Vol. 55 (2005), No.5
特集=会議録・会議資料


特集「会議録・会議資料」の編集にあたって

 会議資料には,会議の開催通知,プログラム,講演要旨,会議予稿集,会議録等があります。会議で発表された論文の全部または一部を会議終了後にとりまとめた会議録は,完全な形に編集され,図書あるいは学術雑誌の特集号などとして公刊されることがありますので,比較的入手しやすいという印象があります。
 一方,会議の参加者だけに配布される会議資料は,灰色文献の一種とも言われ,通常の出版ルートに乗らない場合が多いようです。このため会議資料は,希少性が高いにもかかわらず,国際的にも重要な資料群として認められています。
 近年では,会議資料が従来の紙媒体だけでなく,CD-ROMやインターネット等により配布(公開)されるケースも見受けられるようになってきました。インターネット公開の動きが高まるにつれ,以前のような入手困難性を持たなくなる例もあります。
 この特集では,会議録・会議資料の刊行から収集,利用にいたる様々な観点から現状を紹介していただくことによって,会議録・会議資料についての理解を深めたいと思っています。
 また,情報環境の変化を受け,学協会による情報発信の現状ついても紹介していただきました。
 私たちと同じような課題を抱えている皆さんの参考になれば幸いです。
(担当編集委員 深澤 剛靖,上村 順一,吉間 仁子)

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会議録・会議資料の現状
津田義臣 
つだ よしおみ 潟Gー・アンド・アイ顧問,法政大学・非常勤講師(図書館司書課程)
 〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町2-15-4 大沢ビル4F{潟Gー・アンド・アイ}
 Tel. 03-5623-6255(原稿受領 2005.2.8)

 会議録とは,各分野の専門の研究者達が,その会議テーマに関して提出した論文を収録したものである。最新のオリジナリティな研究成果が発表されていることが多く,その分野に携わる研究者達にとって重要な情報源となっている。一方,メディアの多様化が進んでいて,インターネット,CD-ROM,PDFファイル等での情報提供が増加している。しかし,伝統の紙媒体の冊子体資料も健在である。
 ここでは会議録・会議資料の現状として,事前情報データベース,抄録等を収録した書誌情報データベース,それに全文を提供している全文データベースによって紹介している。参考情報として国会図書館,NACSIS,Amazon comの会議録の収集状況をリスト化している。

キーワード:会議録,事前情報,書誌データベース,全文データベース,インターネット,CD-ROM, PDFファイル,灰色文献

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国内における医学系会議資料の発行形態の分布
宮明秀幸
みやあき ひでゆき (財)国際医学情報センター 図書資料館
 〒160-0016 東京都新宿区信濃町35 信濃町煉瓦館
 Tel. 03-5361-7086(原稿受領 2005.2.28)
 
 国内医学系の学術団体は非常に多数存在しており,それらが発行する会議資料の総数もまた膨大である。(財)国際医学情報センターが所蔵する会議資料と「日本の医学会会議録データベース」を使用して,予稿集,会議録それぞれの発行状況と形態を調査し,学術団体の規模ごとに分析を行った。その結果,主要な学術団体の予稿集,会議録については雑誌掲載の傾向が強いことがわかった。これは医学系会議録の単行書があまり刊行されない事実と関係していると思われる。雑誌形態をとることにより予稿集の収集は容易となるが,会議資料としての性格が隠れてしまう危険性もある。しかし,いくつからの点からみて,会議資料はGrey Leteratureの領域から徐々に脱しつつあるとの印象を持った。

キーワード
:予稿集,会議録,灰色文献,医学情報,学術団体,学術会議,学会資料

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科学技術分野における会議録の収集と提供
 ―日本原子力研究所図書館の場合―
池田貴儀
いけだ きよし 日本原子力研究所研究情報部情報メディアライブラリー
 〒319-1195 茨城県那珂郡東海村白方白根2-4
 Tel. 029-282-5741(原稿受領 2005.3.9)
 
 会議録は,研究者が最新の研究動向を知るための情報源であり,図書館が収集すべき重要な資料にもかかわらず入手が困難とされている。その会議録について,日本原子力研究所図書館では,現在,約1万9千件を収集し研究者に提供している。本稿では,主として,学協会からの会議情報の入手,国際原子力情報システム(INIS)データベースの利用,研究者からの情報入手といった会議録の収集手法を紹介した。また,日本原子力研究所が研究報告書として刊行する会議録JAERI-Confのシリーズについても触れている。

キーワード
:会議録,会議資料,会議情報,専門図書館,灰色文献,C.B.R./KWIC索引,原研研究報告書

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OCLCが提供する会議録検索用データベース
新元公寛
にいもと きみひろ 葛I伊國屋書店 OCLCセンター
 〒150-8513 東京都渋谷区東3丁目13番11号
 Tel. 03-5469-5923(原稿受領 2005.2.21)
 
 OCLCは,目録,ILLサービスのほか,FirstSearchというインターフェイスを通してエンドユーザー向けの情報検索サービスを提供している。この中には70以上のデータベースが収録されているが,会議録検索用のデータベースとしては,会議録自体のデータベースProceedingsFirstと,会議録中の各論文についてのデータベースPapersFirstがある。この2つのデータベースはBLDSCが所蔵する1993年10月以降の会議録の書誌データを提供するもので,会議の概観や各論文の詳細な書誌情報が入手できるようになっている。

キーワード
:OCLC,FirstSearch,会議録データベース,ProceedingsFirst,Proceedings,PapersFirst,BLDSC

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学会が発信する情報
 ―インターネットによるその変容―
永井裕子
 ながい ゆうこ (社)日本動物学会 事務局長
  〒113-0033 東京都文京区本郷2−27−2東真ビル
  Tel. 03-3814-5461(原稿受領 2005.3.14)
 
 学術団体が発信する情報は,かつてはその学会に属する会員だけが知りえるものが多かったことだろう。その団体が標榜する学問領域の情報にしても,学会誌という閉じられた世界の中にのみ,情報は存在した。学会誌は図書館購読というシステムにより,情報は外へ向かって提供された。しかしながら,学会の議事録や学会大会の要旨集などは,ある時期までは,学会誌よりもはるかに人々の目には触れなかった。大会参加者だけに要旨は配布され,議事録は,間違いなく記録されたのだが,多くは,記録することに意義があり,公の人々の目を意識されたものではなかった。
  しかし,学会という存在が,同好会,サークルから次第に脱却していく中で,発信するその情報は,より広く人々に公開するようにも義務付けられてきた。と同時に,インターネットの出現が圧倒的にその情報流通を変えてしまったといえる。

キーワード:学会,UniBio Press,電子ジャーナル,情報流通,会議録,インターネット

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