ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)2025-05-19発行 ISSN 1881-381X
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◆ レポート ◆ - Science, Internet, Computer and …
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「情報の未来を「楽しく」つくるためにーINFOSTA 75周年記念事業、ネクストチャレンジへ」
清田陽司(情報科学技術協会[INFOSTA]会長)
先日、本メールマガジンの寄稿記事にてご紹介したINFOSTA創立75周年記念事業のクラウドファンディングは、読者の皆さまからの温かいご支援を受けて、無事目標金額を達成することができました。心より御礼申し上げます。ただいま、ネクストゴールとして「130万円」を設定し、引き続きご支援を募集しています。
・ACADEMIC RESOURCE GUIDE 掲載-レポート「情報の力で未来をデザインするーINFOSTA75周年と新たな挑戦」(2025-04-14発行)
・adademist – 情報の力で社会を変える ― INFOSTA75周年、新たな挑戦へ
情報専門職の方々はもちろん、それ以外の分野で活躍される多くの方々からのご支援・応援の声もいただきました。INFOSTAというコミュニティが、世代や職域を超えて支えられているという実感は、私たちにとって何よりの励みとなりました。
今回のプロジェクトでは、「情報検索技術」「図書館」「アーカイブ」「情報の標準化」といったINFOSTAが長年取り組んできた実践を礎としつつ、「次の世代にとって必要とされる情報コミュニティとは何か」という問いを見つめ直すことに力を入れてきました。そしていま、私はあらためて「楽しさ」や「遊び」といった要素の重要性を強く感じています。
現在、私は人工知能学会の理事として、2025年5月27日(火)~30日(金)に大阪で開催される人工知能学会全国大会(JSAI 2025)の実行委員長を務めています。すでに参加登録者数は4,000名を超え、過去最大規模の開催になることが確実となっています。
そのなかで感じるのが、「今、勢いのあるコミュニティに共通するものは何か?」という問いです。
それは、「本質を変えないためにこそ、“伝え方”を変え続ける柔軟さ」であり、「ともにつくる」「動かして確かめる」「場をひらく」といった態度に支えられたオープンな文化だと感じています。
人工知能という分野は、「中心的な基礎理論が存在しない」という特異性をもっています。かつてはこれが批判の対象でもありましたが、現在では、「実際に作って動かすことで本質に迫る」という「構成論的アプローチ」が、むしろ現代科学の新たなスタンダードになりつつあります。2024年ノーベル物理学賞および化学賞を人工知能研究者が受賞したことが、この流れを象徴しています。
これは私が2022年、都道府県立図書館サミットでお話しした「図書館情報学にも固定的な中心理論はなく、社会や技術環境によって常に変わり続けるものではないか」という視点にも通じるものです。
「デジタル社会の行き着く先にライブラリアンが果たしうる役割を考える」
図書館総合展2022カンファレンス in 鳥取 / 都道府県立図書館サミット2022 (2022年11月26日)
今いる場所に安住するのではなく、「異分野のコミュニティに自ら飛び込み、そこで得た視座を自らの実践に還元する」ーそんな越境的な姿勢が、情報専門職にとってますます重要になっていると感じています。
そのような思いから、JSAI 2025ではINFOSTA AI利活用研究会の活動成果を生かし、「AI時代の“学び”と“遊び”を再発明する~コミュニティを基盤に『態度』を育む方法論」と題したセッションを、大阪・関西万博関連企画セッションとして開催します。こちらは参加無料・YouTube Liveでも視聴可能なセッションですので、ぜひお気軽にご参加・ご視聴ください。
・INFOSTA – 万博関連企画のお知らせ(人工知能学会全国大会 企画セッション)
JSAI 2025企画セッション KS-33 万博関連企画「AI時代の“学び”と“遊び”を再発明する~コミュニティを基盤に『態度』を育む方法論」
2025年5月30日(金)14:00-15:40
・INFOSTA AI利活用研究会~未来を切り拓くプロフェッショナルたちの集い~
また、別の企画セッション「ジュニア世代のための人工知能学会の役割」では、公共図書館・学校図書館でのキャリアをもつ宮澤優子さん(伊勢市教育委員会)をお招きし、「AIマップ」を活用した小学校での実践についてお話しいただく予定です。こちらは通常の大会参加登録が必要ですが、図書館・教育分野とAIをつなぐ貴重な対話の機会となることを願っています(オンラインでの参加も可能です)。
・JSAI 2025企画セッション KS-17「ジュニア世代のための人工知能学会の役割」
2025年5月29日(木)9:00-10:40
こうした取り組みをさらに加速するため、INFOSTAでは現在、ネクストゴール130万円を目指してクラウドファンディングを継続しています。
75周年記念事業を、「過去を振り返る場」で終わらせるのではなく、未来に必要とされる情報コミュニティをつくるための出発点とするために。
ご賛同・ご支援をいただけると幸いです。
・adademist – 情報の力で社会を変える ― INFOSTA75周年、新たな挑戦へ
(2025年5月22日(木) 17時まで)
情報の力で、社会をもっと明るく、楽しく、ひらかれたものにー。
ともに未来を育む仲間として、ご一緒いただけたら嬉しく思います。
[筆者の横顔]
清田陽司(きよた・ようじ)。不動産や介護分野など、業界にまたがる社会課題に取り組むAI研究者。1975年 福岡県生まれ。2004年 京都大学大学院情報学研究科 博士課程修了。東京大学情報基盤センターに助教として在籍中の2007年に株式会社リッテルを共同創業、国立国会図書館リサーチ・ナビなどの図書館情報ナビゲーションシステムの実装に取り組む。
2011年の株式会社LIFULLによる企業買収を経て不動産テック領域のAI研究開発に従事。2017年に株式会社メディンプルを創業、業界横断のAI社会実装に関わり、4社対等合併により2022年から株式会社FiveVai取締役。2024年、麗澤大学(千葉県柏市)に新設された工学部に教授として着任。
情報科学技術協会 会長(2022-)、人工知能学会 理事(2020-2022、2023-)、Code4Lib JAPAN共同代表(2011-)などを担当。博士(情報学)。
https://www.kiyota-yoji.net/
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https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.ja