「CCCを巡る文献複写権問題に関する検討会―第2回―」開催報告

 情報科学技術協会(INFOSTA)は、2001年12月26日(水)13:30〜16:45に、文京シビックホールにおいて同年7月に引き続き標記検討会を実施した。運営はINFOSTAの「複写権問題検討会」(委員長:INFOSTA前副会長 三浦勲氏)が行い、以下のような内容であった。


1. 開催の趣旨と目的
 社団法人日本複写権センター(以下「センター」)は、国内文献に加えて米国CCCの管理著作物をも現行の「包括許諾契約」に包含するための交渉をCCCと行ってきた。しかしCCCから2001年10月に、センターが複写使用料ページ当たり2円に固執する限り交渉に応じられないとの回答がセンターあてに送られ、この交渉は不調に終わった。
一方、国内の自然科学系の出版物は、センター設立当初から複写料ページ当たり2円には馴染まないため、<特別扱い>(出版物ごとに価格を決める方式)を行っていたが、センターは2000年12月に、<特別扱い>の取り扱いを中止した。このため、自然科学系出版社は、これを機に2001年1月に、(株)日本著作出版権管理システム(以下JCLS)を設立した。
 このように、企業など多くの利用者がもっとも必要とする学術・専門情報の複写については、センターは契約の当事者たり得なくなったという事実が浮き彫りになった。ほとんどの利用者は、文献複写についてはセンターがすべての統一窓口になることを強く要求しており、学術著作権協会(以下学著協)を含めこれら3機関とそれぞれ契約を結ばなければならない事態に極めて困惑しているのが実態である。
 INFOSTAは、こうした事態の打開・改善を図るために急遽、関係3機関の責任者の出席を求め、本検討会を開催した。

2. 出席機関と参加者
 当日は以下の3機関の代表者と企業などから90余名が参加した。参加者の中には、専門図書館協議会、日本図書館協会、国立国会図書館、科学技術振興事業団、マスコミ等の関係者が含まれている。3機関の代表出席者は以下であった。
社団法人 日本複写権センター       常任理事 寺島アキ子氏
学術著作権協会                常務理事 中西敦男氏
株式会社 日本著作出版権管理システム(JCLS) 社長 金原 優氏

3. 3機関の報告内容
 まず3機関の近況報告が行われ、ポイントは以下であった。
* センター:寺島氏
 センターは、米国の著作権集中管理団体のCCCと双務協定を結ぶ交渉を行ってきたが、
CCC側の都合で契約交渉の打ち切りを通告してきた。しかしセンターとしては、IFFRO(世界複製権機構)の同じ会員であるCCCとは、今後とも交渉を続けるつもりである。
* 学著協:中西氏
 CCCからセンターとの契約交渉を打ち切るとの通知を受けたが、最近になってCCCは学著協に対し、TRS(個別期間限定許諾方式)以外に日本の企業が要望しているAAS(調査・年間許諾方式)を認めるとの通知があった。学著協は「著作権等管理事業法」の定めに従い、学著協100%出資の「(株)学術著作権処理システム」を2001年12月21日に設立し、2002年4月から営業活動に入る予定である。4月からの営業に先立ち経団連・利用者への説明を行う予定にしている。
* JCLS:金原氏
 JCLSは、2002年4月を目標に企業等の利用者との「複写許諾契約」を締結できるように準備している。それに先立ちドキュメントサプライヤーとの契約交渉を行っている。現在66の出版社と委託契約を終えて、管理著作物のインターネットでの閲覧準備を行っている。複写料金は出版社ごとに異なるが、企業利用者とは、「個別利用許諾契約」だけでなく「年間利用包括許諾契約」も締結できるよう検討している。

4. 質疑内容
 INFOSTAでは運営をスムーズに行い、ディスカッションにできるだけ多くの時間を割くために、事前にメールによる質問を受け付けた。その結果、約50の質問が集まり当日の質問票による質問を合わせると、質問は約70にも及んだ。複写権問題検討会の委員がこれをとりまとめて質疑は行われたが、積み残しも多くあった。主な質疑は以下であった。

〔質問〕利用者は窓口の一本化を強く望む。3機関は統合できないか。

(センター)センターはいつでも統一を願っているが、自然科学系の出版社はページ40円でなければ嫌だと主張しており、2円で満足している他の出版社と意見が合わない。
(学著協)利用者の要望はよく理解できる。学著協は、いままでも一本化の努力をしてきたし、これからもいつでも一本化に協力する用意がある。
(JCLS)この問題については、学著協と全く同じ意見である。センターがJCLSに権利委託している出版社の権利を尊重してくれるのであれば、いつでもJCLSを解散する。

〔質問〕複写料金1ページ2円がネックになって、CCCはセンターとの交渉に応じないということになった。センターは、この料金を見直すつもりはないか。

(センター)ページ当たり2円というのは、そもそも出版社が同意して決まったものであり、センターが勝手に決めたものではない。利用者がもっと高くしていいというのなら、それを基礎にCCCとも交渉できる。しかし、文芸書のページ単価は76銭であり、その3倍の2円は妥当である。2円以上にしなければならない理由が見当らない。2円が安いといっているのはCCCだけだ。

〔質問〕印刷出版によって採算がとれる文芸書と、購入者が僅少の学術出版物では性質が異なる。学術出版物も同様にページ2円でよいということにはならないのではないか。

(センター)何のことを言っているのか理解できない。

〔質問〕JCLSはエルゼビアなどの外国出版社とも契約すると言っているが、その状況とCCCとの関係はどうなるのか。

(JCLS)現在、エルゼビア、リッピンコットなどとの契約が進んでいる。他にも数社と交渉中で、エルゼビアの場合、複写権料は1論文当たり20ドルになる。また、学著協の業務と重ならないようにCCCに処理するよう依頼している。 

〔質問〕本来、国の集中管理機関は欧米のように一機関に統一されるべきだ。日本が3機関に分離しているのは、利用者無視であり、出版社などによる著作権者の利権争いとしか思えない。

(センター)センターは、利益をあげてはいけないことになっている。利権などが発生する余地はない。
(学著協)著作権管理団体が利用者の便益に留意し足りなかったことは率直に認める。ただし、今回の3機関の鼎立は利権争いとは無関係である。
(JCLS)出版社の利権を優先する意図は全くない。これからも利用者の意見を聞いて出版者と利用者が協調できるよう努力する。  

〔質問〕どうすれば3機関が糾合され、一本化が図れるのか。

(センター)複写の権利は著作者の権利である。著作者の権利が守られるよう、センターはこれまでの方針通りでいくだけだ。
(学著協)センターが中心になって一本化を図るべきだ。その場合、現行の2円という価格にこだわっていては一本化できない。開発系企業と流通系企業とでは複写利用の実態が異なる。個人的意見では、こうした業種・業態別に価格設定を行うなどの工夫を行えば一本化は可能と思う。
(JCLS)学著協の意見に賛成である。複写料は2円でなければならないということでは
なく、センター内部で著作物の利用形態により価格を決定するなど、柔軟な
対応がとれるはずである。

5. 今後の対応
 INFOSTAでは、今回の検討会で浮き彫りにされた問題点を整理し、早急に以下の措置をとる予定である。
1) 積み残しの質問に対しての回答を3機関に求め、ホームページで公開する。
2) 3機関の利用者への対応についてより明確にするために、質問項目を定め各機関から回答を得てホームページで公開する。
3) 利用者保護のため、3機関に対して使用料金の設定・サービス方法に関し、INFOSTAなどの利用者代表との継続的な協議を求める。
4)  著作権集中管理機構の一本化を促進するために、センター、学著協、JCLSに対して直接要求していくほか、文部科学省、経済産業省、総務省、経団連、マスコミ等に対し広く要望・提言を行っていく。

以上