「情報の科学と技術」 抄録

Vol. 56 (2006), No.5

特集=「無料で利用できるデータベース」

特集:「無料で利用できるデータベース」の編集にあたって

 「文献調査をするとき,サーチエンジンを使うケースが多い」と聞いたことがあります。たしかに,昨今では,サーチエンジンを使って文献情報を探すことが可能になってきましたが,網羅的に情報入手をしたい場合には,自分にとって必要なテーマが収録されているデータベースを検索する必要があります。
 しかし,一般的に広く知られている文献データベースは有料制となっているものが多く,予算上の関係から,利用者が十分に満足のいく検索ができないというのも事実です。
 また,無料で利用できるデータベースで有料のデータベースから得られる情報を補完しようとしても,そのデータベースの存在が周知されておらず,せっかく利用できる情報の泉を使いきれていないという状況もあるでしょう。
 これを踏まえ,冒頭に無料で利用できるデータベースの現状について概括していただき,その後に各論として日本オンライン情報検索ユーザー会(OUG)のライフサイエンス,特許,化学,インターネット/ビジネス各分科会のメンバーの皆さんに,様々な分野において無料で提供されているデータベースをご紹介していただくことにより,利用者がデータベースを存分に活用し,必要な情報を効果的に収集することの一助になればと思っております。また,OUGおよび各分科会の活動に関心を持っていただければ幸いです。
(会誌編集特集号担当委員:深澤剛靖,高島有治,葛城慶子,堀 恭子)

総論:無料で利用できるデータベースの活用法

桂 啓壯
かつら けいそう 千里金蘭大学人間社会学部
〒565-0873 大阪府吹田市藤白台5丁目25番1号
(原稿受領 2006.2.24)

 インターネット上には無料で検索できるデータベースが数多く存在している。これらの無料データベースに含まれる情報は,一般に汎用検索エンジンでは直接検索できないとされ,見えざるウェブとか深層ウェブなどと称されている。インターネットの情報資源をトータルに検索・利用するためには,汎用検索エンジンのみならず有料・無料のデータベースの検索も含めて考える必要がある。特に無料データベースは,有料データベースに比べ費用がかからない利点があるが,それらの所在がわかりづらいこと,検索方法が多様であること,それらが提供する情報の信頼性・真正性の問題などが種々あるものの,使い方次第で非常に有用なものとなりえるものである。そういった無料DBを活用するための要点を論考している。

キーワード: 無料データベース,ウェブ情報資源,ウェブ活用能力,見えざるウェブ,サブジェクト・ポータル,Web OPAC,動的ページ,Google,オープンソース,CGIスクリプト

ライフサイエンス編 −PubMedとiyakuSearch−

(社)情報科学技術協会 OUGライフサイエンス分科会主査 石井 恵子
いしい けいこ ファイザー(株)
〒151-8589 東京都渋谷区代々木3-2-7 新宿文化クイントビル
(原稿受領 2006.2.20)

 PubMedとiyakuSearchは,データベース・プロデューサーがWeb上で無料公開している医学・薬学分野の文献データベースである。複数の検索システムで提供されている有料のMEDLINEやJAPICDOCと同じデータを検索することができるが,検索機能に違いがある。この違いを理解することはデータベースの利用者、特にインフォプロにとっては重要である。OUGライフサイエンス分科会では,PubMedとiyakuSearchのユニークな機能や有料データベースと比較したメリット・デメリットを把握し,状況に応じて使い分けることにより,無料データベースを有効活用することを探った。

キーワード: PubMed,iyakuSearch,米国立医学図書館,日本医薬情報センター,データベース・プロデューサー,医療情報,インフォプロ,無料データベース,インターネット

特許情報編

(社)情報科学技術協会 OUG特許分科会主査 小川 裕子
おがわ ゆうこ 株式会社 日立技術情報サービス
特許情報統括センタ 特許情報G
〒100-0004 東京都千代田区大手町2-6-2 日本ビル 9F
Tel.03-3246-4731(原稿受領 2006.1.27)

 ヨーロッパ特許庁,米国特許庁,WIPO(世界知的所有権機関),における無料で有用な特許情報データベースについて説明するとともに,それらのデータベースに関するマニュアルを作成している「DB航海士」について紹介する。

キーワード: 無料データベース,ヨーロッパ特許庁,米国特許庁,WIPO(世界知的所有権機関),DB航海士

化学編

(社)情報科学技術協会 OUG化学分科会主査 鈴木 理加
すずき りか 潟_イヤリサーチマーテック
〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6 麹町東急ビル4階
Tel. 03-5226-0941(原稿受領 2006.2.20)

 文献情報をインターネット上で無料で検索できるデータベースが増えてきている。その中から,Google Scholar,Scirus,CrossRef Search,IngentaConnect,CiNiiについて,データベースの概要と検索例を紹介する。これらのデータベースは,検索エンジン,収録対象誌,検索対象範囲などが異なり,単純に比較することはできないが,各々の特徴を知れば,原文が入手できる場合もあり,有効に活用できるデータベースと考えられる。

キーワード: Google Scholar,Scirus,CrossRef Search,IngentaConnect,CiNii,データベース,電子ジャーナル

ビジネス編 −新聞記事,調査報告資料,会社情報−

(社)情報科学技術協会 OUGインターネット/ビジネス分科会主査 渡邉 晃
わたなべ あきら リスト総合事務所
〒243-0003 神奈川県厚木市寿町3-7-14
Tel.046-222-3282(原稿受領 2006.2.20)

 新聞記事,市場・産業関係の調査報告資料および会社情報が一般向けに無料で提供されているウェブサイトを紹介し,これを実際に使用して同種のサイトの結果とを比べた。新聞記事については,クローリングロボットによって収集した多くのニュース発信サイトからの情報を蓄積し,公開しているサイトの一つ「ceek.jp news」,調査報告資料については,比較的多くの調査機関の手になる調査資料を収録し,公開しているインターネットコムの「Online Research Portal」サイト,会社情報については,国内の企業情報提供会社大手の提供するDBを元にしている日経gooによる「企業パーフェクトガイド」である。

キーワード: 無料データベース,ビジネス関連,新聞記事,調査報告資料,会社情報,ceek.jp news,Online Research Portal,日経goo

連載:HUMIプロジェクトの貴重書デジタルアーカイブ(第2回)
デジタル画像について(1)

樫村 雅章
かしむら まさあき 慶應義塾大学HUMIプロジェクト
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
Tel. 03-5427-1646(原稿受領 2006.3.14)

 デジタルアーカイブでは,対象の持つ情報をできるだけ多く正確に含むデジタルデータを取得することが重要である。貴重書を対象とする場合に,デジタルデータとして用いられるデジタル画像は,デジタルカメラなどの普及によって身近なものとなっているが,その成り立ちやファイル形式など基本的なことについて理解しておくことは,デジタルアーカイブの構築や利用ばかりでなく,様々な目的での効果的な活用につながる。今回はデジタル画像に関する一般的なことがらについて,貴重書デジタルアーカイブでの利用を意識しながら簡単に解説する。

キーワード: デジタル画像,画素,解像度,貴重書,デジタルアーカイブ,カラープロファイル

INFOPRO2005ラウンドミーティング その3
アジア諸国における電子ジャーナル動向の調査

時実 象一
ときざね そういち 愛知大学文学部
〒441-8522 愛知県豊橋市町畑町1-1
Tel. 0532-48-0111(原稿受領 2006.3.15)

 アジア諸国における電子ジャーナルの動向について調査した。中国では「中国国家知識基礎設施工程(CNKI)」による雑誌の電子化がすすみ,6500タイトル,1100万件以上の文献がすでに電子化されてサービス提供されている。韓国ではKISTI,KoreaMed,BRICなどの電子ジャーナルサイトが発展しており,数百タイトルが電子化されている。台湾では「中文電子期刊服務(C.E.P.S)」においてCNKIの電子ジャーナルを利用するとともに,台湾内の学術雑誌も搭載している。また欧米の学術出版社もこの地域に進出を試みている。

キーワード: 電子ジャーナル,学術雑誌,電子化,スキャナ,OCR,CNKI,KoreaMed,KISTI,BRIC,C.E.P.S.

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