「情報の科学と技術」2016年5月号 (66巻5号). 特集= 第12回情報プロフェッショナルシンポジウム

第12回情報プロフェショナルシンポジウムを振り返って

情報プロフェッショナルシンポジウム(INFOPRO)は,2004年に科学技術振興機構と情報科学技術協会により,それまで個別に開催されていたシンポジウムや研究集会を統合して,お台場の日本科学未来館で初めて開催されました。
それ以来,毎年開催され,昨年の12月の情報プロフェッショナルシンポジウムで12回目となりました。本年より,6年間の長きにわたりINFOPRO実行委員長を務められた山崎久道氏に代わり,担当いたしました。
本シンポジウムは,情報検索とその手法,サーチャーの業務,知財情報と価値評価,情報解析やデータマイニング,情報の評価,図書館業務と情報サービス,電子ジャーナル,電子化関連業務,インデクシング,情報の組織化,情報管理の方法とシステム,組織内情報共有化のためのシステム,情報マネージメント,情報リテラシー教育と情報調査・訓練・研修,情報担当者のプレゼンスなど,幅広く知識や情報にたずさわる関係者が全国から一堂に会し,日頃の研究成果の発表と討論を行い,情報を交換する場となっています。
これらの情報に携わる関係者からの研究発表のほか,その時期に適したトピックスを取り上げた特別講演やパネルディスカッションが実施されてきました。
本シンポジウムの基本骨格は,山崎久道氏が委員長として6年間の長きにわたり担当されるなかで確立してきたと言えます。ただし,山崎前委員長も指摘されていましたが,今後の変化に対応して,様々な新たな試みも期待されるところです。
この10年間で,各種情報のデジタル化は一層進展し,情報の専門家の役割も重要性を増し,また,業務の内容も大きく変わってきています。
このような時期に,本年の特別講演では,弁護士の福井健策先生から「ウェブ世論と著作権の新たなリスク」について取り上げていただきました。従来のマスメディアによる世論の形成に変わり,新たな形でのウェブ上のSNSなどを通じての新たな世論「ウェブ世論」の形成が大きな影響を及ぼすような時代が来ていること,そのことが従来の考え方だけでは対処ができないことが具体的な事例を通じて示されました。
また,トーク&トークでは,「ビッグデータの拡がりとインフォプロ向け活用の実際」をテーマにして,3名の話題提供者からの報告をもとに,活発な質疑が行われました。ビッグデータやクラウドコンピューティングなどが日常生活にまで入り込んでくる時代に,情報の専門家がこの新たな状況をよく理解し,活用できる知識を身に着けるうえで大変参考になったとの意見が参加者から出されていました。
本シンポジウムの中心になっている情報の担当者や専門家による研究発表は,本年も2日間にわたり合計で29件があり,全体として活発な質疑が行われました。
本年から新たな試みとして,ポスターセッションが実施されました。8名の発表者があり,ポスターの前には多くの参加者が集まり,多くの関心を呼んでいました。
本シンポジウムは,情報担当者や専門家による実務経験や研究発表である「一般発表」による発表の場として,その時期に適した話題である「特別講演」からの刺激,参加者が質疑に参加できる「トーク&トーク」,ベンダーの方々による「プロダクトレビュー」,本年からの「ポスターセッション」など参加者が多面的な面から新たな知識を吸収できるようになっていました。また,発表者,参加者,提供者が一緒になって参加する「情報交流会」には,特別講演の講演者である福井健策先生も参加してくださり,大変盛り上がりました。
今後も,デジタル化・情報化の進展に対応したシンポジウムの在り方を探すことで,情報プロフェッショナルあるいはそれを目指している方々にとって,本シンポジウムがより有益な場となるように実行委員会一同願っております。
(INFOPRO2015実行委員会委員長 長塚 隆)

第12回情報プロフェッショナルシンポジウム(INFOPRO2015)開催報告

情報の科学と技術. 2016, 66(5), 190-191. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_190
INFOPRO2015は,国立研究開発法人 科学技術振興機構との共催により,2015年12月10日~11日の2日間,科学技術振興機構東京本部(東京都千代田区)において開催された。
約250名の参加者を迎え,特別講演,トーク&トーク及び一般発表等,今回も充実した内容となった。
また,今回も情報関連企業・機関の協力を得て,プロダクト・レビュー(プレゼンテーションと出展)を開催した。参加各社のプレゼンテーションをプロダクト・レビューとしてプログラムに加え,更に,展示コーナーでの商品展示を行うなど,好評を博した。
●特別講演
講師:福井 健策 氏(弁護士・骨董通り法律事務所代表パートナー)
演題:ウェブ世論と著作権の新たなリスク
●トーク&トーク
テーマ:ビッグデータの拡がりとインフォプロ向け活用の実際
●一般発表  29件
3i研究会,特許分析1~2,XML,図書館,知識ベース,アーカイブ,引用,教育利用,非欧米特許1~2,などの分野についてのセッションで発表された。
●プロダクト・レビュー
5社によるプレゼンテーションと展示コーナーでの商品説明などを行った。
一般発表については,各発表の概要を掲載しました。予稿集の全文は,科学技術振興機構(JST)のJ-STAGEからご覧いただけます。

特別講演「Web世論と著作権の新たなリスク」(福井健策)を聴講して

中西 秀彦 情報の科学と技術. 2016, 66(5), 192-194. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_192
なかにし ひでひこ 中西印刷株式会社
〒602-8048 京都府京都市上京区下立売通小川東入西大路町146        (原稿受領 2016.2.9)

一般発表概要

情報の科学と技術. 2016, 66(5), 195-201. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_195

トーク&トーク ビッグデータの拡がりとインフォプロ向け活用の実際

情報の科学と技術. 2016, 66(5), 202-209. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_202
開催趣旨;
「ビッグデータ」という言葉が,メディアを賑わせるようになって久しい。本来の定義からみればペタバイトからエクサバイト級の非構造化データを効率よくどう処理するかがビッグデータを取り扱うこととされるが,各方面に浸透していくなかで,良くも悪くも,「今各自が扱う量より圧倒的に多量のデータ」をどう取り扱うか,という文脈をもって語られるようにもなっている。あるいは,データ量の大小を問わず,蓄積,処理,分析の新しい技術が常に必要であり,その解析を行う人材育成も求められる。本イベントでは,様々な観点からのビッグデータの利活用の実際を聞き,多量のデータをどう集め,どう解析し,どう生かすか,インフォプロの今後の活動に示唆を与えるものとしたい。

話題提供者:
・阿部 博史氏(NHK)
1978年,愛知県生まれ。名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻修了。宇宙科学研究所(現JAXA)やインドのTATA基礎科学研究所と共同で,天文衛星の検出器の開発や赤外線気球望遠鏡の打ち上げを行う。2004年,NHK入局。
小澤征爾,瀬戸内寂聴,村上龍などの文化人のドキュメンタリーやヒッグス粒子,遺伝子治療など科学・医療の最前線を伝えてきた。東日本大震災発生時は「ニュースウォッチ9」のディレクターとして緊急報道を行ない,岩手県,宮城県,福島県のすべての自治体を取材。「NHKスペシャル 震災ビッグデータ」や「クローズアップ現代」など東日本大震災や原発事故をテーマとする番組を制作している。2013年3月,9月,2014年3月に放送した内容をまとめた書籍「震災ビッグデータ」を2014年5月に発売。
・鈴村 賢治氏(株式会社プラスアルファ・コンサルティング)
株式会社プラスアルファ・コンサルティング 取締役副社長
テキストマイニングによる顧客の声活用を専門とし各業界で日本を代表する先進企業におけるビッグデータの全社活用プロジェクトを多数経験。強みとする分析力を活かした新しい顧客の声活用の企画からクライアント企業内での活用の定着支援,啓もう活動まで定評がある。
ソーシャルメディア活用にも精通し,リスニングからアクティブサポートまで知見も広い。
著書に「顧客の声マネジメント」(オーム出版,共著)がある。
・アンデーシュ・カールソン氏(エルゼビア)
バイス・プレジデント アカデミック・リレーションズ 日本/アジア太平洋地区,エルゼビア
1987年 スウェーデン王立工科大学 物理専攻修士号取得 1992年 同大学 量子工学 博士号取得
NTT物性科学基礎研究所,スタンフォード大学客員研究員,パリのポリテクニック工科大・中国の浙江大学で教鞭,スウェーデン・ストックホルムにある王立工科大学,スウェーデン大使館 科学技術参事官に就任を経て,現在に到る。2013年1月より大阪大学未来戦略機構,学長顧問
量子光学の教授就任。
2004年自身でコーディネートしたIST-QuCommプロジェクトが評価されEUデカルト賞を受賞

トーク&トーク 「ビッグデータの拡がりとインフォプロ向け活用の実際」を聴講して

北原 太郎 情報の科学と技術. 2016, 66(5), 210-211. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_210
きたはら たろう 株式会社ジー・サーチ
〒108-0022 東京都港区海岸3-9-15 Loop-Xビル        (原稿受領 2016.2.19)

3i研究発表を聴講して

都築 泉 情報の科学と技術. 2016, 66(5), 212-213. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_212
つづき いずみ HITサービス研究所
〒631-0001 奈良市北登美ヶ丘3-14-18
Email: izumitzk@nifty.com        (原稿受領 2016.2.21)

ポスター発表を見て

佐藤 正惠 情報の科学と技術. 2016, 66(5), 214. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_214
さとう まさえ 司書・ヘルスサイエンス情報専門員(上級)
Email:sugarain3@gmail.com        (原稿受領 2016.2.22)

プロダクト・レビューに参加して

情報の科学と技術. 2016, 66(5), 215-221. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_215
INFOPRO2015では,情報関連企業によるプロダクト・レビューを開催しました。
プロダクト・レビューは,一般発表セッションの中で発表していただき,またポスター展示コーナーを設け,多くの来訪者を迎えることができました。
以下に,プロダクト・レビュー各社からの出展の感想を掲載します。

良い会社とは:そして目指す企業への成功因子

屋ヶ田 和彦1),小山 由美子2),土田 哲平3),野口 尚志4)
岡 紀子5),塚原 徹也6),三上 正士7) 情報の科学と技術. 2016, 66(5), 222-229. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_222
1)やがた かずひこ 住ベリサーチ㈱
2)こやま ゆみこ ㈱日本能率協会総合研究所
3)つちだ てっぺい 日本化薬㈱
4)のぐち たかし 国立研究開発法人 科学技術振興機構
5)おか のりこ OKA情報技術コンサルテーション
6)つかはら てつや 中央光学出版㈱
7)みかみ せいし パナソニックIPマネジメント㈱
〒140-0002 東京都品川区東品川二丁目5番8号天王洲パークサイトビル Email: yagat@sumibe.co.jp        (原稿受領 2016.2.19)
※本報告はINFOPRO2015(第12回情報プロフェッショナルシンポジウム)発表を加筆したものである。
良い会社とはどのような会社であろうか?本稿では,モデル業界としてトイレタリー業界の10社を選定し,良い会社を「財務効率性」,「社会性」,「人材活用」における数値指標で評価し,同時に,特許・文献などの技術的因子,営業拠点数,広告宣伝費などの営業的因子,さらには変化への柔軟性などの成功因子をも数値化した。そして,会社の評価を示す会社指標と技術的因子などのプロセス系成功因子との直線回帰により,相関性を評価する事で目指す会社への「道標」を得る事ができないか検討した。また,優れた会社を選び,それぞれどのような取り組みを行っているかの調査も加える事で,目指す良い会社となるための方策をまとめた。
キーワード:会社指標,成功因子,回帰分析,企業経営,トイレタリー業界

Web時代の情報サービスと情報加工・分析

河塚 幸子 情報の科学と技術. 2016, 66(5), 230-236. http://doi.org/10.18919/jkg.66.5_230
かわつか さちこ 桃山学院大学
〒594-1198 大阪府和泉市まなび野1-1(大学)
E-Mail: kawatsukasa@gmail.com        (原稿受領 2016.3.3)

次号予告

2016.6 特集=「分類をみつめなおす part2」
(特集名およびタイトルは仮題)

  • 分類をみつめなおす:区分原理に注目して
  • 論文データベースにおける主題分類
  • 公的統計の作成・表示に用いる標準統計分類
  • 特許分類について
  • 人工知能による文書分類
  • 3i研究会報告
  • 連載:インフォプロのための著作権入門,情報分析・解析ツール紹介

など