「情報の科学と技術」 抄録

Vol. 60 (2010), No.8

特集=「特許情報の分析・活用」

特集 : 「特許情報の分析・活用」の編集にあたって

 今号では「特許情報の分析・活用」を特集します。広範な特許情報から,技術動向を把握し,自社技術の強みや弱みを理解し,開発を進めるべきポイントを検討するためには,適切で迅速な分析・活用が企業活動において欠かせません。しかしながら,近年,特許マップや特許解析というキーワードが一人歩きしている感もあり,特許を含めた情報の分析や活用について,幅広くかつ十分理解している知財担当者や情報担当者はそれほど多くないと考えられます。
 そこで,本特集では,特許情報の適切な分析・活用のヒントになるよう,誤解されがちな点の理解を深めると共に,経験豊富な実務者に,特許を含めた情報の分析・解析をどのように行っているのか,具体的な事例に基づいて解説いただきました。
 総論では,桐山氏に特許情報の分析・活用の考え方の歴史的流れを説明していただき,特許マップの作成に関して誤解されている点や,質問が多いテーマについて論説していただきました。  各論では,中村氏が参加された研究会での事例報告を通して,研究開発のターゲット設定のために有効な特許情報解析手法について考察いただき,さらに和泉氏からも同研究会での事例も含め,商品企画・開発に至るまでの,特許情報とそれ以外の情報を融合し,顧客ニーズを見出す方法について紹介していただきました。
 都築氏には,主要な特許情報分析・活用に利用できる有料ツールを分かりやすく紹介していただき,野崎氏には,一般に広く使われているMicrosoft Excelを用いたパテントマップの作成について詳しく述べていただきました。
最後には,このような分析・活用するにはどのような観点に立つかが大事になるため,堀越氏に,分析の観点の違いによる結果の見え方の違いと,いかに目的に沿った使い方をするか,ポイントを押さえていただきました。
今号の企画・編集にあたり,パテントドキュメンテーション委員会のご協力をいただきました。誌面をお借りし,御礼申し上げます。
この号が,特許情報の海をいかに乗り切っていくかの羅針盤になれば幸いです。
(会誌編集担当委員:矢田俊文(主査),吉田幸苗,野田英明,小山信弥,パテントドキュメンテーション委員会)

特許情報の分析・解析

桐山 勉
きりやま つとむ 一般財団法人 日本特許情報機構 特許情報研究所(客員研究員)
〒503-0983 岐阜県大垣市静里町
(原稿受領 2010.05.24)

 特許情報の分析・解析の考え方全般について論説する。特許情報の分析に関する歴史的流れに最初に触れる。特許マップの作成に関して,実際に特許マップの実務に精通されていない人に誤解されていることが多い。その誤解について論説する。特許情報の特許マップ作成に関して最も質問が多いテーマについて論説する。具体的には,X軸とY軸の切り口の仕方を解説する。次に,特許マップ作成の基本事項として,具合的には,特許分析・解析のプロセス,特許マップ作成の三段階レベルの存在,期待される特許マップなどを解説する。さらに,市販の特許マップの機能において,欲しい機能とはなにかを簡単に解説する。

キーワード: 特許情報,分析と解析,年表的思考,特許マップの誤解,特許マップ作成の質問,X軸Y軸の切り口,特許分析・解析の7段階プロセス,特許マップ作成の三段階レベル,期待される特許マップ

商品企画・開発への特許情報の活用

和泉 守計
いずみ もりかず ハウス食品(株) マーケティング本部 知的財産部
〒284-0033 千葉県四街道市鷹の台1-4
Tel. 043-237-5268(原稿受領 2010.05.27)

 近年,企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化している。技術の進歩によって顧客のライフスタイルが急激に変化し,それに伴い,顧客ニーズも急激に変化している。このような市場環境下においては,顧客ニーズを満たすことが,企業の生命線である。技術イノベーションは消費イノベーションをもたらすことから,特許マップを用いた商品企画・開発への特許情報の活用に期待が寄せられている。本稿においては,特許情報を含む複数の情報を融合することにより,顧客ニーズを見出す方法について紹介する。

キーワード: 特許情報,特許マップ,商品企画,商品開発,顧客ニーズ

研究開発における開発ターゲット設定のための特許情報活用

中村 栄
なかむら さかえ 旭化成(株) 新事業本部 知的財産部 技術情報グループ
〒101-8101 東京都千代田区神田神保町1丁目105番地 神保町三井ビルディング
(原稿受領 2010.05.26)

 研究開発の方向性を決めるために特許情報の有効活用が必要であると叫ばれて久しい。業界では特許情報の活用のために様々な解析ツールや解析手法(特許マップ解析)について種々の提案がされてきている。こういった環境の中,2006年に「PAT-LIST研究会」((株)レイテック社主催)が発足した。本研究会は今年で5年目を迎え,企業の知財部門や研究開発部門の担当者が研究会の活動を通して特許情報解析の検討を行ってきている。本稿では研究会の活動事例を通して,研究開発のターゲット設定のために有効な特許情報解析手法について考察する。

キーワード: 研究開発 特許情報 解析 特許マップ PAT-LIST研究会

特許情報分析・活用に利用できる有料ツールの紹介

都築 泉
つづき いずみ 大阪工業大学 知的財産研究科
〒535-8585 大阪市旭区大宮5-16-1
Tel. 06-6954-4244(原稿受領 2010.5.30)

 有料で提供されている特許分析ツールについて,その主な機能により,統計処理型,テキストマイニング型,データベース付随型,独自指標型に分け,それぞれ3〜4種類,合計13種類を取り上げ,(1)提供機関・連絡先,(2)分析対象データ,(3)概要・特徴,(4)処理件数(処理データ量)の上限, (5)利用料金,を紹介する。特許情報分析を行う際には,分析の目的と情報源となるデータの質・信頼性が重要である。対象となる特許データの収集に利用するデータベースに分析機能が付随している場合には,利用条件等が許せば適宜利用し,また,それとは別個に,CSVデータや複数種類のデータベースの検索結果を扱える,汎用性のあるツールも備えておくと大いに有用である。

キーワード: 特許情報,分析ツール,統計処理,分析対象データ,処理件数,特許データベース

Excelを使ったパテントマップ作成方法

野崎 篤志
のざき あつし 日本技術貿易(株) IP総研
〒105-8408 東京都港区西新橋1-7-13 虎ノ門イーストビルディング
Tel. 03-6203-9265(原稿受領 2010.5.23)

 特許情報を調査・整理・分析して視覚化・ビジュアル化したものがパテントマップであり,R&D戦略立案や特許出願戦略の策定に欠かせないツールである。数多くの統計解析型パテントマップ作成ソフトやテキストマイニングによるビジュアル化ソフトが販売されているが,パソコンに通常インストールされているExcelを用いてもパテントマップを作成することが可能である。本稿ではExcelに搭載されているピボットテーブルというクロス集計機能の概要,パテントマップの中でも作成が難しいバブルチャートの作成方法,そしてパテントマップのビジュアル表現について述べる。

キーワード: MS Excel,ピボットテーブル,パテントマップ,特許分析,統計解析,バブルチャート,ビジュアル表現

切り口の違いによる分析結果の違いについて

堀越 節子
ほりこし せつこ 日本電気
〒211-0011 川崎市中原区下沼部1753
Tel. 044-431-7034(原稿受領 2010.6.14)

 特許情報は特許制度を含めて多数の項目があり,出願から権利失効までさまざまに変化する。目的によって加工の手法も収集する情報も変わるので,目的の把握が重要である。件数を比較する際も単純に件数のみの比較なのか,時系列で変化を見ていくのか,権利化されたもののみで比較するのかで,分析対象の項目が異なる。本稿では,分析の観点の違いによる結果の見え方の相違や特許情報を分析する際に利用する代表的な項目として,出願人/権利者,出願日,特許分類について各項目を利用する際の注意点などを紹介する。公報発行時のデータや整理標準化で提供されるデータまで多数の項目を如何に目的に沿った使い方をするかがポイントになる。

キーワード: 調査目的,分析観点,分析項目,公報発行時データ,整理標準化データ
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