1999年 11月号抄録

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特集「研究評価の方法論」の編集にあたって

我が国の研究評価について,現在政府・民間とも指針・政策,取り組みが活発になってきています。たとえば,平成9年8月7日に「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」が科学技術会議の意見具申に基づいて内閣総理大臣によって決定され,これを基に各省庁で厳正な評価を実施する体制整備が進展中です。科学技術庁による平成10年版「科学技術白書」にも研究評価の強化について記載されています。文部省では,平成9年12月9日に学術審議会が「学術研究における評価の在り方について」の建議を行っています。また広島大学大学教育研究センターが文部省の委託を受けて「大学の評価システムに関する全国調査」を平成10年に実施しています。この調査結果を参考に大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」の中で,大学の自己点検・評価の充実,第三者評価の導入などが改革方策として挙げられています。さらにまた平成10年には,「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」も成立し,「研究交流促進法」の改正も行われるなど,研究成果の社会還元を支援するための制度作りも進んでいます。   本特集では,こうした研究評価の取り組みについて,それぞれ異なる立場から方法論を中心に紹介する企画としました。研究評価の方法論といっても,それはいろいろな分類のもとにいろいろな方法が存在しています。例えば,評価者としての自己評価,外部評価,相互評価という分類,評価時期としての事前評価,中間評価,事後評価という分類,評価対象としての個人,組織,機関という分類,評価指標としての客観的評価と主観的評価という分類,評価貢献としての学問的意義と社会・経済への貢献という分類,などがあります。また,客観的評価指標としては著作数や論文数,研究発表数,学会活動,官公庁活動,受賞,特許,あるいは外部の公的研究費の導入状況,などが従来取り挙げられています。また,この際にはビブリオメトリックスという分析方法もよく使われます。ビブリオメトリックスは図書館情報学の一手法でもあり,論文,引用,研究費などに関する研究活動情報を定量的に分析しようとする手法です。本誌の性格上,ビブリオメトリックスは関心の高い領域であることから,本号ではまず最初にビブリオメトリックスからみた研究評価についてまとめていただき,次に行政機関,企業,大学におけるそれぞれの機関における研究評価についてまとめていただきました。また文部省が参考にしている英国の政府評価機関における研究評価についても現状の様子も踏まえてまとめていただきました。さらに学術文献の引用データをまとめビブリオメトリックスの手法で分析しやすくしたISIの評価分析ツールについても紹介していただきました。分析の目的に応じて様々な種類がありますが,中でも大学・企業の機関内で出版された文献をもとに作成される分析レポート Institutional Citation Report を中心に解説がなされます。   本特集が図書館や情報部門等の担当者が研究評価を理解し,どのような形で研究評価を支援できるかということを考える参考になれば幸いです。   
(編集担当委員 村上篤太郎,小陳左和子,棚橋佳子,豊田雄司,藤本一光,米澤 稔)

研究評価とビブリオメトリックス  

根岸正光 (ねぎし まさみつ) 学術情報センター
昨今,研究評価に対する一般の関心が高まり,この中で,研究評価における客観的手法として,発表論文数,引用度数等を用いた分析手法,すなわちビブリオメトリックス(計量書誌学,計量文献学)へも強い関心が寄せられているかにみえる。しかし,実際にはインパクト・ファクターの安易な利用なども多く,ビブリオメトリックスへの理解は皮相的なものにとどまっている。本稿では,研究評価の枠組みとビブリオメトリックスの関連を検討した上,筆者らにおけるビブリオメトリックス的統計調査の経験を紹介しつつ,その研究評価への適用性を論じる。  
キーワード:ビブリオメトリックス,計量書誌学,研究評価,引用索引,データベース

国の研究開発の評価の現状

赤池伸一  (あかいけ しんいち) 科学技術庁科学技術政策局計画・評価課 (平成12年9月まで,英国サセックス大学に派遣中)
政府の研究開発全般の評価については,平成8年7月に閣議決定された科学技術基本計画において,研究開発に関し厳正な評価を実施することにより我が国の研究開発の抜本的な活性化を図るとの方針が示され,「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」が平成9年8月に内閣総理大臣決定された。この後、関係15省庁において評価実施要領等が策定され研究開発課題及び研究開発機関の評価が実施されているところである。また,科学技術会議政策委員会の調査によれば,現在,概ね大綱的指針に沿って評価が行われているが,本格的取組は開始されたばかりであり,評価の定着が今後の課題となっている状況である。  
キーワード:評価,研究開発,大綱的指針,科学技術基本計画,科学技術基本法,課題評価,機関評価  

企業における研究開発評価

戸田 巌  (とだ いわお) (株)富士通研究所   
企業の研究開発は利益追求,企業風土のイノベーションの目的で実施される。研究開発もマネジメントの対象であり,研究開発評価結果は具体的なマネジメントアクションに反映される。   本稿ではまず企業における研究開発の目的,その態様,活動項目と成果等について述べ,大学における研究との相違を明らかにしている。その上で企業における研究開発評価の考え方,評価結果を反映するマネジメントアクション,研究開発評価の対象,各対象ごとの評価基準,評価の手法等を概説している。  
キーワード:企業の研究開発,利益追求,企業風土のイノベーション,大学における研究との相違,研究開発評価の考え方,評価結果を反映するマネジメントアクション,研究開発評価の対象,各対象ごとの評価基準,評価の手法  

大学における研究評価

山野井 敦徳  (やまのい あつのり) 広島大学大学教育研究センター  
この論文の目的は,日本の大学における研究評価の概略について言及する。最近の大学の評価は学生の消費者心主義やアカウンタビリティを背景に導入されはじめた。我が国では1991年の大学設置基準の改革によって大学評価が制度的に実施されはじめた。しかし,大学評価を実施した成果は十分に機能していないことがいろいろな調査で明らかにされている。それらが大学の外部評価を導入する背景になっている。各国の大学の研究予算は研究評価の成績に応じて配分される傾向にある。以上をふまえて,ここでは大学における研究評価の具体的な方法として引用分析,人名辞典分析,エポニミティ分析,学術賞などの各種の報償評価システムについて説明した。
キーワード:大学評価,研究評価,研究評価の指標,学問的生産性,大学教授,科学社会学,大学教授職  

英国における研究評価〜高等教育機関におけるRAE  (Research Assessment Exercise)の現状と課題について〜

隅田英子 (すみた ひでこ) 慶應義塾大学人事部 人事部長付き課長代理   英国ノッティンガム大学ビジネススクールMBA課程
本稿は,近年の高等教育をめぐる環境の変化に対応し,英国でこれまで4回実施された高等教育の研究評価(Research Assessment Exercise : RAE)について概観・現状・問題点を資料研究および現場の関係者(大学の教職員)に非公式な口頭調査を実施してまとめたものである。時系列にしたがって,各回のRAEの方法がどのように修正されてきたか示し,同時に,毎回RAEの事後に出た批判に対し,実施機関であるHEFC(Higher Education Funding Council)がどのような調整をしてきたかを説明している。また,既に,英国内の有識者によって実施された事後調査研究などを参照することにより,英国内でこの制度がどのように受け止められているかについても述べている。  
キーワード:英国の高等教育,研究,教育,評価,研究評価,教育政策

ISI研究動向評価ツールの紹介

棚橋佳子  (たなはし よしこ) トムソン・コーポレーション株式会社/ISIジャパン
学術文献の引用データをまとめビブリオメトリックスの手法で分析しやすくしたISIの評価分析ツールについて紹介する。分析の目的に応じた様々な種類があり,大学・企業の機関内で出版された文献をもとに作成する分析レポートInstitutional Citation Reportを中心に解説する。  
キーワード:引用分析,研究評価

統計の読み方 物価編

村田 優美子 (むらた ゆみこ) 慶應義塾大学三田メディアセンター  
物価統計が近年の低価格化などの実態を反映していないのではないか,という声が高まっている。それは,経済・社会の変化に伴い商品やサービスの価格が多様化していることに起因している。そこで今回は物価に関する統計を取り上げる。物価実数統計として小売物価統計調査と全国物価統計調査を,物価指数統計として消費者物価指数,卸売物価指数,GDPデフレータを説明する。また消費者物価指数の精度に関する最近の議論を紹介する。  
キーワード:物価統計,小売物価統計調査,全国物価統計調査,消費者物価指数,卸売物価指数,GDPデフレータ  

 

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