「情報の科学と技術」 抄録

Vol. 61 (2011), No.9

特集=「統合検索」

特集 : 「統合検索」の編集にあたって

 今月は「統合検索」をテーマとした特集です。ここ数年,さまざまな分野で「統合検索」の重要性が指摘されるようになってきています。図書館や情報センター等の情報部門だけでなく,企業内の知識情報,材料科学・ライフサイエンスなどのさまざまな分野で,複数のデータベースを一元的に検索し,ワンストップで情報を探すことのできるサービスの必要性が唱えられ,開発が盛んに行われてきています。一方で,現状では「統合検索」がどのようなものを指すか,その範囲や定義はまだ定まっておらず,あいまいなまま既存サービスや商用製品などからくるイメージが独り歩きしている感があります。
 統合検索には大きく2つの潮流があるようです。1つは複数の対象データを統合的に索引付けする検索サービスで,複数のデータベースを横断的に串刺し検索する「横断検索」や,利用者指向の優れたインタフェースを提供する「次世代OPAC」といったサービスに続いて出現してきたものです。もう一方には,単一種別の情報だけではなく,多種多様な情報を統合して様々な角度から探索できるようにしたワンストップ型データベースです。前者の典型はPrimo(ExLibris)やSummon(SerialSolutions),WorldCat(OCLC)など製品化が進むディスカバリーツールとも呼ばれる製品群であり,後者は,グーグルやヤフー等の一般サーチエンジンまたはJST J-GLOBALに代表されるワンストップ型の検索サービスです。
 本特集では,これらの統合検索サービスに先進的に取り組んでいる方々から,事例を中心として,それぞれの統合検索サービスでもたらされる利点とともに,課題や今後に向けての方向性を解説いただきました。
 松邑氏はJST J-GLOBALが提供する統合検索のコンセプトと仕組みを述べています。山名氏にはサーチエンジンにおいて欠かせなくなってきた統合検索の役割とその最新の研究開発を解説していただきました。伊藤氏にはこれまでの統合検索ツールの歴史を振り返っていただくとともに,ExLibris社のPrimoとPrimo Centralの事例を紹介いただきました。飯野氏は佛教大学附属図書館のSummonによる統合検索サービスを日本初の導入例として紹介し,導入と運用面からの課題を述べています。林氏は農林水産研究情報総合センターがこれまで取り組んできた検索サービスの歴史的経緯と,それを受けてたどり着いた統合検索サービスを紹介しながら,統合検索へのアプローチと今後の方向性を論じています。
 これらの事例とその課題をみると,それぞれに違いはありますが,とりわけ,統合され検索されるコンテンツ群をどう作るか,統合する範囲をどう決めればよいか,検索結果から本当に必要な情報を選り分けてたどりつくための技術といった点に共通する課題があることがわかります。なにより,現在提供されている統合検索サービスは,必ずしもその進化の最終形態に達していない,というのがこれらの論考から読み取れることではないでしょうか。一方で,そういった過渡的な段階にあっても試行錯誤を重ね,情報アクセス環境を整備し続けることが情報専門職の役割と考えます。本特集の論考が,現在の検索サービスを概観し,今後の検索サービスを考える助けになれば幸いです。
(会誌編集担当委員:高久雅生(主査),小山信弥,白石啓,松下豊)

J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)における情報連携の取り組み

松邑 勝治,植松 利晃,國岡 崇生,治部 眞里,堀内 美穂,山田 直史,坂内 悟,齋藤 隆行
まつむら かつじ,うえまつ としあき,くにおか たかお,じぶ まり,ほりうち みほ,やまだ なおふみ,ばんない さとる,さいとう たかゆき
独立行政法人科学技術振興機構 イノベーション推進本部 知識基盤情報部
〒102-0081 東京都千代田区四番町5-3
Tel. 03-5214-8431(原稿受領 2011.6.20)

 独立行政法人科学技術振興機構(JST)が提供するJ-GLOBALは,産学連携や研究課題立案における課題探索(抽出)において業種を超えた情報収集や,新たな発想を支援するサービスである。JSTは,J-GLOBALを介してJST内外のさまざまな専門的なサービス等と連携し,質の高い科学技術情報をより効果的に流通させることで,わが国のイノベーション創出に貢献することを目指している。本稿ではJ-GLOBALが実現している"統合検索"機能を中心に,サービスの現状,今後の展望について紹介する。

キーワード: 統合検索,イノベーション,知識インフラ,予見,オントロジー,セマンティックWeb,辞書,文献,特許,研究者

ウェブサーチエンジンに見る統合検索

山名 早人
やまな はやと 早稲田大学 理工学術院
〒169-8555 東京都新宿区大久保3-4-1
Tel. 03-5286-3503(原稿受領 2011.6.30)

 近年のウェブサーチエンジンは,その検索結果ページに様々な情報ソースからの検索結果を統合して表示する。統合される情報ソースは,ウェブページだけではなく,ニュース記事,ブログ記事,画像,動画,Twitterなどのリアルタイム情報などである。しかし,こうした様々な情報ソースからの検索結果は常に表示されるわけではない。ウェブサーチエンジンは,どのクエリに対して,どの情報ソースを対象に検索し,どの検索結果を統合すべきかを判断している。本稿では,こうしたウェブサーチエンジンにおける統合検索で用いられている技術とその評価手法を紹介すると共に,統合検索の今後について述べる。

キーワード: サーチエンジン,統合検索,ブレンド検索,専門検索,ユーザスタディ

統合検索システムのこれまでとこれから:
 Primo + Primo Central

伊藤 裕之
いとう ひろゆき ユサコ(株) システム販売グループ
〒106-0044 東京都港区東麻布2-17-12
Tel. 03-3505-3259(原稿受領 2011.7.11)

 インターネット上に点在する学術情報資源を効率よく検索するシステムに対する需要が年々高まっている。その背景には,Googleをはじめとするサーチエンジンが学術分野へ広く浸透していることが挙げられるだろう。学術情報資源を効率よく検索するシステムの開発は以前から進められてきたが,システムを提供する側の思惑と,利用者側の期待との間には大きな隔たりがあることが浮き彫りになっている。本稿では,学術情報資源を効率よく検索するシステムとして横断検索システムと統合検索システムを取り上げ,両者の特徴および違いについて整理する。あわせて,統合検索システムの一例として,Ex LibrisのPrimoとPrimo Centralの特徴および取り組みについて述べる。

キーワード: Primo,Primo Central,MetaLibPlus,Ex Libris,統合検索,ディスカバリ,デリバリ

佛教大学図書館におけるSummonの導入
 −ディスカバリーサービスとシステム連携−

飯野 勝則
いいの かつのり 佛教大学図書館
〒603-8301 京都市北区紫野北花ノ坊町96
Tel. 075-491-2141(原稿受領 2011.6.20)

 佛教大学図書館は,2011年4月に「ディスカバリーサービス」であるSummonを日本で初めて導入した。だが,その能力を十分に発揮するためには,図書館で従来から利用されてきたOPACやリンクリゾルバとの連携が欠かせない。とはいえ,OPAC連携においては,削除レコードや通信プロトコルの問題など,日本の図書館システム特有の課題も存在する。一方,リンクリゾルバは,Summon上の論文メタデータから図書館の紙媒体の雑誌への誘導をシームレスに行うことを可能にし,またハーベストを行えない非連携サイトへの誘導すら可能にすることから,再度着目すべきツールとなった。今後はSummonの日本語コンテンツの強化とともに,リンクリゾルバの機能強化が課題になるだろう。

キーワード: ディスカバリーサービス,検索エンジン,統合検索,Summon,リンクリゾルバ,OPAC,次世代OPAC,ミッシングリンク,日本語検索,ハイブリッド図書館

農林水産研究情報総合センターにおける統合検索システムの構築と運用

林 賢紀
はやし たかのり 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所研究情報課(農林水産研究情報総合センター)
〒305-8601 茨城県つくば市観音台2-1-9
Tel. 029-838-7316(原稿受領 2011.6.27)

 農林水産研究情報総合センターにおける1984年から今日に至る文献検索サービスについて概説する。まず,2000年より提供を開始した横断検索サービスAGSEARCH構築の経緯とこの運用で得られた課題を整理する。さらにこれらの課題を受け,内外で保有する各種の文献データベースを包括的に検索し,既存製品であるMetaLib,X-ServerおよびオープンソースソフトウェアXerxesを組み合わせて開発した統合検索サービス,Database Quick Searchの導入と現状の運用について紹介する。また,今後は,より多くのデータベースを利用可能にして情報源を広げるか,あるいは「入手」「所在確認」を重視し利用者を情報源に確実にナビゲートできる機能を強化するか,利用者の探索行動を分析・把握しつつ検討したい。

キーワード: 横断検索,統合検索,メタサーチ,MetaLib,データベース

Twitterを用いた大学間授業実践

今井 福司*1,岡部 晋典*2
*1いまい ふくじ 東京大学大学院教育学研究科
*2おかべ ゆきのり 近大姫路大学教育学部
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東大教育学部内図書館情報学研究室(2F 221) 今井福司
Tel. 03-5841-3976(原稿受領 2011.5.13)

 本報告では,Twitterを用いた大学間での授業実践について述べる。現在ICTの活用が幅広い分野で求められており,TwitterはICT活用のメディアの1つとして挙げられる。今回は異なる二大学間で電子書籍に関する同一の課題を設定し,Twitterを用いて発言させる演習を行った。それぞれの授業は曜日も時間帯も異なっていたが,Twitterを用いることで,互いの受講生の交流を実現でき,協力要請を行った大学図書館員の授業参加を容易に行えた。授業後の受講生に対するアンケート結果では,授業に対する積極的な評価がある一方,授業計画の見直しや,教材について改善が必要であることを示唆するような評価も見られた。

キーワード: 大学間連携,電子書籍,Twitter,授業実践報告,ICT
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