SIG 分類/シソーラス/Indexing部会

1988年スタート以来、原則として毎月研究会を開催してきたが、2018年度より隔月開催で、以下の分野について研究している。

1.設立のいきさつ

当部会は、1987年12月の準備会を経て、1988年4月より20名のメンバーでスタートした。スタートに先立ち、きっかけがある。それは、故中村幸雄元INFOSTA 会長が生前、中村塾と言われる「私塾」のような勉強会を開いていて、そこでインデクシングやシソーラスについて情報専門家を集めて親しく教えていただいた。当部会は、中村元会長が唱えておられた「分類・シソーラス・件名標目などを別々に考えるのでなく、インデクシングを総合的にとらえる」という主張を受け継いで活動してきた。
そのような背景のもと、原則として毎月、研究会を開催し、2008年に20周年を迎え、2014年7月には、のべ回数300回を数えた。また、毎月の研究会のほか、特別のテーマを決めて議論する場としての合宿も15回開催した。
2008年には、その成果が認められ、「分類・シソーラス・Indexingは、今日でも情報の蓄積や検索に関わる最も基本的で重要な問題である。永年にわたり着実に研究活動を推進し、その成果を会誌やINFOPRO シンポジウム等において多数発表し、当協会にとって多くの貴重な財産と活動実績を残した。協会への多大な貢献とSIG 活動の模範となる活動実績は高く評価できる」との理由で、「協会事業功労賞」を受賞した。
2014年には、300回(26年)開催を記念して、『分類/シソーラス/Indexing部会300回の歩み-「余計なおせっかい」の四半世紀-』(2015.03, A4, 176p.)をまとめ、過去を振り返ると同時に、今後の研究の糧としている。

2.目的・趣旨

情報をなんらかの形で蓄積し、後日、効率的かつ効果的に利用するためには、情報や資料に、その内容を端的に表現するなんらかのインデクスを付与して、検索に備えておく必要がある。こうした機能を保証する作業としてインデクシングがある。文献データベース(文章情報によるデータベースといってもよい)は、このようにして構成・構築されるものである。

また、インデクシングは、文献データベースの検索性能に直接の影響を与えるものなので、サーチャーにとっても重要な関心事となることだろう。さらに、図書館における分類・件名作業(広くは「整理業務」)も、図書に対するインデクシング作業であると言える。さらに、インターネットによる情報発信は、インデクスを欠いているものが多いため、効果的な情報検索を実現する上で困難をきたしていると思われる。

こうした問題意識から、当部会は、データベース作成者、図書館員、サーチャー、研究者、情報産業従事者、情報利用者などが集まって、各自の実務的経験や知識をもとに議論して、研究・勉強を進めている。この30年間に参加されたメンバーは60 数名におよび、現在は15名のメンバーで構成されている。

3.今までの主な活動

  • 各メンバーによる研究成果、所属機関における情報活動、社内シソーラス作成経験・問題点などの紹介・発表と討論を行った。
    ・全文検索システムについて関心を持ち、われわれとしてこうしたシステムをどう評価すべきかを議論するとともに、システム作成者との討論の機会を持った。
  • インデクサーやサーチャーの仕事の本質がどのようなことであり、それはどこまでコンピュータによって代行可能なものかを理解するために、サーチングプロセスやインデクシングプロセスの検討を行った。そして,「インデクサーの頭の中」「サーチングプロセス」としてまとめた。
  • 海外の著名な先駆者による研究書・論文・規格などを数多く輪読した。例えば、
    1) Bliss 著Bibliographic Classification
    2) Hemalata Iyer 著Classification Structures–Concepts(Relations and Representation)
    3) ANSI/NISO Z39. 19 Guidelines for the Construction.Format and Management of Monolingual Thesauri
    4) F.W.Lancaster 著Indexing and Abstracting in Theoryand Practice 2003.
    特に、4)は,2004年5月に輪読を開始し、2008年4月、4年余の歳月をかけて読破した。
  • 各自が関心を持つテーマを含むブックレビュー。2008-09年度は、自分たちの専門分野はじめ情報論一般、言語学など幅広い分野におよぶ20 数冊を取り上げレビューした。
  • 2009年12月には、合宿を持ち、ワインバーガー著『インターネットはいかに知の秩序を変えるか?– デジタルの無秩序がもつ力』をテキストに討論を行った。

 

4.最近の活動

  • 2011~14年度にかけて、電子本が台頭するにあたり、紙の本との比較研究に関する文献が数多く出版されたので、各自持ち寄り、ブックレビューを行った。また、インターネットの影響に関する文献も数多く取り上げた。
  • 2013年には、「知の断片化」にかかわる先行研究の総括を行った。
  • 2014~15年には、シソーラスについて現状と将来について勉強した。取り上げたシソーラスは、JSTシソーラス、MeSHシソーラス、女性情報シソーラス、ISO25964-1 Thesaurus for IRなど。改めて、検索言語の重要な手段としてのシソーラの重要性を認識した。
  • 2017年からは、分類にも多く触れ、海外で開催されたUDC Seminarには2回連続当部会メンバーが参加し、分類の最新情報を得るとともに、主要発表論文の輪読も行った。また、「UDC SummaryとLCSHの自動マッピング」作業をはじめ、UDC、NDC10版など分類についての研究も行った。
  • 2017年以降、「索引作成」について取り上げている。SIST13「索引作成」の見直しから始め、各自、索引事例を持ち寄り、評価を行っている。そして、「良い索引とは」について検討を進めている。

以上,簡単ではあるが,当部会の活動を紹介した。この会は,「全員が平等の立場で議論に参加する」「他人の人格攻撃は絶対にしない」というモットーで始めたのだが,会のメンバーは全員紳士淑女であり,こんな取り決めはまったく必要なかった。メンバーのみんなが相互の立場に敬意と思いやりをもって,活発に討論しながら活動を進めてきたことは,この会が誇ることのできる最大の財産だと思う。
インデクシングに関心を持ち,この会の運営方針に賛同される方がおられたら,喜んで部会員としてお迎えしたい。

5.まとめと追記

1)分類、件名標目(キーワードの一種で統制された用語)、シソーラス用語(同前)などは、情報検索に便利なようにいずれも文献の内容を要約して表示するもので、みなさんにも親しい存在だと思います。この3つは、実は同じ役割を持っているのです。分類は、文献が扱っているテーマや概念を分類表に従って、記号で付与します。キーワードは、文献に出現するトピックを言葉で表します。

2)分類やキーワードを付ける作業は、インデクシング(索引作業)と呼ばれています。このようにあらかじめ情報を整理しておくことにより、効率的に情報を扱ったり、効果的に文献を検索したりすることができるのです。この点は、ビッグデータや生成AIの時代になっても、変わることはないと考えられます。したがって、データベースの有能なサーチャー(情報検索専門家)は、インデクシングについて、よく理解している必要があります。

3)本研究部会では、インデクシングについて、幅広く研究してきています。実践的な部分に重点がありますが、理論的な部分にも目配りをしています。最近は、ターミノロジーの枠組み(と分類の関連)、日経シソーラスの特質などについて扱ってきました。今後は、AIによるインデクシングの自動化の状況、その効果、問題点などについても、研究を進める予定です。各回のテーマについて、皆が、それぞれの考えで自由に発言する、ただ個人攻撃はご法度というモットーで運営してゆく点は変わりません。。討論した後の飲み会(非公式、参加自由)でのビールやドリンクは格別です。

4)こうしたテーマに関心、興味がある方は、ぜひINFOSTAのウェブサイトから所定のフォームで事務局に連絡して、一度見学に来てください。一回の見学は、無料です。いつでも歓迎します。本研究会は、濃密な議論をするために基本的に対面で行っていますが、場合によってはオンライン併用にすることもあります。

以上

参考文献

  1. 分類/シソーラス/Indexing部会.集中討論「統制語は生き残れるか」(特集=統制語に未来はあるか?).情報の科学と技術.1996,vol.46,no.11,p.632-640.
  2. 座談会:分類 /シソーラス /Indexing部会 5年の歩み.(特集=インデクシングを考える).情報の科学と技術. 1993,vol.43, no.9,p.798-809.
  3. 井上 孝 他.現場におけるインデクシングの諸問題–討議記録からの問題抽出の試み(特集=インデックスを考える).情報の科学と技術. 1993,vol.43,no.9,p.810-815.
  4. 光富 健一 他.情報組織化の基盤としてのファセット分類法 –BC2を例として(特集=インデクシングを考える).情報の科学と技術. 1993,vol.43,no.9,p.816-823.
  5. 山崎 久道 他.ユーザーの視点からみたシソーラス評価の可能性(特集=インデクシングを考える).情報の科学と技術. 1993,vol.43,no.9,p.824-842.
  6. 光富 健一. Jean Aitchison「シソーラスの情報源としての分類法」(資料紹介)(特集=インデクシングを考える).情報の科学と技術. 1993,vol.43,no.9,p.843-845.
  7. 山本 昭.情報検索から見た情報要求の類型化の試み. 1998INFOPROシンポジウムにて発表および情報の科学と技術.1998,vol.48,no.10,p.571.
  8. 座談会:分類を考える.情報の科学と技術. 2005,vol.55, no.3,p.132-140.
  9. 山崎 久道.第 33回情報科学技術協会賞(協会事業功労賞)を受賞して.情報の科学と技術. 2008,vol.58,no.9,p.470-471.
  10. 分類/シソーラス/Indexing部会. 分類/シソーラス/Indexing部会300回の歩み-「余計なおせっかい」の四半世紀-. 2015.03, A4, 176p. (非売品。限定配付)

 

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