2003年9月
                                 2010年6月改訂
                              INFOSTA試験実施委員会
情報検索応用能力試験2級受験の手引き
 

はじめに

 この手引きは、2級を受験される予定の皆さんが少しでも効率的な受験勉強を進められる様に、受験のための学習方法および試験の領域について説明したものです。この手引きをご利用いただき、効率的な受験勉強の参考にしていただければ幸いです。
 皆さんのご健闘を祈念しております。


1.受験のための学習方法について               

 情報検索応用能力試験2級は、後述する各領域について基本的な点を中心に出題されます(試験は前半、後半に分けて行われます)。
 受験のための学習としては、まず、過去3年程度の問題にチャレンジしてみてください(当協会が内容を担保するものではありませんが、東海サーチャー会が過去問題を研究した資料も発行されております)。
 過去の問題を解いて学習する際に大切なことは、単に正解を見つけるだけでなく、関連する事項などについて、巻末付録の参考資料やサイトなどを用いて自分で調べることです。    
 ただ読み流すだけでは、知識を身につけ、理解を深めることはできません。たとえ自分では知っているつもりの事項でも、意外とうろ覚えであったり、一部誤って理解していたりする場合があります。過去の問題を一つずつ丁寧に解き、調べることによって、理解が深まります。
 
 前半の問題については、単に正解を見つけるだけでなく、解答に使われなかった項目についてもあらためて調べてみましょう。その際には巻末付録の参考資料などを利用して下さい。
 たとえ問題を解いてみて、正解がわかったとしても、データベースなどは常に進歩しています。自分が知っているつもりでも新しい機能が追加されたかもしれません。時間はかかりますが、丁寧に調べることにより理解が深まり、知識が身に付きます。
 
 後半の問題については、実際に検証をかねて検索を行ってみるとよいでしょう。普段、自分の得意とする分野(たとえば、特許など)以外の分野についても、取り組んでみることをおすすめします。その際には、サーチエイド(検索補助資料)や過去問題などを参考に復習するのがよいでしょう。
 また普段から検索業務に携わっている方は、ご自分のこれまでの検索事例を問題と照らしながら見返してみると、自分の思いつかなかった手法などに気づくことにつながります(その際にはサーチエイドを用いるとよりわかりやすいです)。
 
 過去の問題を一通り読み返しながら、同時に普段あまり触れることがないデータベース、検索エンジンなどを使ってみましょう。
 商用データベースなどは、無料で練習ができる練習用ファイルなどがありますので、これらを活用してみましょう。最近は国立国会図書館NDL-OPACやPubMedに代表されるように、無料で使えるWeb上のデータベースもあります。これらについても触れておきましょう。
 また情報学にあまり触れたことのない方は、巻末付録に示しました『情報検索の基礎知識 新訂版』や『新訂 情報検索の知識と技術』などを併用下さい。情報学に関する基礎的な知識を得ることができます。
 巻末付録の参考資料は、過去の問題を解く際に用いると理解が深まります。後述する各領域の内容にあわせて利用していただくことをおすすめします。


2.試験の領域および内容                  

試験は、以下の6つの区分に渡って出題されます。

(1) 情報検索技術に関する知識と実践

 この区分では、主に以下について出題されます。
 ○情報源の選択能力
 ○データベースに関する知識
 ○検索システムに関する知識
 ○コマンド、検索式、キーワード、シソーラス等の検索技術に関する一般的知識
 ○情報要求者とのコミュニケーション能力

「情報源の選択能力」では、与えられた課題に対して適切なツールを選択できる能力を問われます。そのため日頃から普段利用しているレファレンスツールだけではなく、それ以外のツールについても、触れておくことが必要です。特に昨今はインターネット上で利用できる無料のデータベースなども増えてきました。商用データベース以外のツールにも慣れておきましょう。

「データベースに関する知識」および「検索システムに関する知識」については、データベースの歴史、その種類、主な商用データベース、ネット上の無料データベース、データベースの作成方法、種々の検索システムの概要と検索システムによる相違などについて、その基本的知識を問います。

「コマンド、検索式、キーワード、シソーラス等の検索技術に関する一般的知識」では、データベースごとの検索の際に用いる検索技術について、正しく身についているかが問われます。従来は主な商用データベースを試験の対象としていましたが、昨今は無料のデータベースであってもシソーラスなどを備えているデータベースが出現しております。普段使い慣れた商用データベース以外のデータベースについても、概要を把握しておきましょう。主要な検索システムの基本的なコマンドは、一通り目を通しておくことが望ましいといえます。

「情報要求者とのコミュニケーション能力」では、プレサーチインタビューを中心としたコミュニケーション能力を問われます。検索者が情報を求めている利用者から、“どのような情報を求めているのか”“どういった資料を求めているのか”等々を利用者から聞き出しながら対応するものです。実際の業務では全ての利用者がわかり易く質問や検索依頼をしてくるとは限りません。あいまいな言い方で依頼された場合などは、逆に利用者に尋ねて具体的にどのような情報が欲しいのかなどを、上手に聞き出さなければなりません。このような点を中心にコミュニケーション能力が問われます。
 企業や図書館等で検索業務をなさっている方は、普段の業務での利用者とのやり取りを振り返ってみて、過去の経験を一度整理するとよいでしょう。また巻末付録に記したような参考業務についての書籍を参考にするのもよいでしょう。
 代行検索業務ではなく御自身が研究や勉学の目的で調査をなさっている方の場合は、自分が図書館・情報センターのカウンターで資料の相談を持ちかけた時のことを思い出してみましょう。相手がどのような受け応えをしてくれたか、どうして自分自身がうまく説明できなかったのか、などを思い出してまとめてみるとよいでしょう。


(2) 主題知識と応用

 この区分では、主に以下について出題されます。
 ○専門分野の検索主題の解析能力
 ○出力結果の分析能力
 ○専門分野のサーチエイドに関する能力

「専門分野の検索主題の解析能力」とは、情報を求めている利用者から依頼された検索主題について、その依頼内容を正しく理解し、適切に対処できる能力をいいます。この能力については、特に代行検索業務に携わる方は、日頃の検索業務で御自身がどのように検索の依頼を解析して対応しているかを、あらためて確認してみて下さい。また御自身の専門分野についての基本的な事柄を整理してみるのも重要です。

「出力結果の分析能力」では、検索した結果を正しく理解して、読み取れるかどうかを問われます。出力結果はデータベースにより異なります。文献データ、ファクトデータと様々ですので、代表的なデータベースについては、練習用データベース等を使い、それぞれ見ておくとよいでしょう。

「専門分野のサーチエイドに関する能力」については、検索の際に大いに助けとなるサーチエイドについて、知っておく必要があります。主な商用データベースに関するサーチエイドは、できるだけ目を通して下さい。特に普段の業務で特定のデータベース以外あまり使用しない方は、サーチエイドを参照しながら、実際に一度データベースに触れるとよいでしょう。


(3) 情報源と情報流通の知識と応用

 この区分では、主に以下について出題されます。
 ○情報源に関する一般的知識
 ○情報の流通に関する知識
 ○著作権に関する一般的知識

「情報の流通に関する知識」では、情報の収集・蓄積からはじまり最終的に求める人へ至るまで、といった一連の流通経路に関する理解度を問われます。現在の学術情報の流通などを見ても、ScienceDirectなどの電子ジャーナルの普及に見られるように、大きく変わりつつあります。最近の学術情報の流通状況について、よく確認しておくのが望ましいでしょう。

「著作権に関する一般的知識」としては、検索業務を行う上で必要となる一般的な知識を、どれだけ正確に把握しているかが問われます。具体的には著作権の概要や著作者隣接権、図書館、情報センター等とかかわりの深い権利制限の条項、日本複写権センター、学術著作権協会等とのかかわり、などがあげられます。いずれにせよ著作権制度の概要を理解し、基本的な条文や事項を理解しておくことが肝要です。また、著作権法は頻繁に変更されますので、変更点についてもフォローしておくと良いでしょう。


(4) ITに関する知識

 この区分では、主に以下について出題されます。
 ○コンピュータに関する知識
 ○通信技術に関する知識
 ○インターネットに関する知識

「コンピュータに関する知識」では、OSやアプリケーションソフト、ハードウェア(PCの基本的な仕組みや周辺機器など)、セキュリティなどについての知識が問われますので、これらの知識についてあらためて確認をしておくとよいでしょう。

「通信技術に関する知識」では、ネットワーク全般についての基本的な事柄を理解しているかが問われます。純粋な工学的知識は必要ではありませんが、LAN、ネットワークの仕組み、セキュリティ技術などについて、最近の傾向も確認しながら、基本的な事柄をまとめておきましょう。

「インターネットに関する知識」としては、インターネットの仕組みや、実際の運用にあたっての基本技術、検索エンジンに関する知識、インターネットを利用する際の留意すべき点などが問われるでしょう。

 全体的にこの区分では、工学的な知識というよりも、基本的な技術についての理解度と日常の業務や調査・研究等で必要になる、使うための知識が身についているかが問われます。これらについて復習しておくことが重要です。この分野についてはシステムアドミニストレータや情報セキュリティアドミニストレータのテキストが参考になります(特にコンピュータ、ネットワーク、インターネットに関する部分です)。


(5) 英語能力

 この区分では、主に以下について出題されます。
 ○英文データベース出力の解読力
 ○英文マニュアルの解読力

 上記2点とも英語能力を問う出題となりますが、大事な点は、基本的な英語力です。実際の出力結果やマニュアルの解読力においては、高度な英文法や語彙力よりも、基本的な語学力と語彙、そしてデータベースについての知識、この3点を用いて解読できることが求められます。その点からも、主題知識分野に関する用語、データベースに関する用語などは、あらかじめ対応する英語を確認しておきましょう。


(6) 論文執筆およびプレゼンテーション能力

 この区分では、主に以下について出題されます。
 ○思考過程を簡潔に表現する文章作成能力

 この区分のみを単独で出題するというよりも、個々の出題に対する解答文章において、どれだけ自分の考えを、簡潔に文章で表現できるかによって判断されることが多いと思われます。検索の過程や手段、どうしてそのツールを選択したかなどを簡潔に述べる問題が出題された場合に、どれだけ自分の考えを第三者に理解してもらえるかが重要になります。かぎられた試験時間内で的確に解答するには、ポイントを絞った解答作成が必要です。自分の行った検索例について解説文を書いたり、他者の文章を要約したりしてみると、自分の考えをまとめる訓練になります。




巻末付録 : 2級受験に役立つ参考資料・サイト・サーチエイド 

 以下に受験のための学習に役立つ資料などを御紹介いたします。

 基礎力を身につけたい方、特に基礎能力試験と併願される方は、情報検索の基礎知識 新訂2版をまずご一読されることをお勧めいたします。。さらに特に2 級試験のために『新訂 情報検索の知識と技術』が出版されています。これを学習されることによって、試験に対応した詳しい知識が身につきます。

 会誌『情報の科学と技術』は、受験勉強だけでなく、業務にも役立つ資料です。非会員の方はぜひご一読ください。
 IT関係の知識については、技術の進展が速いため、書籍だけではなく、最近6ヶ月間程度のネットワーク関係の雑誌、PC関連雑誌なども御覧いただくと参考になります。
 データベースや制度についても、内容が頻繁に変更になりますので、書籍での勉強の他に、ベンダーや業界団体のサイト等で、最新状況を把握しておく必要があります。

 なお、下記に御紹介する資料には当協会発行の資料だけではなく、その他の出版者の資料も含まれております。
 当協会以外の資料等につきましては、書店あるいはそれぞれの機関にお問い合せ下さい。

(1) 書籍など                        


・情報科学技術協会編. 情報検索の基礎知識 新訂2版. 情報科学技術協会, 2006.7.

・情報科学技術協会編. 新訂 情報検索の知識と技術. 情報科学技術協会, 2010.5.
   (情報検索応用能力試験2級対応テキスト)

・牛澤典子著. 若葉マークのPubMed : 初心者のための検索マニュアル. 
  情報科学技術協会, 2005.3, 76p. (INFOSTAブックレットシリーズ)


・渋谷嘉彦編著. 情報サービス概説. 改訂. 樹村房, 2004.3, 174p. 
  (新・図書館学シリーズ ; 4)

・小田光宏編著. 情報サービス概説. 日本図書館協会, 1997.11, 244p. 
  (JLA図書館情報学テキストシリーズ ; 4)

・木本幸子編. レファレンスサービス演習. 改訂. 樹村房, 2004.8, 181p. 
 (新・図書館学シリーズ ; 5)

・大串夏身編著. レファレンスサービス演習. 日本図書館協会, 1997.12, 138p. 
  (JLA図書館情報学テキストシリーズ ; 4)

・土屋俊 [ほか] 著. 電子ジャーナルで図書館が変わる. 丸善, 2003.2, 104p. 
  (情報学シリーズ ; 6)

・専門図書館協議会著作権委員会編. 専門図書館と著作権Q&A. 2002年版. 
  専門図書館協議会, 2002.4, 30p.



(2) サーチエイドなど                     


・日経テレコン21(はやわかり日経テレコン21)
 http://www.nikkei.co.jp/telecom21/index.html

・JDreamU(JDreamU検索ガイド)
 http://pr.jst.go.jp./jdream2/manual.html

・STN(STN技術資料)
 http://www.jaici.or.jp/stn/stn_doc.html

・PATOLIS(PATOLISサーチガイド)
 http://search.p4.patolis.co.jp/search.html

・Dialog(ジー・サーチ セミナー配布資料、テキスト)
 http://database.g-search.or.jp/support/seminar/text.html

・CiNii(旧NACSIS-IR、CiNiiとは)
 http://ci.nii.ac.jp/cinii/pages/outline-j.html
 
(3) サイト                          


アスキーデジタル用語辞典 
 
・IT用語辞典e-words
 http://e-words.jp/

・文化庁ホームページ  ※著作権〜新たな文化のパスワード〜を中心に
 http://www.bunka.go.jp/

・財団法人インターネット協会
 http://www.iajapan.org/




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