「情報の科学と技術」 抄録

Vol. 59 (2009), No.2

特集=「図書館員に求められる資質とキャリア形成」

特集 :「図書館員に求められる資質とキャリア形成」の編集にあたって

 これまでも,図書館員の育成や教育について様々なところで取り上げられてきたことは,ご承知の通りかと思います。
 筆者の職場では,かつて(あるいは今も)一から十まで教えないと何もできない人や,教えられたこと以外は何もできない人というのが少なからずいました。そういう人に限って,教育や研修の必要性は声高に訴えるものの,いざ研修の機会を与えると俄然消極的になります。一方で,ほんの少しの手ほどきとサポートを与えるだけで,自らいろいろなことを吸収し学んでいく人もいます。そうした人はまた,日々の仕事からだけではなく,より世界を広げて糧としているように見受けられます。  本人の成長への意志のないところでは,どんな研修も環境もその意味を減じてしまうのではないかという問題意識から,従来の育成,つまり「育てる」という観点ではなく,人が「育っていく」には?という観点から今月号の特集を企画しました。
 こうした,いわゆるキャリア形成については,すでに経営学の領域などでも一般的に論じられているところであり,本来はそうした成果を踏まえたうえで,図書館という世界への応用を考えていくべきかとも思います。残念ながら今回の特集では,そうした論考を含むことができませんでしたが,より図書館界の現場に近いところでの考察をいただくことができました。
 まず,図書館員のコミュニティあるいは大学院という日々の仕事を離れた環境での実情を取り上げました。次いで目指すべき方向を示唆するものとして,キャリアパスについての検討成果をご紹介いただいています。最後に,より実践的な現場での例として図書館員同士のコラボレーションを取り上げていただきました。
 本特集が,より高みを目指す,あるいは目指したいと思っている皆様のお役に立てば幸いです。
(会誌編集担当委員:川瀬直人(主査),田中法子,服部綾乃,深澤剛靖)

図書館コミュニティにおける自発的キャリア形成

呑海 沙織
どんかい さおり 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科
〒305-8550 つくば市春日1-2
donkai@slis.tsukuba.ac.jp(原稿受領 2008.12.9)

 本稿は,図書館コミュニティにおける自発的キャリア形成の特徴について論考するものである。図書館コミュニティにおける自発的キャリア形成の実際の場として,全国の国公私立大学図書館員を中心とする自主的・実践的な研究団体である大学図書館問題研究会をとりあげ,その概要,運営方針,設置背景,主要な活動について概観する。また,図書館コミュニティにおけるキャリア形成の特徴について,1)自己啓発,2)コミュニティの維持・発展,3)継続的なキャリア形成,をあげ,それぞれについて論じる。

キーワード: キャリア形成,図書館員,図書館コミュニティ,自己啓発,大学図書館問題研究会

社会人大学院の意義 −2年間の大学院生活を振り返って−

畠山 珠美
はたけやま たまみ 国際基督教大学図書館
〒181-8585 東京都三鷹市大沢3-10-2
Tel. 0422-33-3301 (原稿受領 2008.11.18)

 最近,図書館員のキャリアアップについて,様々な場面で多くの議論が交わされている。そのような状況の中,図書館情報学の社会人大学院で学ぶ人が増えている。筆者は4年前,実際に社会人大学院に入学した。仕事と学業の両立には大変苦労したが,大学院の2年間を通して多くのことを学ぶことができた。本稿では,筆者の実体験を振り返りながら,大学院が加わった生活の状況や大学院の授業内容について具体的に紹介するとともに,社会人大学院ならではの成果,すなわち大学院での学びが実際の仕事にどのように役立っているかという社会人大学院の意義について考察する。

キーワード: 社会人大学院,社会人教育,図書館情報学,図書館員,キャリアアップ

筑波大学大学院図書館情報メディア研究科における図書館員を対象とした教育の現状

中山 伸一
なかやま しんいち 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科
〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2
Tel. 029-859-1342,029-859-1000(原稿受領 2008.11.21)

 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科が行なっている図書館員のキャリア形成に関わる取組みを,主として大学図書館員を社会人大学院生として受入れている状況および公共図書館員を主たる対象とした図書館経営管理コースの実施状況を中心に紹介する。社会人大学院生に対しては単に図書館員としてのスキルアップだけでなく,研究者や大学教員へのキャリアも視野に入れた教育を行なっていることを,図書館経営管理コースでは図書館管理者を目指す図書館員に必要な教育を行ない,一定の条件をクリアした者にコース修了証を交付していることを述べる。

キーワード: 大学図書館員,公共図書館員,キャリア形成,図書館情報メディア研究科,図書館経営管理コース

図書館員の研修とキャリアパス:公共図書館を中心に

石原 眞理
いしはら まり 神奈川県立図書館 資料部新聞雑誌課
〒220-8585 神奈川県横浜市西区紅葉ヶ丘9-2
Tel. 045-263-5922(原稿受領 2008.11.17)

 ここ数年,図書館関係の機関・団体が,図書館員の研修や養成に関する調査研究を行っている。本稿では,主に全国公共図書館協議会が行った研究を基に,図書館員の研修とキャリアパスについて考察した。  図書館においては,急激に人員の削減や非正規職員化が進んでいる。一方,図書館に対する利用者の期待は,年々高まっている。図書館の現場では,従来から続いている図書・逐次刊行物などの現物提供に加え,ITC関連の技術の進展など図書館サービスをめぐる変化がある。このような状況の中で,研修の主催側は,これまで以上に研修の強化が必要になっている。図書館員側は自らのキャリアパスについての認識を持ち,受講する研修を主体的に選択することが必要であるだろう。

キーワード: 公共図書館,司書,研修,スキルアップ,キャリアパス,人材育成

人材育成としての図書館コラボレーションの意義と効果的な実践方法

米澤 誠
よねざわ まこと 山形大学学術情報基盤センター
〒990-8560 山形県山形市小白川町1-4-12
Tel. 023-628-4209(原稿受領 2008.11.21)

 異なる組織間のコラボレーションを,職業人としての資質を高める活動として位置づけ,「チーム学習による活性化」「共通認識から創造する活動」「成果物の公開による社会貢献」という意義をもつことを明らかにする。そして,コラボレーションを効果的に実践するための,「会議革命」「図解コミュニケーション」「共同作業によるOJT」という手法について解説する。

キーワード: 図書館活動,コラボレーション,人材育成,キャリア形成,会議革命,図解コミュニケーション

連載:オンライン情報検索:先人の足跡をたどる(11)
SDCが残したオンライン情報検索サービスの足跡を辿る

松島 尭
まつしま たかし (株)インテグラル 代表取締役
〒101-0042 東京都千代田区神田須田町1-6 弓矢四国ビル
Tel. 03-3252-5628 (原稿受領 2008.10.31)

 1960年代末から始まる米国でのオンライン文献検索サービスに向けて,SDC社が開発したORBITとそれを用いて始まったSDC Search Serviceならびに国内で開始したローカルな「サーチJ」サービスなどを通じて初期の様子を紹介する。

キーワード: SDC,SDCサーチサービス,MEDLINE,ORBIT,日本SDC,サーチJ
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