2015. 08 特集= ISOと標準化

特集:「ISOと標準化」の編集にあたって

8月号の特集は「ISOと標準化」というテーマでお届けいたします。
国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)は,様々な産業分野の国際規格を定めている機関です。読者の方もISO9001の「品質マネジメントシステム」,ISO14001の「環境マネジメントシステム」,ISO27001の「情報セキュリティマネジメントシステム」といった規格については耳にされたこともあるかもしれません。
国際規格の検討は200以上の専門委員会(TC:Technical-Committee)の下で行われ,現在,2万件以上の規格が定められています。TCの中で「専門用語,言語,内容の情報資源」(TC37)と「情報とドキュメンテーション」(TC46)の国内審議団体を,現在,INFOSTAが引き受けています。
本特集では,標準化の意義,国際規格が発行されるまでの手順,主な規格の内容,TC37,TC46での活動などをとりあげて,ISOと標準化について少しでも身近に感じてもらいたいと思い企画いたしました。
ISOの活動に長年ご尽力されてきた宮澤彰氏には,本特集の総論として,ISOの概要,標準化の意義,手続き,課題など標準化についてご紹介いただきました。標準化と一言では言い表せない奥深い世界を感じていただけるかと思います。
TC37,TC46の国内対策委員会の委員長である石崎俊氏,菅野育子氏には各TCについて分科委員会(SC:Sub-Committee),作業部会(WG:Working group)の概要,検討状況などをご紹介いただきました。TC37,TC46の内容は読者の方にも関連のある分野ではないでしょうか。
太田泰弘氏には,日本におけるドキュメンテーション技術の標準化について,初期の活動から現在に至るまでの経緯などをご執筆いただきました。創成期の活動を知ることができる貴重な内容となっています。
時実象一氏には,科学技術情報流通技術基準(SIST:Standard for Information of Science and Technology)」について,歴史的推移,主な内容,ISOとの関連,海外の関連する規格,SISTの今後についてご紹介いただきました。SISTについてはINFOSTAで運用を引き継ぐことも検討されています。
以上,ISOと標準化について,様々な観点からご執筆いただきました。普段はあまり意識することはないかもしれませんが,標準化が世界に果たしている役割の大きさを感じていただけたのではないでしょうか。ご執筆いただいたみなさまには,ISO関連でのご活動に敬意を表するとともに,この場を借りてあらためてお礼申し上げます。
(会誌編集担当委員:齊藤泰雄(主査),長屋俊,鳴島弘樹,福山樹里)

標準化の世界

宮澤 彰
みやざわ あきら 国立情報学研究所 名誉教授
E-Mail: akira.miyazawa@kpa.biglobe.ne.jp        (原稿受領 2015.5.21)
標準と標準化の世界について紹介する。現在では標準化の対象が,計量標準や仕様の標準だけでなく,幅広い物や事にわたっていることを紹介する。次いで,国際標準と国家標準,団体標準,デ・ファクトやデ・ジュール,コンソーシアム/フォーラム標準といった,標準化の類型について解説する。また,国際標準と国家標準の整合や,インターネット関係の標準化体制など,最近の動向を分析する。さらに標準化の代表としてISOの組織,ISOの標準の種類,それらを開発する標準化手続きを紹介する。最後に,標準化の意義と,かかえる問題点,特に,標準システムの経年化と肥大化に伴う問題点を指摘する。
キーワード:標準化,ISO,デ・ファクト標準,デ・ジュール標準,コンソーシアム標準,フォーラム標準,国際標準,基準認証

ISO/TC 37の用語の標準化活動

石崎 俊
いしざき しゅん 慶應義塾大学
E-Mail: ishizaki@sfc.keio.ac.jp        (原稿受領 2015.5.27)
ISO/TC 37はすべての標準化活動の基盤となる用語に関する標準を中心に60年以上の歴史を持つ。近年はコンピュータによる大規模言語資源の管理と利用,さらに翻訳と通訳などの分野にも国際標準化活動を展開している。TC 37の標準化組織,標準化活動に参加する国々,リエゾン,制定した国際標準などを紹介する。具体的には,5つの分科会が担当する標準化テーマは,用語の標準化の原則と手法,用語辞書の編纂法,コンピュータによる用語データの管理法,大規模言語資源の管理法,翻訳と通訳などを含む。2015年6月には日本の松江市で,TC 37としては初めて日本における総会を開催した。これを一つの契機に積極的な標準化活動を展開していく。
キーワード:ISO,TC 37,国際標準,用語,概念体系,言語資源,辞書,翻訳,通訳

ISO/TC46の現状:情報流通における国際標準化の意義

菅野 育子
すがの いくこ 愛知淑徳大学人間情報学部人間情報学科
〒480-1197 愛知県長久手町片平9
Tel. 0561-62-4111        (原稿受領 2015.6.28)
1947年創設から現在まで,ISO/TC46(国際標準化機構第46専門委員会)の活動は変化し,その対象や範囲を拡大してきた。現在の体制は2001年の変革によるものであり,電子環境下における情報流通に対応する国際標準化活動のためであった。変革から14年を経て,活動対象は図書館に加えて,博物館や公文書館が実質的に加わり,国際規格となったテーマは国名コード,翻字,文献識別,情報検索用コマンド,図書館統計から,プロトコルとメタデータ,情報識別子,パフォーマンス指標,レコードマネージメントへ拡大した。このような動きを分科委員会(TC46/SC4 TC46/SC8, TC46/SC9, TC46/SC10, TC46/SC11)ごとに詳しく見た上で,ISO/TC46国内委員会が現在取り組みはじめた国際提案ILII(International Library Item Identifier)とデジタルアーカイブ利活用の国際標準化の重要性について述べた。
キーワード:ISO/TC46(国際標準化機構第46専門委員会),ILII(国際図書館資料識別子),国名コード,翻字,プロトコル,メタデータ,ISIL(国際標準図書館識別子)パフォーマンス指標,情報識別子,レコードマネージメント

日本におけるドキュメンテーション・ターミノロジー技術標準化の幕開け

太田 泰弘
おおた やすひろ
E-Mail. y.ota@tcn-catv.ne.jp        (原稿受領 2015.5.15)
1952年,ヨーロッパにおけるドキュメンテーション技術標準化の実情が日本にはじめて紹介され,ドキュメンテーション講習会などを通じて,国内に広く知られるようになった。1969年,ISO/TC46の活動に対応する国内委員会が設置され,1970年にはP-memberへの昇格を果たした。国際規格に対応するJIS規格の制定,科学技術庁の主導による“科学技術情報流通技術基準”の制定によって,国内における標準化の基盤が確立した。ターミノロジー技術標準化の国内活動は,日本が1980年にISO/TC37のO-memberとして加入したことに始まり,1991年に対応する国内委員会の設置とP-memberへの昇格とによって本格化し,関連する国際会議への恒常的参加につながった。
キーワード:ドキュメンテーション技術,ターミノロジー技術,標準化,発展史

SIST(科学技術情報流通技術基準)について

時実 象一
ときざね そういち 東京大学大学総合教育研究センター
〒158-0094 東京都世田谷区玉川1-15-3-409
Tel. 090-3452-5501        (原稿受領 2015.5.20)
SIST(科学技術情報流通技術基準)について,その生い立ち,ISO/JISとの関連,主要な基準の解説,学術情報流通に関連する海外の規格・基準活動,SISTの今後などについて解説した。
キーワード:SIST,ISO,JIS,NISO,電子ジャーナル,科学技術情報,抄録,索引,学術雑誌編集,学術論文,雑誌名,機関名,参照文献

オープンアクセス,インパクトファクター,XML
-Nagoya J Med Sci編集の現場から-

蒲生 英博
がもう ひでひろ 名古屋大学附属図書館医学部分館
〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65
Tel. 052-744-2505        (原稿受領 2015.6.18)
大学図書館が,学内で発行している紀要のオープンアクセス化を行い,研究情報の発信を支援することは,大学図書館による研究支援として,重要な活動と考えられている。本稿では,筆者が編集を担当しているNagoya Journal of Medical Scienceを例にして,2010年にオープンアクセス化を行い,2013年に最初のインパクトファクターを取得するまでの経緯を述べる。またその後,XML化を行いPMCに登録することで,医学系の重要なデータベースであるPubMedにフルテキストがリンクされて利用できるようになったことと,Nagoya Journal of Medical Scienceの現状と課題を述べる。
キーワード:オープンアクセス,インパクトファクター,XML,機関リポジトリ,紀要,大学図書館,研究支援,PMC,PubMed,査読

次号予告

2015.9 特集=「コレクション構築の現在」
(特集名およびタイトルは仮題)

  • 総論:デジタル時代のコレクション構築
  • 各論1:シェアード・プリント
  • 各論2:オープンアクセス時代の蔵書構築とサービス
  • 各論3:PDAで変わる選書の未来
  • 各論4:公共図書館の蔵書構築と共同保存事業

など