1999年 6月号抄録

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特集「電子図書館」の編集にあたって

  情報流通のインフラが整備される中で,電子図書館は,いまや世界規模のプロジェクトになってきています。情報資源を活用するための研究開発が米国,英国を初めとして世界各国で進められています。また,国家間の連携も国立図書館間の協力という形で進められようとしています。
  わが国でも,国の政策として取り組まねばならない時期にきており,その実現に向けたプロジェクトがいくつも打ち立てられています。例えば,国立国会図書館の電子図書館構想,学術情報センターの電子図書館やオンライン・ジャーナル編集・出版システムプロジェクト,各大学における電子図書館プロジェクトなどがあります。
  電子図書館の実現には,著作権問題など,解決しなければならない問題がいまだ多く残されていますが,その実現を望む要求は高まるばかりだと思います。この特集では,国内外のあらゆる角度から,電子図書館の現状と未来について,迫りたいと思います。
 (編集担当委員 大原寿人,小陳左和子,村上篤太郎,重田有美)

特集:電子図書館
   電子図書館−新しい情報環境の確立を目指して―

北 克一(きた かついち) 大阪市立大学 学術情報総合センター
  電子図書館は図書館にとって目的ではなく,利用者に求める情報を提供する技術的手段である。目的と戦略の数だけ電子図書館構築のビジョンが考えられる。ネットワーク環境下の図書館の今後を探る。
 キーワード:電子図書館,知識情報基盤,図書館資源,図書館サービス

特集:電子図書館
   電子図書館の研究開発の状況―アメリカを中心として

杉本重雄(すぎもと しげお) 図書館情報大学・図書館情報学部

  新しい知識と情報の環境における重要な要素として電子図書館(ディジタル図書館)が注目を浴び,活発な研究開発活動が始められてから数年経つ。本稿では電子図書館に関して最も先進的に研究開発を進めているアメリカ合衆国における状況に関して概説する。具体的には,新しい情報技術を指向した活動に関しては米国科学財団(NSF)ほかによって進められているDigital Library Initiativesの状況,図書館における実際的な電子図書館開発の状況に関して,ミシガン大学やカリフォルニア大学他の状況を中心に解説する。
 キーワード:ディジタル図書館,電子図書館,電子図書館研究プロジェクト,電子図書館サービス,インターネット,World Wide Web (WWW)

特集:電子図書館
   英国高等教育機関における電子図書館イニシャティブ

尾城孝一(おじろ こういち) 東京工業大学附属図書館
  現在英国では,eLibのフェーズ3として,Z39.50を適用した仮想的総合目録の形成をめざした「クランプ」プロジェクト,及び多様な情報資源への統合的アクセス環境を整備するための「ハイブリッド・ライブラリ」プロジェクトが進行している。一方,JISCによって,全国規模で分散配置される電子的情報リソースを更に充実,発展させていくためのDistributed National Electronic Resource (DNER)が提唱されている。本稿では,「クランプ」と「ハイブリッド・ライブラリ」のプロジェクトの活動,及びDNERの実現をめざした動向について報告し,「分散環境下における不均質な情報資源への一元的アクセス」を指向するイニシャティブを概観する。
 キーワード:電子図書館,eLib,クランプ,ハイブリッド・ライブラリ,Z39.50,DNER,分散システム,相互利用性,インフォメーション・ランドスケープ

特集:電子図書館
   国立大学図書館における電子図書館プロジェクト
     ― その経緯と現状 ―

篠 塚 富士男(しのづか ふじお) 筑波大学図書館部情報サービス課 

栗山正光(くりやま まさみつ) 筑波大学図書館部情報システム課

  日本の国立大学附属図書館における電子図書館化への動きを,これまでの経緯を振り返りつつ,各大学の具体的な事例をまじえて紹介する。最初に学術審議会及び国立大学図書館協議会が国立大学の電子図書館的機能の強化にいかに重要な役割を果たしたかを見る。次に,政府から電子図書館予算の措置された国立大学について,それぞれの概要と特色を述べる。また,そのほかに特色ある電子図書館プロジェクトを推進している大学図書館の事例を紹介する。最後に今後の流れとして電子図書館間の連携の動きが見られること,及び連携強化の必要性について論じる。
 キーワード:電子図書館,大学図書館,国立大学

特集:電子図書館
   国立国会図書館の電子図書館―「電子図書館構想」を中心に―

田屋裕之(たや ひろゆき) 国立国会図書館総務部企画課電子図書館推進室
  国立国会図書館は1998年2月に「電子図書館構想」を策定した。本報は「電子図書館構想」を中心に,国立国会図書館の電子図書館への取り組みについて報じる。また,国立国会図書館が2002年の関西館(仮称)までに構築を行うシステム基盤の整備,また,現在開発を進めている各種個別システム及び国内外の協力事業について紹介する。
 キーワード:国立国会図書館,電子図書館,電子図書館構想,電子図書館基盤システム

特集:電子図書館
   NACSISオンラインジャーナルプロジェクト

大山敬三(おおやま けいぞう) 神門典子(かんど のりこ) 佐藤真一(さとう しんいち) 学術情報センター 研究開発部
  学術情報センターで開発中のオンラインジャーナル編集・出版システムは,学協会が刊行する学術雑誌の執筆・編集・出版のすべての工程を電子化・オンライン化し,学術研究成果の流通を効率化するものである。学協会が運用して編集に利用するインハウスシステムは多様な編集部体制や文書形式に対応できる設計となっている。学術情報センターが運用してオンライン出版に用いるシステムは強力な検索能力を持ち,多様な購読者支援機能を提供する。本稿では,このシステムについて,著者,編集担当者,購読者などの視点からの機能や利用方法を交えて説明し,学協会における活用方法を紹介している。
 キーワード:オンラインジャーナル,電子投稿,電子編集,工程管理,オンライン査読,電子認証,全文検索,XML,引用リンク,文書提供



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