「情報の科学と技術」 抄録

Vol. 56 (2006), No.4

特集=「システムライブラリアン育成計画」

特集:「システムライブラリアン育成計画」の編集にあたって

図書館や情報センターにおけるシステム構築・運用管理担当者は,なにか技術に長けた特別な存在だと思われていないでしょうか。
しかし,担当者たちに聞いてみると,むしろ図書館業務全般に共通する普遍的なスキルが土台になっているし,どの業務の担当者にも自分の業務知識は共有されるべきだ,と答えます。
なぜ特別視されてきたのでしょうか?
実際にはどんな業務があり,どんなスキルが必要なのでしょうか?
本特集では,「システムライブラリアン」の業務を,
a) 業務やユーザニーズを理解し,現場担当者に業務モデルを提案する
b) ベンダー等の外部委託業者を誘導して,内外のユーザの満足度が高いシステムを構築し,運用,改修のライフサイクルを循環させる
c) 資料の電子化や電子化された資料など,メディアを問わず利用者が必要とする情報を提供する環境をつくる
d) ユーザや職員に対してシステムやコンテンツ利用についてのトレーニングを行うこともある ととらえ,かつそれぞれのレイヤを,
1) 図書館だけでなく組織全体を俯瞰した企画,意思決定への参画,ステークホルダーとの調整を主に行うプロジェクトマネージャ
2) 現場からの要求把握と新規システムの仕様策定が可能
3) 必要な要素技術を把握・習得し,既存のあるいは新技術を組み合わせて現行の業務の改善・改良が可能
4) 各種の要素技術の中から図書館において必要な技術の選択と把握が可能,あるいは学習中 と想定し,教育する側,実務者の側それぞれのお立場からご執筆いただきました。
 なお,本特集は企画初期段階から現役のシステムライブラリアンの皆さんにご参画いただきました。末文ながら深く感謝申し上げます。
(会誌編集委員会特集担当委員:吉間仁子,川瀬直人,木下和彦,高島有治)

総論:システムライブラリアンをめぐる状況と課題

宇陀 則彦
うだ のりひこ 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科
〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2
(原稿受領 2006.2.10)

図書館システムは図書館員のための業務用システムから利用者のためのアクセス支援システムへと大きく位置づけを変えた。アクセス支援システムとは,サービス機能が有機的に連携した統合型ソフトウェア環境を指す。このようなシステムを実現するためには,新しい図書館サービスを発想できる人材が求められる。システムライブラリアンはサービスと技術の両方の視点を持って新しいアイディアを生み出す創造的職業であり,役割は違ってもライブラリアンであることに変わりない。システムライブラリアン育成には,網羅的,横断的,複眼的カリキュラムが必要であり,そのうち最も重要なのは複眼的な視野を持たせることである。

キーワード: システムライブラリアン,図書館システム,図書館サービス,図書館経営戦略,技術革新,ライブラリアン育成

サービス指向環境下におけるシステムライブラリアンの役割とスキル

中尾 康朗*1,永井 善一*2
*1なかお やすろう*2ながい よしかず
国立国会図書館関西館
〒619-0287 京都府相楽郡精華町精華台8-1-3
Tel. 0774-98-1477(原稿受領 2006.1.25)

現状のシステムライブラリアンの仕事は,広範囲で,明確に定義し難い面がある。まず,筆者のこれまでの経験から,システムライブラリアンに欠かせない基礎的なスキルについて考察する。続いて,サービス中心の展開を見せ始めている図書館の動向をまとめ,これからのシステムライブラリアンに期待される役割と,必要となってくるスキルについて考察する。今後は,標準的なシステムライブラリアンの役割とスキルの確立が必要である。

キーワード: システムライブラリアン,役割,スキル,ライフサイクル,上流工程,下流工程,顧客満足度,SLA,プロジェクト管理,運用設計

山中湖情報創造館のデジタルライブラリアンがシステムライブラリアンについて語るいくつかの事柄

丸山 高弘
まるやま たかひろ 山中湖情報創造館
〒401-0502 山梨県南都留郡山中湖村平野506-296
Tel. 0555-20-2727(原稿受領 2006.1.23)

山中湖情報創造館のデジタルライブラリアンとしての視点から,これからの図書館像におけるシステムライブラリアンの有り様についてなどを,日々の図書館業務の中から考えているいくつかの事柄についてまとめてみた。また,地域の情報拠点として図書館が進化する中で,必要なシステムライブラリアン像を描いてみた。

キーワード: デジタルライブラリアン,システムライブラリアン,システムアドミニストレータ,OPAC-API,Web+DB,地域の情報拠点

学術ポータルシステム“PIRKA”:開発と夢の軌跡

今野 穂
こんの みのる 札幌医科大学附属図書館図書館システム係
〒060-8556 札幌市中央区南1条西17丁目
Tel. 011-611-2111(原稿受領 2006.2.7)

札幌医科大学附属図書館は1999年6月,国内初となる異種データベース間連携システムの運用を開始した。アイヌ語で可愛いを意味し,“PIRKA”と名付けられた当館システムは米国国立医学図書館の“IAIMS”をモデルとし,利用者サービスの一元化と地域医療支援サービスの質的向上を目的としていた。 2002年7月,PIRKAは,Ex Libris社の図書館ポータルシステム“MetaLib/SFX”を中心としたシステムに移行したが,地域医療支援サービスの利用者は北海道全域に拡大し,サービスの質的向上の重要性をあらためて示した。本稿では学術情報ポータルシステム“PIRKA”の概要とともに,開発に関わった当館職員の役割について述べる。

キーワード: 図書館サービス,地域医療支援者,医学図書館,学術ポータルシステム,MetaLib/SFX,OpenURL

システムを運用する−農学情報資源システム(Agropedia)の事例−

岡辺 明子
おかべ あきこ 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所研究情報課
〒305-8601 茨城県つくば市観音台2-1-9
Tel. 029-838-7373(原稿受領 2006.1.23)

農林水産研究情報センターでは,農林水産関係の研究開発に有用な文献情報・研究成果情報・衛星画像といった各種データベースを,農学情報資源システム(Agropedia)を通じてインターネット上で提供している。運用を開始して5年を過ぎる本システムでは,(1)全文情報の検索機能の必要性(2)広報不足による認知度の低さ(3)人材の育成方法などが問題点として浮かび上がっている。本稿では,システム運用に携わるシステムライブラリアンの立場から,これらの問題の現状および改善案について述べる。

キーワード: システムライブラリアン,システム運用,農学情報,メタデータ,ポータルサイト,人材育成,広報活動

情報システムに関する政府調達について

森 省吾
もり しょうご 総務省行政管理局行政情報システム企画課
〒100-8926 東京都千代田区霞ヶ関2-1-2
Tel. 03-5253-5357(原稿受領 2006.1.31)

情報システムの政府調達に関する諸問題に対して,政府は平成14年3月,「情報システムに係る政府調達制度の見直しについて」(平成14年3月29日,情報システムに係る政府調達府省連絡会議了承。平成16年3月30日改定)を策定し,政府特有の諸問題を解決しつつ,費用対効果が高く,質のよいシステムを手にするために,政府全体で取り組んでいる。これらの取組の内容は,あらゆる分野の情報システムの調達に広く通用するものであり,調達担当者等関係者にとって興味のあるところだと思われる。本論に示す個々の取組内容を調達の参考にしていただければ幸いである。

キーワード: ライフサイクルコスト,総合評価落札方式,CMM,低入札価格調査制度,政府調達事例データベース,サービスレベル契約,インセンティブ付契約,EVM,調達プロセス管理

連載:HUMIプロジェクトの貴重書デジタルアーカイブ(第1回)
HUMIプロジェクトについて

樫村 雅章
かしむら まさあき 慶應義塾大学HUMIプロジェクト
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
Tel. 03-5427-1646(原稿受領 2006.2.6)

慶應義塾大学HUMIプロジェクト(Humanities Media Interface Project)は,慶應義塾が1996年にグーテンベルク聖書を収蔵したのを契機に創設され,貴重書のデジタルアーカイブに関する研究とデジタル化を実践し,デジタル画像を用いた書物学研究を推進してきた。この10年の間に研究を進めてきた貴重書デジタル化のための手法やその関連技術,海外図書館との貴重書デジタル化協同プロジェクトなどについて,HUMIプロジェクトのデジタル化現場に身を置いて研究や開発に携わってきた著者が,これから12回の予定で連載を担当し,解説,紹介していく。まず今回は,HUMIプロジェクトの創設経緯や活動概要を紹介し,貴重書のデジタル化とその意義や,HUMIプロジェクトと関わりの深いグーテンベルク聖書について解説する。

キーワード: HUMIプロジェクト,貴重書,グーテンベルク聖書,デジタルアーカイブ,デジタル化,デジタルファクシミリ,デジタル書物学

INFOPRO2005ラウンドミーティング その2
電子ジャーナル事業の確立と課題:日本化学会の取り組み

林 和弘,太田 暉人,小川 桂一郎
はやし かずひろ (社)日本化学会学術情報部
〒101-8307 東京都千代田区神田駿河台1-5
Tel. 03-3292-6165(原稿受領 2006.2.10)

日本化学会は1989年から英文論文誌の電子化に着手し,試行錯誤の末,J-STAGEを効果的に利用した日本独自の電子ジャーナルを構築した。その結果,読者数の増大と,投稿数の増大につながり,出版期間の短縮と事業収支の改善にも成功した。この結果を踏まえて,2005年より電子ジャーナルの有料化を開始し,一定のアクセスを確保しながら電子ジャーナルの購読管理体制を整えることができた。本稿では,日本化学会電子ジャーナル事業の現状と,オープンアクセスへの対応,さらに,より良質のジャーナルを目指して行っている取り組みを紹介し,日本の学会系英文誌出版の課題について考察する。

キーワード: 電子ジャーナル,J-STAGE,オンライン有料制限,ビジネスモデル,オープンアクセス,PR活動

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