- 特集:「データ分析によるサービス改善」の編集にあたって
………411
- 図書館マーケティングのためのデータ・アナリシス-データに耳を傾けてサービスの改善を目指す-
南 俊朗………412
- データ分析からサービスの改善へ
工藤 卓哉………418
- リンクリゾルバのログ分析による業務改善
林 賢紀………424
- データ分析を用いたサービス品質の管理-カーリルのデータ分析活用事例から
吉本 龍司………430
- 連載:検索技術者検定問題解説シリーズ 第1回 画像検索
………434
- 2014年度検索技術者検定1級試験問題(前半)公開回答例
………437
- 「翻訳の品質管理」を考えるシンポジウム報告
長田 孝治………443
- 書評
………445
- 協会だより
………446
- 編集後記
………448
特集:「データ分析によるサービス改善」の編集にあたって
10月号の特集は「データ分析によるサービスの改善」をテーマにお送りします。ビッグデータやオープンデータなど,昨今,データにまつわる話題が身近に感じられるようになってきました。現在,NHKで放送されているNEWS WEBなどでも「つぶやきビッグデータ」などといった言葉が使われています。地方自治体や政府でも「オープンデータ」として様々なデータをオープンにし,利活用できるように環境を整えつつあります。周りを取り巻く環境をみていくと,今日では,人や社会が活動をする時には,否応なく「データ」が生み出されています。たとえば,AさんがクレジットカードでB社の服を買った場合,いつ,どこで,B社のCという服を買ったといったデータが生み出され,蓄積されていきます。このデータは単体ではそれほどの意味はないかもしれませんが,なんらかの規則性をもって大量のデータを収集することが可能であればそこから意味を見いだす事が可能になりサービスの改善に結びつく事が可能になります。図書館も社会装置であることを考えれば,その活動に伴いデータが日々,生み出されています。図書の貸出や返却は,いまやほとんどが図書館システムによって管理がおこなわれ,そのデータが蓄積され,参考業務についてもデータ化されているところもあるかもしれません。しかし,是非はありますが,これら蓄積されたデータを分析しサービスの改善につなげている例は多くありません。そこで本特集では,民間企業では既に行われているデータ分析によりサービスを改善していこうという取組を考える特集として企画をいたしました。
総論として,九州情報大学の南氏に,図書館に対するニーズが多様化している中,従来の図書館サービスモデルでは十分に適応しているとは言えないとの指摘のもと,サービスマーケティングの観点からご執筆いただきました。各論では,アクセンチュア株式会社工藤氏にはデジタル化社会におけるデータ活用について先端事例を交えながらご執筆いただきました。国際農林水産業研究センター林様には,リンクリゾルバのログを解析することにより業務改善に資することが可能であるとの視点からご執筆をいただきました。株式会社カーリル吉本様には,カーリルが行ってきたデータ分析によるサービスの品質の管理手法をご執筆いただきました。
本特集が「データ」を分析しサービスの改善に取り組む皆様の一助になれば幸いです。
(会誌編集担当委員:小山信弥(主査),田口忠祐,長屋 俊,福山樹里)
図書館マーケティングのためのデータ・アナリシス
-データに耳を傾けてサービスの改善を目指す-
南 俊朗*
*みなみ としろう 九州情報大学経営情報学部,九州大学附属図書館研究開発室
〒818-0117 福岡県太宰府市宰府6-3-1 九州情報大学
Tel. 092-928-4000 E-Mail: minami@kiis.ac.jp (原稿受領 2015.8.3)
図書館サービスの再構築が求められている。現在,多くの図書館利用者がネット接続可能なモバイル端末を携帯し必要な情報を直ちに入手できるため,図書館に足を運ぶ必要が減少した。また,図書館に対するニーズが多様化した。従来の図書館サービスモデルでは,このような変化に十分適応できない。この課題への対応策として,利用者に関わるデータを収集・分析し,利用者ニーズをモデリングすることが有効である。本稿では,このような認識の下,サービス機関としての図書館が置かれた状況を把握するために,どのようなデータを収集し,どのように分析することで,どのような情報や知見を得られるかを,サービスマーケティングの観点から議論する。
キーワード:図書館データ,サービスマーケティング,データ分析/解析,利用者プロファイル,行動モデリング
データ分析からサービスの改善へ
工藤 卓哉*
*くどう たくや アクセンチュア株式会社 (原稿受領 2015.7.20)
今日,世界的な先進企業が,日々生成される膨大なデータのなかから「金鉱」を見つけ出そうと躍起になっている。日本でも数年前から「ビッグデータ」や「データサイエンス」という言葉が流布してはいるものの,国内ではいまだバズワードの域を出たとは言いがたい。データ活用が,デジタル化社会の将来を見越したビジネスモデルの再構築にまで到達するケースがいまだ限られているからだ。
そこで本稿では,日米を拠点にさまざまなデータ分析案件に携わる筆者の視点から,デジタル化社会におけるデータ活用のキーポイントを先端事例を交えながら論じていく。
キーワード:デジタル,ビッグデータ,アナリティクス,データサイエンス,IoT
リンクリゾルバのログ分析による業務改善
林 賢紀*
*はやし たかのり 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター 企画調整部情報広報室情報管理科
〒305-8686 茨城県つくば市大わし1-1
Tel. 029-838-6341 E-Mail: tzhaya@affrc.go.jp (原稿受領 2015.7.22)
リンクリゾルバのアクセスログを解析することで,よく利用されるサービスを把握でき,利用者の行動把握とサービスの改善に繋げることが可能である。本稿では,リンクリゾルバのログ分析による業務改善に資するため,SFXを例としたログ解析の手法を示した。具体的には,SFXが有する統計出力機能を使用して,利用者がどのような文献データベースから文献の入手を試みているか,また特定の文献データベースの検索結果から入手を試みたがオンラインでは入手できなかった雑誌タイトルの集計などを行った。これにより,電子ジャーナルの利用統計だけでは把握できない情報資源を連携させた利用の様態を明らかにし,業務改善に資することができる。
キーワード:リンクリゾルバ,電子ジャーナル,文献データベース,文献管理ツール,SFX,ログ分析
データ分析を用いたサービス品質の管理
-カーリルのデータ分析活用事例から
吉本 龍司*
*よしもと りゅうじ 株式会社カーリル 代表取締役・エンジニア
〒509-9232 岐阜県中津川市坂下1645-15
Tel. 0573-67-8105 (原稿受領 2015.7.21)
図書館蔵書検索サイト「カーリル」は各図書館がウェブ上に公開した蔵書情報をウェブスクレイピング技術により統合的に扱えるようにすることで利便性の高いウェブサービスを実現した。図書館の新規開館や閉館,移転や統合などにあわせて提供する情報は常に変化している。また,システムのリニューアルなどデータ連携に関わる変化は日常茶飯事である。変化する情報を迅速に調整し,より正確な情報をユーザーに提供することはカーリルにとって一番重要な業務である。本稿では,経験則的にカーリルが実践してきたサービス品質の管理手法についてまとめるとともに,データを生かした新たな図書館サービスの可能性について提案する。
キーワード:図書館,カーリル,蔵書検索,データ分析,ウェブスクレイピング
次号予告
2015.11 特集=「情報をわかりやすくするデザイン」
(特集名およびタイトルは仮題)
- 総論:情報をわかりやすくするデザイン
- 各論1:視覚デザインによる情報伝達:ピクトグラムについて
- 各論2:データビジュアライゼーションの意義
- 各論3:情報アーキテクチャ
- 各論4:テクニカル・コミュニケーション
- 連載:情報検索検定問題解説シリーズ第2回目
など