1999年 3月号抄録

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特集「音楽・映像のドキュメンテーション」の編集にあたって

  この号では,現場からの報告を中心に,音楽・映像資料のドキュメンテーション活動を紹介します。
  今や音楽・映像作品は,娯楽・芸術・報道・学問・ビジネスなどあらゆる営みのなかで,膨大な量が作られ世に送り出されています。音楽・映像文化は,文字文化以上に,私たちの生活のなかに溶け込んでいます。
  しかしながら,まだ歴史の浅いこれらのメディアは,文献に比べ,まだまだアクセスが容易ではありません。また,それらが,文化遺産として歴史的記録としてどれだけ保存され,世に残されていくのか,関心のあるところです。
  今回は,専門的に音楽・映像資料の収集・保存を行っている方を中心に,各分野での活動の概要と現状・動向などを議論していただいています。
  タイトルにある「音楽」関係は1本になりましたが,それ以外の音響資料については,「TV・ラジオ番組の収集・保存・提供」と「大学図書館における視聴覚資料のハンドリング」でも触れられています。
  映像関係は,フィルム,放送番組,そしてアメリカの例になりますが,テレビニュースと,多岐に渡って取り上げることができました。また,図書館などの枠を越えノウハウが紹介できればと,別に「映像メディアの収集」を設け,視聴覚資料を学術資料として,大学で統括的に提供してゆく取り組みについて報告していただきました。
  音楽(音)・映像メディアが,いかに収集され保存され組織化されているのか。そのしくみや現場での活動を知ることは,利用者にとっても作り手にとっても,アクセスの手段が増え,より選択的に作品・記録に接する機会が得られ,より豊かな活動へ道が開けることと思います。それが,今後のドキュメンテーション活動の活性につながることを願います。
 (編集担当委員:豊田雄司,山地康志,村上篤太郎,友田暁子)

特集:音楽・映像のドキュメンテーション
    音楽メディアのドキュメンテーションにおける問題点

松下 鈞(まつした ひとし)国立音楽大学附属図書館・主任司書
 
  一作品多媒体,一媒体多作品,多言語性,多責任性,タイトルの非固有性等は楽譜,録音資料,映像資料,マルチメディア等の媒体で存在する音楽メディアが持つ特性である。これらは図書等の他の活字メディアと異なる特性であるため目録作成のうえで格別な配慮が必要とされる。本稿においてはこれらの音楽メディアの特徴でもあるさまざまな特性について解説し,その問題点を指摘する。またこれらの問題解決のための方向性を示す。

 キーワード:音楽作品,音楽資料,音楽図書館,統一タイトル,典拠コントロール

特集:音楽・映像のドキュメンテーション
     世界の映画保存事情とフィルム・アーカイヴ

岡島尚志(おかじま ひさし)東京国立近代美術館フィルムセンター
  「フィルム・アーカイヴ(ズ)」という用語は日本人にとって比較的新しいものだが,本論はその前半で,国際フイルム・アーカイヴ連盟(FIAF)に加盟する映画保存機関の名称を比較しながらこの用語を吟味し,また,後半では,インド,アメリカ,日本を含む世界の各自国映画の残存率を検証して,映画遺産のたどった悲惨な歴史の一部を明らかにする。著者は結論として,デジタル時代にこそ,フィルム素材がフィルム・アーカイヴによって〈モノ〉として維持管理されなければならないことを強調している(本文外に最新の「FIAF概要」が訳出されている)。
 キーワード:フィルム・アーカイヴ,映画保存,フィルムセンター,FIAF,自国映画,映画遺産,残存率,法定納本,デジタル,GAMMAグループ

特集:音楽・映像のドキュメンテーション
      放送番組の収集,保存,公開

鈴木 豊(すずき ゆたか) (財)放送番組センター
  テレビ,ラジオ番組は現代における最も重要な情報源のひとつである。NHK,民放各社では日々大量の放送番組を制作し,放送しているが,それらの番組を一度だけの放送に使用して終わらせるのではなく,将来にわたってさまざまに活用していくために社内ライブラリーの充実が進められている。また,89年の放送法の一部改正によって,放送番組を収集,保存して一般に公開する「放送番組センター」の制度が整えられ,これに基づいて91年10月,横浜に「放送ライブラリー」が開設された。わが国における放送番組の保存の現状と,放送番組の公共的活用を図る新しい動きを報告する。
 キーワード:放送,NHK,民間放送,放送番組,保存,公開,放送ライブラリー,FIAT,放送法,著作権

特集:音楽・映像のドキュメンテーション
     米国のテレビニュース資料アーカイブズ

魚住真司(うおずみ しんじ)関西国際大学短期大学部 コミュニケーション学科非常勤講師
  全米にテレビニュースを保存している機関は多数あるが,毎日の放送を継続して収録しているアーカイブはほんのわずかしかない。テレビ局はようやく1970年代半ばから,テレビニュースを部分的にではなく,番組として完全なかたちで保存するようになったが,一般公開にはほど遠い。国立公文書館や議会図書館は,過去のニュース番組を公開しているものの,コレクションが不完全であったり利用に制約があったりして,一般が利用しやすい環境とは言いにくい。その一方で,ヴァンダービルト大学付属のテレビニュース・アーカイブは,インターネットによるアクセスも便利で,研究者でなくとも利用しやすくなっている。
 キーワード:テレビ,ニュース,放送,報道,ビデオ,映像,ネットワーク,議会図書館,ヴァンダービルト・テレビニュース・アーカイブ

特集:音楽・映像のドキュメンテーション
         映像メディアの収集

岡田一男(おかだ かずお)(財)下中記念財団EC日本アーカイブズ
  20世紀の終末を控えて様々な用途での映像収集の必要が生まれているが,一方で映像メディア自体も非常に多様化している。デジタルビデオの誕生は,映像メディアの保存性をおおいに改善しているが,そのフォーマットはいまだ事実上の世界標準が確定しておらず,将来は不透明である。国内的には映像の統一的なデータベースが存在せず収集作業には多くの困難が伴う。しかしテレビ放送の世界などでは所在情報に関するデータベースの整備が急速に進んでいる。こうした現状を実際に映像収集に当たる場合に必要なフィルム,アナログビデオ,デジタルビデオなど様々な形態での映像作品について,インターネット,映像アーカイブズや映像製作機関,映像祭,ストックショットライブラリーなどを通じての所在情報収集について解説し,また収集を集めるうえで必要な調査の仕方,レポートに書き込む必要項目,使用権取得に関するヒント,フィルム作品のビデオ化に必要な技術的知識,収集する場合のメディアなどについて基礎知識を提供しようとしている。
 キーワード:映像アーカイブズ,デジタルビデオ,インターネット,映像データベース,ストックショットライブラリー,フィルム-ビデオ転換,映像使用権,試写報告書

特集:音楽・映像のドキュメンテーション
      大学図書館における視聴覚資料のハンドリング

落合美代(おちあい みよ)津田塾大学 情報サービス課視聴覚センター
  マルチメディアの時代と言われ,情報の氾濫・多様化が急速にすすんでいる今日,情報を収集し,管理・運用し,利用者に提供するセクションもまた,多様化している。本稿では視聴覚資料を中心に,図書館と図書館以外のセクションに存在する「資料」をいかに有機的に融合し,学術資料情報として提供できるか,そのセクションの目的と独自性を生かした運用方法について,事例を紹介しながら,これからの「情報」の提供と運用の方法について考察する。
 キーワード:視聴覚資料,情報検索,図書検索


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