1999年1月号抄録

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特集「メタデータ」の編集にあたって

 今回の「情報の科学と技術」の特集では「メタデータ」をいくつかの観点からとりあげてみました。
 ここ数年,インターネットの進展に伴って,「メタデータ」が急速に注目を浴び始めています。インターネット上に「氾濫」しているディジタルドキュメントに,一定の規則を与え,精度の高い検索を可能にするために,国内外でさまざまな「メタデータ」の形が検討されています。
 今回の特集では,まず「メタデータ」とは何かという概説から始まり,これまでの「メタデータ」に関する学術的検討の経緯,また,図書館目録とメタデータの関連,メタデータ記述法としてのXMLについて紹介をしていただきます。さらにメタデータ収集によるデータベース構築の実例,雑誌論文のメタデータ記述法としてのDOIに関しての最新情報も報告していただき,全体で「メタデータ」の現状と将来に関する報告になることを目指しました。
 また,こうした数々の報告が,情報に携わる方たちにとって,「メタデータ」への今後の取り組みにおける一つの指針なればと考えております。

 (編集担当委員 大原寿人,松林正己,米澤 稔)


特集:メタデータ
    メタデータについて ―Dublin Coreを中心として―

杉本重雄(すぎもと しげお) 図書館情報大学 図書館情報学部
 インターネット上での情報発信とアクセス,ディジタル図書館における効率的な情報資源の発見と利用が関心を集めている。メタデータ(データに関するデータ)は情報資源の発信,検索,アクセス,利用に至る過程で重要な役割を演じる。本稿では情報資源の発見のために提案されてきたメタデータであるDublin Core Metadata Element Set(Dublin Core)およびWorld Wide Webコンソーシアム(W3C)が開発を進めているWWW文書のためのメタデータ記述の枠組みであるResource Description Framework (RDF)に関して述べる。また,1998年11月に米国議会図書館で開催されたDublin Coreワークショップでの議論を紹介し,Dublin CoreやRDFに関して考察する。
キーワード:メタデータ,Dublin Core Metadata Element Set,Resource Description Framework (RDF),ディジタル図書館,電子図書館,インターネット,World Wide Web (WWW)

特集:メタデータ
       図書館目録とメタデータ

杉田茂樹(すぎた しげき) 北海道大学附属図書館情報システム課
 ネットワーク情報資源の探索と発見のために二次情報記述方式の標準化が検討されており,RFC2413としてダブリン・コア・メタデータ・エレメントセットの基本的定義が提示された。
 同エレメントセットは,ネットワーク情報資源のみならず,さまざまなメディアの情報源の二次情報を共通に記述できるよう設計されており,これによって異種フォーマットの二次情報間でのデータ交換のかけはしとなることが期待されている。図書館は図書館目録という巨大なデータ資産を保有している。図書館目録を標準的な形式の二次情報としてエクスポートし,インターネットの情報探索の世界に貢献していくにはどんな準備をしておけばよいだろうか。本稿ではNACSIS-CATを例に考える。
 キーワード:図書館目録,メタデータ,dublin core metadata element set,クロスウォーク,NACSIS-CAT

特集:メタデータ
      XMLとメタデータ

門馬敦仁(もんま あつひと)富士ゼロックス株式会社 IT事業開発センター
  本稿では,メタデータ記述形式としてのXMLを紹介する。XMLは,インターネット上の文書記述言語の国際標準であり,W3Cで制定が進められている。W3Cでは,メタデータを汎用的に記述するためのフレームワークの国際標準としてRDFの制定が進められている。RDFをベースとしてPICSやDublin Coreなど既存のメタデータ標準を統合する活動も進められている。RDFでは,メタデータの交換形式としてXMLが採用されている。本稿では,まずRDFメタデータの記述に用いられているXMLの基本仕様を示す。次いで,RDFにおけるメタデータのデータモデルとXMLによるRDFメタデータの記述形式を説明する。
 キーワード:XML,RDF,メタデータ,WWW,W3C,文書型,スキーマ

メタデータを利用した学術的WWWディレクトリサービスの構築

上村圭介(かみむら けいすけ) 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
 国際大学グローバル・コミュニケーション・センターでは,WWWリソースのインターネット・ディレクトリであるOReL(Online Resource Locator)をWWW上で構築・運用している。このディレクトリは,良質な情報へのアクセスを提供するため,学術目的の論文などのWWW上に散在するリソースを見つけ出し,そのリソースについてのメタデータを,Dublin Coreに基づいてデータベース化している。OReLでは,メタデータとデータ本体の参照を,オリジナルのデータの著者や管理者と無関係に与えられる外部参照モデルに従っている。OReLの構築では,コンテクストに内在するが表現されていない暗黙的なメタデータを掘り起こすなど,全文検索型のサービスではフォローされにくい作業を行なっている。
 キーワード:WWW,メタデータ,学術リソース,文書型オブジェクト,ディレクトリ,検索

DOI(デジタルオブジェクト識別子)システムの概要

長谷川豊祐(はせがわ とよひろ) 鶴見大学図書館
 Digital Object Identifier(デジタルオブジェクト識別子:DOI)は,URLの一過性を克服し,どのような微細なレベルでもデジタル媒体を識別し,提供することを意図している.DOIシステムは,情報仲介業者を経由せず顧客と出版社を直結し,電子商取引を促進し,著作権管理システムを実現する。DOIシステムは,ILLからオンラインカタログまで,図書館サービスへの大きな効果を約束する。
 キーワード:デジタルオブジェクト識別子,DOI,雑誌識別コード

投稿論文:検証PubMed ―サーチャーの眼からみた評価と使い方―

日本オンライン情報検索ユーザー会 ライフサイエンス分科会
 OUGライフサイエンス分科会は1998年4-8月の間,米国医学図書館(NLM)からインターネット上で提供されているMEDLINEフリーサイトのPubMedについて,サーチャーの立場から商用MEDLINEのWeb製品(DataStar Web)と比較検討し,検索事例による検索結果の比較,検索項目,検索式の保存と実行の操作性,データの種類と状態変化などを調査した。PubMedはWeb製品と同じように利用しやすく,ほぼ同様な結果が得られた。また,商用MEDLINEより速報性があり,MEDLINEに掲載されないデータも収録されている。しかし,レコードの形態や並び順が常に変動し,未完成のデータもそのまま残っている。これらを認識して利用することが望まれる。
 キーワード:米国医学図書館,医療情報,データベース,MEDLINE,フリーサイト,インターネット,検索,サーチャー,エンドユーザー


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