「情報の科学と技術」 抄録

Vol. 58 (2008), No.9

特集=「目録の現状と未来」

特集 :「目録の現状と未来」の編集にあたって

 Googleによる検索が隆盛を極めている昨今,図書館においては,検索できない資料は所蔵していないのと同じことになってしまうと,まだ目録化されていない資料の遡及作業が大きな問題となっています。また,図書館が扱う資料はいまや紙だけではなく,電子媒体やWeb上の情報源など多彩な広がりを見せています。その一方で,所蔵資料のほとんどがコピーカタロギングで済んでしまう現在,目録業務も委託化されてしまうという現実もあるようです。
 このような状況への対応策として,目録記載情報の簡略化は非常に魅力のある考え方です。つまり図書館目録は,著者や書名,出版社などがあれば十分,という考え方です。そのこと自体が必ずしも悪いとはいえないと思いますが,本来,目録とはどのようなものであるのか,という認識を踏まえずに単なる簡略化だけが推し進められることは,結局は自分の首を絞めることにもなりかねないのではないでしょうか。
 そこで,このように図書館を取り巻く環境が変化していく中で,目録の持つ意味は本来どのようなものであり,また今後どのように変わっていくのか,ということを,今回の特集で取り上げてみたいと思っています。
 まずは総論として,筑波大学の永田治樹氏に,現状を踏まえた問題点(課題)の整理と,目録が「資源記述」となっていくための将来展望についてお書きいただきました。
 それに続き,帝塚山学院大学の渡邊隆弘氏には,永田氏も言及していらっしゃるLCのWG報告書を材料として,より具体的な論点を整理し,日本における状況と比較していただきました。
 慶應義塾大学の酒見佳世氏からは,トロント大学における研修の経験を踏まえ,現場の視点からトロント大における目録作業について報告いただきました。
 一方,次の論文では視点を変えて,日本の今後の目録のあり方を知る一つの例として,NIIにおける目録の現状認識と,それを払拭するための次世代目録のあり方に関する検討状況の報告をしていただきました。
 また,原点に立ち返った目録のあり方として,研究にも耐える目録づくりを続けている都立中央図書館の事例について,その経緯や体制などについて,紹介していただきました。
 最後に,筑波大学の谷口祥一氏から,将来を見据えた目録教育のあり方について,一つの提言を行っていただきました。
 昨今の目録に関する動向は,目録への情報技術の応用や海外の標準化動向が強調される傾向にあります。本特集もこうした傾向から完全に抜けきることは困難ですが,目録本来の意義を考えるための一助となれば幸いです。
(会誌編集担当委員:木下和彦(主査),松林正己,服部綾乃)

図書館の資源記述(目録)の今後

永田 治樹
ながた はるき 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科
筑波大学大学院図書館情報メディア研究科
Tel. 029-859-1377(原稿受領 2008.7.14)

 情報のディジタル化が進展するなかで,利用者の多くはサーチエンジンを選好して,図書館目録は発見ツールとしての中心的な位置を失ってしまった。そこで,ディジタルメディアの進展の状況とその影響を考慮し,かつ米国議会図書館の『書誌コントロールの将来に関するワーキング・グループ報告書』を踏まえて,情報発見システムを支える資源記述(目録)のあり方について検討した。新たな資源記述は,フルテキスト検索に対抗しうる「利用者の関心」を取り込んだ構成で,またその編成においては高い投資収益率を確保するべく,他のコミュニティとの連携が不可欠となっている。

キーワード: 資源記述,目録,書誌コントロ−ル,RDA,米国議会図書館書誌コントロールの将来に関するワーキング・グループ報告書

書誌コントロールの将来をめぐる論点:LCのWG報告書とわが国での検討状況から

渡邊 隆弘
わたなべ たかひろ 帝塚山学院大学人間文化学部
〒590-0113 堺市南区晴美台4-2-2
Tel. 072-296-1331(原稿受領 2008.6.30)

 この数年,図書館目録について,危機意識を背景とした将来論議が活発に行われている。本稿では,米国議会図書館(LC)「書誌コントロールの将来ワーキンググループ」の報告書(2008年1月)を材料として,外部データの活用による効率化,目録作業に関する協働の推進,典拠コントロールの重視,ユニーク資料の組織化,OPACの機能改善,目録規則とLCSHの変革,等の論点を整理する。あわせて,わが国での将来検討について,米国の議論との比較のもとに考察する。効率化のための方策,書誌データの在り方に関する意識では,両国の議論に相違点が見られる。

キーワード: 書誌コントロール,目録,OPAC,米国議会図書館,典拠コントロール,目録規則

目録業務の進むべき方向とは?:トロント大学図書館研修報告

酒見 佳世
さけみ かよ 慶應義塾大学メディアセンター本部
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
Tel. 03-5427-1793(原稿受領 2008.6.23)

 2007年9月から2008年2月までの半年間,カナダのトロント大学図書館において研修を受ける機会を得た。本稿ではトロント大学のメインライブラリーであるRobarts Libraryと,貴重書図書館であるThomas Fisher Rare Book Libraryの目録担当での経験を元に,トロントと慶應義塾大学メディアセンターにおける目録作業とを比較しつつ,現在の目録を取り巻く状況と今後の方向性について述べる。

キーワード: 目録業務,トロント大学図書館,慶應義塾大学メディアセンター,次世代目録,貴重書目録

国立情報学研究所 次世代目録所在情報サービスの検討状況

細川 聖二,平田 義郎,齊藤 泰雄,内藤 裕美子
ほそかわ せいじ,ひらた よしろう,さいとう やすお,ないとう ゆみこ
国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課図書館連携チーム
〒101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2
Tel. 03-4212-2302(原稿受領 2008.6.30)

 国立情報学研究所では,目録所在情報サービス(NACSIS-CAT/ILL)の今後の在り方について,中長期的な視点で検討することを使命として,「学術コンテンツ運営・連携本部図書館連携作業部会」の下に「次世代目録ワーキンググループ」を設置した。ワーキンググループでの検討結果を「次世代目録所在情報サービスの在り方について(中間報告)」として取りまとめ,2008年3月末に公開した。本稿では,「中間報告」に至る検討の経緯および「中間報告」についてその概要を紹介する。

キーワード: 目録所在情報サービス,総合目録データベース,NACSIS-CAT,NACSIS-ILL,書誌ユーティリティ,次世代目録

東京都立図書館の整理業務について−日本語資料の場合−

大串 純子,高井 君枝
おおぐし じゅんこ,たかい きみえ 東京都立中央図書館サービス部資料管理課
〒106-8575 東京都港区南麻布5丁目7-13
Tel. 03-3442-8451(原稿受領 2008.6.23)

 東京都立図書館における日本語資料の蔵書データ(書誌・所蔵)作成は,設立以来100年間の蔵書約242万冊から,求める資料を的確に検索できることを目的とする。現システムでは,「日本目録規則1987年版改訂第2版」準拠で,記述の精粗を全て第2レベルに揃え,注記や請求記号を工夫することで,蔵書の歴史的蓄積を通覧できる体系的な資料組織と,対外的相互活用に耐えうる,標準的で精度の高いデータ作成を行っている。検索キーの多様化と,絞り込み機能の強化のため,件名付与と典拠コントロールを行う。都政資料(行政郷土資料)など特例事項が多い資料には,資料特性に応じたデータを作成し利用の便を図っている。

キーワード: 東京都立図書館,東京都立中央図書館,東京市立日比谷図書館,参考調査図書館,整理,目録,典拠,件名,都立図書館電算システム(METLICS U),行政郷土資料

Google時代の目録教育・メタデータ教育

谷口 祥一
たにぐち しょういち 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科
〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2
Tel. 029-859-1362(原稿受領 2008.6.10)

 目録およびメタデータの教育を取り巻く構図を,目録とその環境変化,図書館情報学教育とその環境変化に分け整理を試みた。併せて,同教育を巡る,主に米国における議論を概観した。これらを踏まえて,同教育の今後のあり方として,教育内容の変化の方向性を示し,それに沿った教科書執筆の試みを紹介した。具体的には,(1)目録・メタデータの設計という視点の導入,(2)情報組織化全体,メタデータ全体の中での目録の再規定,(3)情報処理技術との関係緊密化,(4)マネージメントの視点の導入である。また,現行の同教育を規定している諸条件に比較的拘束されない,新たな展開の方向性について提言を行った。

キーワード: 目録教育,メタデータ教育,図書館情報学教育,情報組織化教育,継続教育,図書館情報学カリキュラム

連載:オンライン情報検索:先人の足跡をたどる(6)
ソフトハウスが始めた手作りデータベース−HiNET&HAPPINESS開発秘話−

沓澤 尚明*1, 飯田 一幸*2
*1くつざわ なおあき (株)平和情報センター
〒112-0002 東京都文京区小石川1-3-21 日本生命春日町第2ビル
Tel.03-5802-2648
*2いいだ かずゆき (株)ジー・サーチ
〒108-0022 東京都港区海岸3-9-15 LOOP-Xビル
Tel. 03-5442-4735
(原稿受領 2008.7.8)

 1982年5月に専門紙の二次情報を提供する手作りのテクノサーチで開始した商用データベースHiNETは,日本語処理システムHAPPINESSのキーワード自動抽出をツールに,雑誌論文のタイトルサーチや各種新聞記事の全文提供,マーケティング情報や音楽CDなどにメニューを広げた。HiNETは操作性の追究やコード変換のトラブル,ネットワーク構築,他サービスとの連携など大小様々な課題解決を経てG-Searchに引き継がれる。また HAPPINESSは独立した製品販売事業として図書館市場に展開するほか,検索機能を装備したシステム構築ツールに拡大し,多くのユーザを獲得した。

キーワード: 平和情報センター,HiNET,HAPPINESS,G-Search,商用データベース,日本語処理システム,キーワード自動抽出,テクノサーチ,新聞記事,ネットワーク
ページの先頭へ Copyright (C) 2008 INFOSTA. All rights reserved.