情報の科学と技術
Vol. 51 (2001)  , No. 4
特集=イケてる情報サービスプロフェッショナルを目指して


特集「イケてる情報プロフェッショナルを目指して!」の編集にあたって
(編集担当委員:田邊 稔,北島由紀子,豊田雄司,峯尾幸信,山地康志)

 ここ数年,特に若者の間で「イケてる○○」という表現が流行っている。これは某TV局のバラエティ番組の影響かも知れないが,最近では,コギャルを中心とした若い女性がイケてるメンズ(格好いい若い男性たち)のことを略して「イケメン」とかとも呼んでいる。そういう意味で「イケてる」は昔風に言うと「イカす」とか「イカしてる」といったフレーズに相当するのだろうか。逆に,自分自身に納得が行かない状況にあるとき「私って全然イケてない」と言うらしい。
 この前置きだけを読むと,「イケてる」という言葉は,いささか低俗な表現で,学術雑誌等で使用することはタブーのように思われるが,私はこのフレーズを若者の文化の1つとみなし,それをややもすると技術志向で堅苦しくなりがちな学術雑誌文化の中に注入することにより,若者にも読みやすい内容になるように旧と新,難と易の中和というか異文化の融合を図りたかった。と言っても,若者に迎合するつもりは全くなく,今回本号でこのフレーズを選択したのは,今後「単なる情報検索員や図書館員」から「情報プロフェッショナル」に変革するためのキーワードとして一番しっくりきたのが,「イケてる」だったからである。
 本号では,様々な立場の方々が様々ネ角度から「イケてる情報プロフェッショナル」へのチャレンジ・アプローチを行っている。今回の執筆者は誰しも自分が“イケてる”なんて思ってない。皆に共通する想いは「変わらなきゃ!」なのである。だからこそ,皆自戒の念を込めて執筆を引き受けてくれたのだと思っている。そういう意味では,今回の執筆者・編集委員とも相当なチャレンジャーだと言える。
 これらを読んで,少しでも「変わらなきゃ!」と思って頂けたとしたら,この上ない幸せである。

目次に戻る


IT時代を生き抜く情報サービス・プロフェッショナルの条件
 三 輪 眞木子* 
   *みわ まきこ 潟Gポックリサーチ
  〒164-0001 東京都中野区中野2-7-12-106
  Tel. 03-3382-1384 (原稿受領 2001.1.18)

利用者を主体とする情報サービスの目標と,そこで働く情報サービス・プロフェッショナルの役割を論じる。ITが情報サービスに与えたインパクトを概観し,インターネットのナビゲーション・サービスであるゲートウェイやデジタル・レファレンス・サービスを紹介。IT時代の情報サービスとして,電子図書館,情報サロン,情報源レンタルの3形態を提示し,各々を運営する情報サービス・プロフェッショナルに求められる技能を考察するとともに,プロフェッショナルに共通の要件として,環境変化を先取りしたイノベーションへの取り組み,継続学習を通じた自己変革,および自己管理を挙げている。

キーワード:情報サービス,情報サービス・プロフェッショナル,インターネット・ナビゲーション・ツール,DRS,ゲートウェイ,電子図書館,情報サロン,情報源レンタル・サービス

目次に戻る


日本の大学図書館員の専門職性:米国との比較
和田幸一* 
  *わだ こういち 慶應義塾大学学術事業連携室
 〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
 Tel. 03-3453-4511(ext.22238) (原稿受領 2001.2.19)

図書館員は,米国でさえ準専門職とされている。専門職の要件に沿って,米国と日本の大学図書館員を比較したところ,少なくとも教育,資格,自律性の点で明らかに日本の大学図書館員は,専門職の度合が低いことがわかった。一方,業務区分・何をもって専門職とするかの困難さ,終身雇用制の存在,社会奉仕の概念の欠如から,日本の専門職化が困難であることを指摘した。そして,筆者が目の当たりにした米国の専門職制の背景として,@専門職というラベルがポジションにつけられていること,A社会への大学図書館の奉仕,B図書館員が図書館界全体を育てていくという意識の存在を紹介した。

キーワード:大学図書館員,専門職,司書資格

目次に戻る


システムライブラリアンの現状と今後
〜イケてる図書館員を目指して

田邊 稔*  
  *たなべ みのる 慶應義塾大学メディアセンター本部
 〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
 Tel. 03-5427-1715 (原稿受領 2001.2.6)

従来,図書館のシステムは大学や機関ごとに検討され,開発されてきた。また,それを担うシステムライブラリアンは,個々に悩み,工夫しながら何とかシステムを維持,管理してきた。しかし,システムに対する周囲の評価は,彼らの努力ほどには高くなかった。そのため,彼らのモチベーションやプロ意識が低下し,被害者意識が芽生え,サービス品質に少なからず影響を及ぼしている。そこで,業務モデルを全面的に見直し,書誌データ,システム,プロトコル等の規格を統一することにより,機関間の横断的なヒューマンリソースシェリアリングや収益事業を展開していく必要がある。また,そのために必要なヒューマンスキルとは何かを模索する。

キーワード:システムコンサルタント,ヒューマンスキル,業務モデル,経験者採用,外部委託,収益事業,在宅勤務

目次に戻る


公共図書館の職員に求められるもの
山重壮一* 
  *やましげ そういち 東京都目黒区立大橋図書館
 〒153-0044 東京都目黒区大橋2-16-34
 Tel. 03-3469-1323 (原稿受領 2001.1.23)

公共図書館の職員には,図書館情報学や関連領域の知識や技能が求められる。しかし,より重要なのは,図書館の顧客に対する感覚や彼らに対する姿勢である。これらを結び付けて,具体的なサービスに適用していく能力が求められる。

キーワード:司書,公共図書館

目次に戻る


企業のプロフェッショナルとは?
長 野 美智代* 
  *ながの みちよ 万有製薬鰍ツくば研究所研究推進課
 〒300-2611 茨城県つくば市大久保3
 Tel. 0298-77-2022(原稿受領 2001.1.29)

民間企業図書館における情報サービスとは何か? 総合的な公共図書館とは大きく異なり,その企業規模や業種により,それぞれの企業が必要とする形態で運用されていると考えられる。民間企業の場合,情報の速報性・網羅性が重視される。情報環境が大きく変化している現在,我々のような研究サポート部門は,オンライン検索による情報提供から研究者のニーズに沿ったWeb版検索システムの選定・導入へと役割も変化しつつある。一方,これだけインターネットが普及していても,机上だけでは入手できない情報もある。社内外の人脈情報を活かし,限られた予算とマンパワーで研究者が真に必要とする情報をいかに速く集めるかがポイントと考える。

キーワード:民間企業図書館,研究サポート,情報サービス,人脈情報,迅速性

目次に戻る


図書館という事業の可能性と求められるプロ・スキル
―INFOSTAシンポジウム2000での発表を通じて―

袴田達雄* 
  *はかまだ たつお 成蹊大学図書館
 〒180-8633 東京都武蔵野市吉祥寺北町3-3-1
 Tel. 0422-37-3545(原稿受領 2001.2.5)

図書館は事業としての戦略を考える必要はないのだろうか。図書館という事業が生み出せる様々な可能性を我々は十分に導けているのだろうか。事業価値を築く上で我々が備えるべきプロフェッショナル・スキルとは何なのか。プロフェッショナル・スキルはどのような体制で導く必要があるのか。これらの疑問から「図書館運営」という事業について考えてみたい。

キーワード:戦略部門,事業価値,事業基盤,市場分析,利用者分析,人材開発,行政職,専門職,プロフェッショナル・スキル

目次に戻る


電子文献の参照をめぐる問題点
藤田節子* 
  *ふじた せつこ
 〒210-0024 神奈川県川崎市川崎区日進町1-8-602
 Tel. 044-211-4093(原稿受領 2001.1.22)
(注) この論文はINFOSTAシンポジウム2000で発表されたものです。

近年,学術論文においても,電子ジャーナルやWebページ等からの参照が見受けられるようになってきた。特にインターネット上の情報の参照は,第三者の審査を受けていない,情報は容易に更新され元の版にアクセスできない,書誌的記述の基準が統一されていないなど,情報流通の観点から見ると印刷媒体とは異なる問題点がある。本稿では,著者が行った電子文献参照の実態調査を踏まえて,電子文献を参照する際の問題点とその解決法について考察する。

キーワード:電子文献,電子的情報源,インターネット情報源,参照,引用,信頼性,書誌要素,書誌記述,著作権

目次に戻る