエンスプラザ        (原稿受領 2016.9.25)
IT技術の加速度的な進歩とともに,インフォプロを取り巻く環境と役割は大きく変化し続けている。その変化にいつでも対応できるよう,スキルアップやブラッシュアップ,人的ネットワークを広げる機会として,また人材教育として,活用してほしいINFOSTA研修事業を紹介する。
キーワード:インフォプロ,情報専門職,自己研鑽,研修,人的ネットワーク,人材教育

次号予告

2017.1 特集=「電子書籍」
(特集名およびタイトルは仮題)

  • 総論:電子書籍の今
  • 各論1:専門知の協同化のためのコンテンツ,メディア,ビジネスを求めて
  • 各論2:慶應義塾大学における電子書籍の取り組み
  • 各論3:公共図書館における電子書籍サービス
  • 各論4:米国大学図書館における電子書籍サービス
  • 連載:情報分析・解析ツール紹介

など