3i研究会 第7期 最終報告会プログラムと抄録

i研究会第7期最終報告会プログラム

 

日時:2020年2月13日(木) 13:00~17:00 (受付:12:30、東京会場のみ10:30より入場可能)  

会場:東京:日本図書館協会会館 2階研修室  アクセス

   大阪:大阪工業大学 大宮キャンパス 1号館8F情報演習室  アクセス

進行方式:東京・大阪会場 スカイプによる(音声、PC画面の同時進行)

                  進行 情報科学技術協会 担当理事 屋ヶ田 和彦

プログラム                   

 

13:00~13:10     開会あいさつ        情報科学技術協会 会長 山崎 久道     

 

13:10~13:15     グループ報告について 

           コメンテーター紹介  研究アドバイザー 武藤 謙次郎

 

13:15~13:55           東京Aグループ

13:55~14:35           東京Bグループ

14:35~14:50                    休憩および中継機材切り替

14:50~15:30           大阪Aグループ

15:30~16:10           大阪Bグループ

16:10~16:50           大阪Cグループ

16:50~17:00           全体総括  研究アドバイザー 武藤 謙次郎

                        出口 哲也

17:00~17:30           各グループディスカッション

(最終報告会を受けてINFOPROに向けての確認等)

 

18:00~           懇親会(東京・大阪で、個別にお楽しみください。)

 

 

発表タイトルと概要(発表タイトルは多少変更される場合があります。)

 

・東京Aグループ

社会課題を題材とした新規課題の抽出

– 市議会議事録を用いた高齢化に関する課題抽出 –

高齢化が進んでいる対象都市からみて、これから高齢化が起こる都市で発生するであろう社会課題を新規な社会課題として定義し、高齢化に関する新規な社会課題の抽出を試みた。

分析手法としては、まず、高齢化が進んでいる対象都市として富山市をベンチマークに設定し、市議会の議事録を目視とテキストマイニングにより解析することで、認識済み社会課題を特定した。次に、富山市と地理的条件および人口が類似し、高齢化比率が富山市よりも低い都市を選定。この都市の市議会議事録に、富山市の認識済み社会課題が含まれているかを個別に確認していくことによって、認識されていない新しい社会課題を特定する方法をとった。

市議会の議事録は政策議論の記録としての性質があるため、ノイズ、漏れ少なく抽出を行なうことに役立ったと考える。

 

・東京Bグループ

シマノの自転車部品市場における知的財産戦略

グローバルに活躍している企業は競合企業と戦うために、その会社の事業方針に沿った知的財産戦略を持っていると思われる。現在の企業競争の中では知的財産戦略無しでは勝ち続けることは難しいからである。そこで東京Bチームでは他業種や自らの企業の参考にすべく、経済産業省が独自の分野で世界のトップを走る企業をまとめた「グローバルニッチトップ企業100選」  (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/gnt100/index.html)に掲載された企業の中から自転車部品業界で世界トップ企業の株式会社シマノ(以下シマノ)を選び、その知的財産戦略を明らかにすることを目的にした。

シマノは世界的に圧倒的なシェア(約85%)を持つことと、自転車部品のコンポーネンツ(セット)販売及び外部インターフェースが公開されていることから「自転車界のインテル」と言われている。しかし調査するとビジネスモデルも知財戦略もインテルとは異なる。さらに、現在自転車業界はヨーロッパを中心にEバイクに急速に移行している。シマノは後発でありながら、Eバイクのモータを中心としたコンポーネンツでも一定のシェアを確保している。そこでシマノの自転車部品におけるシェア拡大のためと、Eバイク市場への参入における知財戦略を一部でも読み解くべく研究を行った。

 

・大阪Aグループ

先端技術トピックにおける技術動向および技術動向予測

 -睡眠サービスの現状と今後期待されるもの-

睡眠の主な目的は、「大脳を休ませる」、「記憶の定着」、「ホルモンバランスの調整」、「免疫力の向上」と言われている。睡眠が十分にとれていないことに起因する「仕事のパフォーマンスが落ちる」、「イライラする」、「不安になる」などといった影響が生じ、さらに、それらが積み重なると、睡眠不足が借金のように積み重なってあらゆる不調を引き起こす状態=睡眠負債を引き起こし、ランド研究所によれば、2016年時点で日本の経済損失は15兆円と試算されている。しかしながら、OECDによると日本人の平均睡眠時間は女性7時間36分、男性7時間41分と世界最下位といわれており、単純に睡眠時間を延ばすということは困難である。そこで、本研究では「睡眠の質」に着目し、以下のような手順で、課題を探求した。

まず、次の4つに分けて現状を把握した。(1)睡眠ビジネスに関する市場、(2)睡眠ビジネスの全体像、(3)睡眠ビジネスのプレイヤー、(4)睡眠ビジネスの具体例を把握して睡眠に影響を与える要因マップを作成した。2番目に、新聞記事を中心とした市場調査を行い、睡眠分野でトピックになっている論文をピックアップし、特許調査を行ってどこにフォーカスすべきか検索し、中央官庁の関連する政策を検索し、課題を分析した。

以上の分析の結果、睡眠の質の測定は充実しており、病院や介護施設などを対象とするBtoBではすでに実用化されているものの、個人にフォーカスするBtoCのソリューションが不足していることがわかった。したがって近い将来において、そのソリューションを加味したデバイスをパーソナルで使用できる睡眠ビジネスが普及すると考えられる。

 

・大阪Bグループ

「陸上養殖」を題材に未来予想から新たな課題を見つける

新規事業を立ち上げるにあたって、社会ニーズに合致した事業であるか、事業化のための技術課題が解決できるかを検討する必要がある。今回、社会課題の一つである水・食糧不足から水産業の陸上養殖に着目し、陸上養殖の事業化を目指す企業の企画部門が、新たな課題や新しいビジネスを事業部に提案すると想定した。

提案①として、未来予想をフォアキャスティングし、そこから新たな技術確立の必要性や新ビジネスへと発展できるかを模索した。

提案②として、ハッピーケースを最終目標としたバックキャスティングを行い、事業が成功するためのストーリーを検討した。

まずは、魚介類の消費量と生産量、漁業の養殖の割合、日本の国策、技術動向など現状を調査した。日本の水産業の問題として、①漁業者の高齢化と若者の重労働忌避による人材不足②漁船の老朽化による漁業者(組合)の費用負担増が挙げられており、水産庁の調査によると1990年から漁業の国内生産量が減っているが、養殖業の産出量は増加している。養殖業でも海面養殖は気候変動、海洋汚染に影響を受けやすいことから、近年、陸上養殖が注目されている。

事業化には、まず、日本の陸上養殖技術の確立が必須である。ICTや5G、ブロックチェーンなどに加え、水産業では餌の改良、ゲノム編集による魚の改良などが技術開発中であり、確立までは至っていない。そして、消費者ニーズの問題として、日本人の魚離れがある。水産庁の調査によると2001年から魚の国内消費量が減っている。この理由として、魚料理が子どもに敬遠されていることや調理が面倒なことなどが挙げられている。そこで、日本人の魚離れ対策も必要と考えた。世界へ進出するためには、日本での実績作りが必要だからである。また、陸上養殖の事業形態として、低価格大量生産を目指す企業と健康機能食品や地域活性を目的としたブランド魚の生産を目指す企業があると分かった。

そこで、フォアキャスティングでブランド魚の生産で事業化を図る事業部への提案として未来図を作成した。そこには、日本人の魚離れ対策も盛り込んでおり、複数企業で水産業を盛り立てる内容である。そしてバックキャスティングでブランド魚の低価格大量生産、さらに魚介類の国内需要全てに対し陸上養殖で供給できることを最終目標とするストーリーを示した。

これらが事業部の事業成功への糸口になれば幸いである。

 

・大阪Cグループ

情報分析より考察するコモディティ市場への新規参入戦略

私たちの生活の周りには、コモディティ化した製品が数多くある。その一方で、平成の30年間で生活の態様には変化があり、時短・自動化・快適をキーワードに、新たに誕生した製品や変革が起きた製品も存在する。

大阪Cグループで着目した電気掃除機は、1970年代には国内の世帯普及率が90%を超え、コモディティ化した製品としては代表的なものである。しかしながら、電気掃除機の国内市場は、2011年度にはパナソニック(松下電器産業)、日立アプライアンス、東芝ホームアプライアンス、三洋電機、シャープの国内電機メーカーが国内出荷台数シェアの大半を占めていたが、その後の5年間でダイソン社とアイロボット社がシェアを奪い、存在感を高めるという変化が起きた。

本報告では、コモディティ化した電気掃除機市場において、新規参入したこれらの2社が成功した背景と要因について報告する。詳しくは、2社の要素技術と知財戦略を、特許、意匠、商標、新聞・ウェブ情報から探るとともに、国内メーカーの牙城を切り崩して日本市場に浸透し、かつ、高いシェアを継続して確保することができている要因を解析する。

なお、ダイソン社は掃除機市場のサイクロンタイプのカテゴリにおいて、アイロボット社は自ら開拓した新市場であるロボット掃除機市場において、シェアを拡大するのと同時に多くの出願を行っているが、後発の類似製品の出現を防ぐことまではできていない。このような環境下であっても、市場において高いシェアを継続して維持するためにダイソン社およびアイロボット社の取った戦略について、調査結果を元にした戦略展開マップとSWOT分析により整理した