「情報の科学と技術」 抄録

Vol. 63(2013), No.7

特集=「特許分類を考える」

特集 : 「特許分類を考える」の編集にあたって

 新興国における特許調査が重要になってきている現在,これら主として非英語圏の調査は非常に困難であります。唯一の手がかりとしては,分類(IPC:国際特許分類)がありますが,これらの国,特に中韓では出願数が急増しているにもかかわらず日本におけるFI,Fタームや欧州におけるECLA,米国におけるUSPCのような独自分類がありませんでした。また,1件の特許あたりの分類の付与数も少なく,検索が困難であるのが実情でありました。このため日米欧中韓の特許庁(5極特許庁)では2009年から共通ハイブリッド分類(CHC:Common Hybrid Classification)プロジェクトが開始されています。これは5庁が共通に用いる分類を策定して,これをIPCに導入することにより,IPCを細分化することを目指しているものです。この裏には2006年より進められているIPC第8版(IPC-R)による3極合意を前提としたIPCの細分化が遅々として進まなかった事があります。実際にはこのCHCプロジェクトでは,FI,ECLA,(USPC)から選ばれることになっていましたが,その後EPOのCPC(共同体特許分類)の動きがあり,CHCはこの実現を待ってFI,CPCから選ばれることとなりました。このような特許分類に関する細分化の状況を踏まえて特許分類について種々の観点から再考してみたのが今回の特集です。
 大阪工業大学の都築先生には,総論として特許分類の現状と問題点について論じていただき,各論としては,CHCへの取り組みについて特許庁の太田氏に解説いただきました。また,CPCの状況についてはランドンIPの野崎氏,DB供給側のベンダーのCPCへの対応について一般社団法人化学情報協会の上野氏に論じていただきました。またユーザー側の立場から特許分類の使用上の注意点,問題点等について特にCPCによる検索についてスマートワークス株式会社の酒井氏に論じていただき,また日本における特許分類の問題点について臼井氏に論じていただきました。
 最新の話題であるCPCについてのお話が中心の特集とはなりましたが,本来は特許分類についてじっくりと考えてみたいということから企画したものです。特許調査に特許分類は欠かせないものですが,使用する側には特許分類に関する知識は必須なものである一方で複数の執筆者の方がご指摘されているように,確実な付与およびメンテナンスが重要であることは言うまでもないことでしょう。今回の特集が皆様方の特許調査に対してなんらかのご参考になれば幸いです。
 この前書きの校正中に,中国,韓国がCPC導入に踏み切ったとの情報が入ってきました。実質的にCHCプロジェクトは終焉ということになりそうな情勢です。その後はCPC=IPCの動きとなるのか,目が離せない状況が続きそうです。なお本特集は,情報科学技術協会パテントドキュメンテーション委員会と会誌編集委員会とのコラボレーション事業として企画いたしましたことを最後に付け加えておきます。
(会誌編集担当委員:パテントドキュメンテーション委員会(主査),白石啓)

特許分類の現状と課題

都築 泉
つづき いずみ 大阪工業大学 知的財産研究科
〒535-8585 大阪市旭区大宮5-16-1
Tel. 06-6954-4244(原稿受領 2013.4.24)

 多数の特許出願を審査・調査するために,特許分類は必須である。世界共通の特許分類として国際特許分類(International Patent Classification;IPC)が,また,日本のFI(ファイルインデックス;File Index),Fターム(File Forming Term)をはじめ,各国特許庁独自の分類も長年にわたり利用されてきた。しかし,経済のグローバル化,技術の発展に伴い,IPCにも限界があることから,米国・欧州の両特許庁での共通分類としてCPC特許分類(Cooperative Patent Classification)の運用が開始され,また,日本,中国,韓国を加えた五大特許庁でのCHC特許分類(Common Hybrid Classification)プロジェクトが推進されているが,政治的な思惑もあり,行き詰まりも指摘されている。これら特許分類の歴史・経緯・現状と課題を概説する。

キーワード: 特許分類,国際特許分類(IPC),FI,Fターム,USPC,ECLA,CPC(Cooperative Patent Classification),CHC(Common Hybrid Classification)

CHCプロジェクトの現状およびその行く末について

太田 良隆
おおた よしたか 特許庁 特許審査第一部 調整課 特許分類企画班長
〒100-8915 東京都千代田区霞が関3-4-3
Tel. 03-3581-1101(原稿受領 2013.4.19)

 日米欧中韓の五大特許庁は,特許分類に関する取組として共通ハイブリッド分類(CHC)プロジェクトを実施してきた。本プロジェクトは,各庁の既存の内部分類(JPOのFI・Fターム,EPO・USPTOのCPC)を調和するものであり,国際特許分類(IPC)を迅速に詳細化することが期待され,日本国特許庁としてもその推進のために多くの労力を費やしてきたが,その進捗は芳しいとは言えない。そして,最近,五庁は,このCHCプロジェクトに代えて,新たな枠組みによってIPCの詳細化を図っていこうとしている。本稿では,CHCプロジェクトの現状およびその行く末について説明する。

キーワード: IPC,国際特許分類,五庁,CHC,共通ハイブリッド分類プロジェクト,分類調和,FI,Fターム,CPC

CPCについて

野崎 篤志
のざき あつし ランドンIP合同会社
〒108-6028 東京都港区港南2-15-1品川インターシティA棟28階
Tel. 03-6717-4062(原稿受領 2013.4.23)

 2013年1月1日より新しい特許分類である欧米共同特許分類CPCが発効された。欧州特許分類ECLA・ICOをベースとしたCPCについて,導入の背景・概要およびその詳細について述べる。欧州特許庁・米国特許商標局審査官のみならず特許情報ユーザーである企業としても,CPC導入により特許調査の効率化が図れる側面がありながらも,ユーザーの立場から見ると付与体系・付与精度やタイムラグについて詳細が明らかになっていない点も多く,当面はIPC・USPCやFI・Fタームなどの特許分類およびキーワードと併用しながら検索・調査を行うことが望ましい。

キーワード: 特許分類,米国特許商標局,欧州特許庁,CPC,米国特許分類,欧州特許分類,ECLA,ICO,IPC,FI,Fターム

CPCへの対応 - STNの場合

上野 京子
うえの きょうこ 一般社団法人化学情報協会 情報事業部
〒113-0021 東京都文京区本駒込6-25-4 中居ビル
Tel. 03-5978-3601 (原稿受領 2013.5.2)

 2013年1月に発効した共通特許分類CPCが今後の特許調査に大きな影響を与えることは必至である。STNには多くの特許データベースが搭載されており,特許分類を利用した検索をより正確に実施するには,各データベースのCPC収録状況やSTNでの特許分類の検索・表示に関する知識が不可欠である.本稿では,STNにおけるCPCへの対応をまとめて解説し,また特許分類を検索に利用する上での注意点も合わせて紹介した。

キーワード: CPC,共通特許分類,STN,CAplus,WPI,INPADOC,オンラインシソーラス

欧州と米国の新しい特許分類CPC(欧州米国共通特許分類)の活用と留意点

酒井 美里
さかい みさと スマートワークス株式会社
〒102-0074 東京都千代田区九段南2-1-30 イタリア文化会館ビル4F KSフロア
Tel. 03-6868-4924(原稿受領 2013.5.21)

 2013年1月より,欧州と米国との共通特許分類,CPC(Cooperative Patent Classification)が発足している。従来,米国特許庁は独自性の高い米国特許分類(USPC)を長く利用してきた。今回,共通特許分類の発足に伴い,米国特許庁は国際特許分類(IPC)の流れを汲む分類体系に歩み寄った,と捉えることもできよう。欧州/米国の二庁間では重複作業の排除と情報共有が期待されている,といわれる。また一般ユーザーにとっては分類体系の理解,調査分類の決定などの面で,負担軽減のメリットがあると考えられる。本稿ではCPC分類に至る流れや,分類体系の概要を概説した上で,Espacenet,USPTOにおける検索方法と留意点について概説する。

キーワード: 特許分類,CPC,ECLA(旧・欧州特許分類),USPC(旧・米国特許分類),米国特許,欧州特許,欧州特許庁,Espacenet

日本における特許分類の問題点
- ヒット件数0件のIPCとは -

臼井 裕一
うすい ゆういち (社)情報科学技術協会 理事
Tel. 082-830-1540(原稿受領 2013.4.25)

 日本において特許分類の付与は具体的にどのようになされているのか,また審査室の担当技術との関係はどのようになっているのかについて説明し,FIとIPCとのコンコーダンスの不備によってヒット件数0件のIPCが生じていることを示した。また,IPCの方がFIよりも細分化されている実例についても例示した。このような分類付与の問題点に対しては,やはりFI・Fタームを中心に検索すべきである旨指摘し,あわせてFI・Fタームのメインテナンスが適切になされているかについても触れた。なお,現在進行中のIPC細分化のCHCプロジェクトの進展も含めて今後の動向を注視する必要がある。

キーワード: FI,Fターム,CHCプロジェクト,IPC,コンコーダンス,登録調査機関,IPCC,審査室,先行技術調査区分
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