2014. 6 特集= 図書館員のヒント

特集 : 「図書館員のヒント」の編集にあたって

6月号の特集は「図書館員のヒント」というテーマでお届けいたします。
図書館員として求められること,どのようにステップアップして行けばいいかなどは図書館で働いている方々は悩まれたことがあると思いますし,インフォプロとしても関心のある事ではないでしょうか。
本特集は明日からでも図書館でもっと生き生きと働くためのヒントになるようなことを多く取り上げて,その中から図書館員の専門性についても考えられる特集としたいと思い企画いたしました。
有川節夫氏,渡邊由紀子氏には,本特集の総論として,文部科学省の学術情報基盤作業部会及び学術情報委員会での検討にも携われた立場から,現在の大学図書館の状況を整理していただき,図書館員に求められること,九州大学での先進的な取り組みなどについてご紹介いただき,図書館員の未来を展望していただきました。
ティムソン ジョウナス氏には,図書館員がどのように教育に関与していくかについて論じていただきました。情報リテラシー教育の一環として,図書館員が学習支援,教育に関わることも増えてきていて,その参考になるかと思います。
山口直比古氏,平輪麻里子氏には,医学系図書館での研究支援について論じていただきました。専門図書館での研究支援は医学系以外の分野の研究支援にも通じる部分もあるかと思います。
江原つむぎ氏には,留学の体験談とともに,帰国後,どのように業務に活かせているかなど留学経験の意義について論じていただきました。
森實彩乃氏には,最近増えてきている図書館での学生協働について論じていただきました。氏は学生時代にも,また図書館に就職されてからも学生協働に関われられていて,学生協働の意義と課題を再認識できる内容になっているかと思います。
外の世界に飛び出すのは大きな決断が必要だと思いますが,図書館員から転身してステップアップする道もあります。
田邊稔氏には,システムライブラリアンから独立して起業するまでの話をご紹介いただき,キャリアアップに必要な要素について論じていただきました。システム分野に限らず,ステップアップを考える人にとっても参考になるかと思います。
天野絵里子氏には,外に出ることの意義について論じていただきました。意識しないとなかなか外に出る機会がないかもしれませんが,今後,図書館員が外に出ることも広がっていくかもしれません。
以上,学習支援,教育への関与,研究支援など図書館員に求められている専門性,留学経験,学生協働,図書館の外に出ることなどの事例を通して,図書館員に向けてのメッセージをご執筆いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。大学図書館での事例に偏ってしまったのですが,何か一つでも参考となるようなことを見つけて実践していただけると幸いです。
働いていく中で思い悩むこともあるかもしれませんが,ありのまま前向きな姿勢で少しずつでも進んでいくことで道が拓けてくるかもしれません。(♪Let It Go ~ありのままで~)
(会誌編集担当委員:齊藤泰雄(主査),長屋俊,鳴島弘樹,長谷川敦史)

変わりゆく大学図書館員の役割

有川 節夫*1,渡邊 由紀子*2
*1ありかわ せつお 九州大学 総長
*2わたなべ ゆきこ 九州大学附属図書館 利用支援課長/統合新領域学府ライブラリーサイエンス専攻 准教授
〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1 九州大学附属図書館
Tel. 092-642-2331        (原稿受領 2014.3.24)
科学技術・学術審議会の学術情報基盤作業部会(2010年)及び学術情報委員会(2013年)による「審議のまとめ」をふまえ,主に大学図書館を対象に,図書館員の変わりゆく役割について考察する。現在の日本における大学や大学図書館が置かれている状況を整理したうえで,今後の図書館に起こり得る変革も視野に入れて,大学図書館員に求められる新たな期待と役割について説明する。また,九州大学が2011年に開設した「教材開発センター」や大学院「ライブラリーサイエンス専攻」等の活動を紹介しながら,図書館員の人材育成・確保のための仕組みを構築する方法について述べ,最後に,図書館員の未来について展望する。
キーワード:大学図書館,大学改革,図書館員,専門性,人材育成,サブジェクト・ライブラリアン,教材開発,ライブラリーサイエンス,九州大学附属図書館

教育に携わる図書館員として活躍するには
~これからのリエゾン・ライブラリアン~

ティムソン ジョウナス
てぃむそん じょうなす 早稲田大学図書館利用者支援課
〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1
Tel. 03-5286-1659        (原稿受領 2014.3.27)
2010年に文部科学省から出された『大学図書館の整備について(審議のまとめ)-変革する大学にあって求められる図書館像-』では,大学の教育機能に対する社会的要請が急速に高まっている中で,図書館員による教育支援がこれまで以上に期待されていること,そして効果的な教育支援を実現するための専門性が図書館員に求められていることが記されている。本稿では,これから大学図書館員として働こうとしている人を対象として,大学図書館の実際の業務の内容と,それらの業務を最大限に展開するための要素を踏まえながら,教育に関わる図書館員として活躍していくために必要な知識や専門性について述べた。
キーワード:リエゾン・ライブラリアン,情報リテラシー,パスファインダー,チュートリアルシステム,調査,広報,企画・調整,連携,職務遂行能力

図書館員の研究支援
-医学系図書館の事例から-

山口 直比古*1,平輪 麻里子*2
*1やまぐち なおひこ 東京理科大学野田図書館
*2ひらわ まりこ 東邦大学医学メディアセンター
〒278-8510 千葉県野田市山崎2641番地
Tel. 04-7122-9157 内線 2072  (原稿受領 2014.3.24)
医科大学図書館における人的支援サービスとしてのレファレンスサービスには,事項調査,文献レビューの作成,文献検索などがある。中で,文献検索の技術を用いた診療ガイドライン作成支援などの新たなサービスを紹介した。また,アメリカにおける医学図書館員の新たな役割としてのInformationistの活動について紹介した。
キーワード:レファレンスサービス,文献検索,文献レビュー,EBM,診療ガイドライン,Informationist

キャリア形成における留学経験

江原 つむぎ
えはら つむぎ 立教大学図書館
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
Tel. 03-3985-2834        (原稿受領 2014.1.22)
本稿では,米国での図書館情報学大学院留学が帰国後の業務にどのような影響をおよぼしているのか,留学で得られたものとあわせて筆者の経験をもとに述べる。
前半は,学位取得までの課題への具体的な取り組み姿勢と図書館員として働く原動力となる意識,また,留学と研修の違いについて述べ,留学によって筆者がどのように成長したかを得た知見と共に記す。後半では,業務全般での英語の使用状況と学習支援業務における提案型の働き方について,筆者の留学経験が業務にどのように活かされているのか,あるいは今後どのように活かす方向性で考えているのか抱負を交えて紹介する。
キーワード:図書館情報学教育,留学,司書,専門性,キャリア形成,ウェイン州立大学

図書館で働きたい人へ

森實 彩乃
もりざね あやの 国立大学法人山口大学情報環境部学術情報課工学情報係
〒755-8611 宇部市常盤台2丁目16番1号
Tel. 0836-85-9035        (原稿受領 2014.4.7)
近年,安価な労働力として学生を雇うアルバイトとは一線を画し,学生と職員が協働して図書館を運営する学生協働という取り組みが注目され,多くの大学図書館で実施されている。筆者も大学在学中に学生協働を経験した一人だ。その時に得た経験から大学図書館員という仕事に興味を持ち,母校の大学図書館に就職して今年で3年目になる。本稿では,学生時代の実体験を振り返りながら,学生協働の意義と課題について考察するとともに,図書館員になるための最近の勉強法や,図書館員として実際に働いてみて感じたこと,図書館員の将来について思うことを述べる。
キーワード:山口大学図書館,学生協働,大学図書館員,経験談,勉強法

“ライブラリアン・インサイド(図書館員入ってる)!”という状況を目指して

田邊 稔
たなべ みのる 株式会社エムエムツインズ代表取締役
〒231-0062 神奈川県横浜市中区桜木町2-2
mail: tanabem@mmtwins.jp    (原稿受領 2014.4.1)
今まさにシステムライブラリアンというポジションを目指している人や現在図書館のシステムを担当している人,現状スキルはないが将来システムに携わってみたい人が,これから何を学び,どのように行動し,次のステージに向けて準備すればよいのか。筆者の26年のシステム屋としてのキャリアと,そのうち13年のシステムライブラリアン経験を踏まえて,勝ち残れるスキルおよびキャリアとは何か?を掘り下げ,徹底的に自分と向き合い,成功を引き寄せる方法を模索する。
キーワード:システムライブラリアン,アーリーアダプター,コアコンピタンス,ドメイン,協働ファースト,クラウドソーシング,エンベディド・ライブラリアン,プラットフォーム・アズ・ア・サービス,スモールスタート

司書が旅に出る理由revisited

天野 絵里子
あまの えりこ 九州大学附属図書館(2014.3まで),京都大学学術研究支援室(2014.6から)
〒606-8501 京都市左京区吉田本町
Tel. 075-753-5108         (原稿受領 2014.4.1)
大学図書館には,常に新しい課題が課せられ続けている。このような中で,大学図書館員が専門職としてどのように知識形成を行い,自信を持ってキャリアを歩んで行くことができるのか,若手から中堅の大学図書館員を対象に,考える手がかりを提示する。継続して学習し,学習したことを活かす機会を求め,図書館の一歩外へ踏み出し,ネットワーク形成によって知識や経験を他者と共有していくことの意義を述べる。
キーワード:継続学習,社会人大学院,ネットワーク組織,キャリア形成,専門職

次号予告

2014. 7 特集=「科学技術情報としての特許情報を探る」
(特集名およびタイトルは仮題)

  • 総 論:技術情報としての特許情報の現状と問題点
  • 各論1:自動車技術情報としての特許情報を探る
  • 各論2:電機業界における技術情報としての特許情報の利用例
  • 各論3:医薬品業界における技術情報としての特許情報の利用例
  • 各論4:化学関連の企業における技術情報としての特許情報の利用例
  • 各論5:大学教官から見た,技術情報としての特許情報

など