「情報の科学と技術」 抄録

Vol. 57 (2007), No.6

特集=「医薬品安全性情報の収集」

「医薬品安全性情報の収集」の編集にあたって

 市販後の医薬品,医薬部外品,化粧品および医療機器について,製造販売業者は,薬事法によって,安全性情報を収集し,規制当局に報告することが義務づけられています。
 平成17年,改正薬事法が全面的に施行され,市販後安全管理体制が強化されました。
 製造販売業者は,「医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(いわゆるGVP省令)に定められた手順に従い,医療機関等からの報告,文献・学会報告等からの副作用・感染症に関する情報などを収集し,評価・検討の上,必要な安全確保措置を講じることが求められています。
 文献・学会報告等からの安全性情報の収集に関しては,データベースの選択,検索式の設定などでインフォプロ(サーチャー)が関わる場合があります。より適切な情報の収集のためには,私たちインフォプロも安全性管理業務の内容,目的,全体像を把握しておくことが望ましいと考え,本特集を企画しました。
 まず規制当局である厚生労働省の立場から,市販後医薬品等の安全性情報の収集について全体像を概説していただきました。
 次に,製造販売業者の立場から,医薬品および化粧品の安全性情報収集について具体的な取り組みをご紹介いただきました。
 さらに,国内または海外データベースでの医薬品副作用の検索方法を,それぞれデータベース・プロデューサ,ベンダー(日本代理店)の方に解説していただきました。
 最後に,安全性情報収集サービスを提供されている業者の方に,各々ユニークなサービス内容を紹介していただきました。
 本特集号によって,医薬品安全性情報の収集に関する理解が広がるきっかけとなれば幸いです。  今後,文献・学会報告等からの安全性情報収集にインフォプロが関与する機会が増え,適切な安全性情報をより効率的に収集する助けになればと望んでおります。
(会誌編集委員特集担当委員:堀恭子,及川はるみ,木下和彦,葛城慶子)

市販後安全対策における副作用情報の収集

日下部 哲也
くさかべ てつや 厚生労働省 医薬食品局 安全対策課
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
Tel. 03-3595-2435(原稿受領 2007.4.17)

 医薬品は,人の疾病の治療・予防等に有効である反面,副作用等の有害な作用を発現することもある諸刃の剣である。医薬品の副作用情報を一元的に収集し,適切な評価を加えた上で,安全対策の企画・立案,措置を講じることは,薬事法が目的としている国民の保健衛生の向上を図る上で重要であることから,厚生労働省においては,国内外で発生した副作用の安全性情報を収集等するための各種施策を講じてきた。ここでは,市販後安全対策の重要性等を紹介するとともに,医薬品の副作用情報を国が一元的に収集する制度のうち主なものを概説する。

キーワード: 薬事法,医薬品の安全性,市販後安全対策,副作用,副作用情報,副作用報告,WHO国際医薬品モニタリング制度,市販直後調査

国外安全性情報の収集・評価・報告とCIOMS報告書

紀成 尚志
きなり ひさし 持田製薬(株)信頼性保証本部,安全性情報室
〒160-8515 東京都新宿区四谷1-7
Tel. 03-3225-6882(原稿受領 2007.3.20)

 市販後医薬品に関する国外安全性情報担当者の業務は,市販後医薬品の同一成分に関する規制当局の措置情報,文献学会情報からの有害事象,生物由来感染症および国外提携会社からのCIOMS(The Council for International Organizations of Medical Sciences;以下CIOMSと言う)を収集する方法を確立し,体系化することである。弊社では国外安全性情報担当者が各情報を一次評価し,週に一度の情報評価検討会にかける。各情報は,検討会で,二次評価される。評価後,報告すべきと判定された情報は,報告担当者により報告期限以内に厚生労働省宛提出される。今回,国外安全性情報の一次評価の担当者業務を図に示すとともに,CIOMS報告書の概要について述べる。

キーワード: 同一成分医薬品,措置情報,有害事象情報,生物由来感染症,有害事象の頻度上昇,CIOMS

化粧品安全性関連情報の収集について
−フォーカスサービスを利用した文献情報の効率的収集法−

手島 正行*1,大坂 要恵*2,白鳥 耕也*3,畠山 義朗*4,佐々 齊*5
*1てじま まさゆき,*2おおさか としえ,*3しらとり こうや,*4はたけやま よしろう,*5ささ ひとし
(株)資生堂 品質保証センター 安全性研究所
〒236-8643 神奈川県横浜市金沢区福浦2-12-1
Tel. 045-788-4111(原稿受領 2007.4.2)

 2005年4月より施行された「医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器の製造販売後の安全管理の基準に関する省令」(GVP省令)により,化粧品の製造販売業者は,市販後の安全管理業務の一環として,学会報告,文献報告,研究報告,その他の安全管理情報を収集し記録することが義務付けられた。これにより,国内外で製品を製造販売している企業では,現地の消費者や医療関係者からの皮膚トラブル情報収集に加え,コスメトビジランス(化粧品の市販後副作用情報)に必要な関係情報を収集,評価,リスク分析し,必要な対策を講じることが求められるようになった。本稿では,(株)ジー・サーチ社で提供している DIALOG情報検索システムとフォーカスサービス(SDI文献管理ポータルサイト)を組み合せた化粧品安全性関連情報の効率的収集法について弊社安全性研究所での試みを紹介する。

キーワード: 化粧品,GVP,安全性管理情報収集,コスメトビジランス,ジー・サーチ,DIALOG,フォーカスサービス,SDI文献管理ポータルサイト

安全性情報収集サービスと医薬品安全性文献データベース
−JAPIC-Qサービス,iyakuSearch,JAPICDOC,SOCIE−

越久村 浩司
おくむら こうじ 日本医薬情報センター医薬文献情報担当
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-12-15長井記念館5階
Tel. 03-5466-1823(原稿受領 2007.3.28)

 財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)が提供しているJAPIC-Qサービスおよび医薬品安全性データベース(JAPICDOC,SOCIE, iyakuSearch)について,概要,特徴,操作方法を紹介する。JAPIC-Qサービスは,速報性を重視した製薬企業の医薬品市販後調査支援を目的としたサービスである。地方会を含む多くの学会情報,雑誌情報を情報源とし,安全性関連のキーワード付与と共に提供している。医薬品安全性データベースは膨大なデータの蓄積,様々な検索方法により安全性情報を簡便に引き出せる作りとなっている。

キーワード: JAPIC-Qサービス,JAPICDOC,SOCIE,iyakuSearch,医薬品安全性情報

医薬品安全情報のオンラインデータベースでの検索テクニック

田中 早苗
たなか さなえ 潟Wー・サーチ データベース営業部
〒108-0021東京都港区海岸3-9-15
Tel. 03-3452-1242(原稿受領 2007.3.20)

 医薬品の安全性情報収集に必須とされる文献データベースでは,副作用情報を広義に検索する索引システムが整備されている。本稿ではMEDLINE・ EMBASEを中心として,索引システムを利用した基本的な検索式作成法について解説する。さらにより網羅的・ノイズの少ない検索式作成テクニックおよび他の文献データベースを例示する。またDialogデータベースサービスに収録される文献情報を補完する情報源を2種類,さらに継続的な情報収集のためのツールDialog Alertsサービスについても紹介する。

キーワード: Dialog,MEDLINE,EMBASE,ディスクリプタ,サブヘディング検索,Adis Newsletters,ADVERSE REACTION DATABASE,Alert

受託安全確保業務
−GVP省令に基づく医薬品・医療機器等の情報収集について−

佐藤 京子*1,西岡 文美*2
*1さとう きょうこ,*2にしおか あやみ
(財)国際医学情報センター(略称:IMIC 呼称:あいみっく)
〒160-0016 東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館
Tel. 03-5361-7080(原稿受領 2007.3.20)

 (財)国際医学情報センターは平成17年4月から受託サービス業務の一つとして,GVP省令に基づく「学会報告,文献報告その他の研究報告に関する情報の収集」を開始した。本稿は医薬品,医療機器等の安全管理情報収集の受託業務について,受託に必要な要件,(財)国際医学情報センターにおける受託体制,実際の安全管理情報の収集業務内容,文献報告の記録・保存,自己点検等について説明する。さらに,本業務の受託に必要な教育と知識についても解説する。

キーワード: GVP(Good Vigilance Practice),受託安全確保業務,文献情報,安全管理情報収集,国際医学情報センター,医薬品,医療機器,文献査読,記録・保存,自己点検

医薬品の安全性監視における文献の重要性
−Thomson Scientific Custom Information ServicesSM(CIS)の視点から−

中怐@真依子
なかつか まいこ トムソンサイエンティフィック
〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1パレスサイドビル5F
Tel. 03-5218-6500(原稿受領 2007.4.13)

 トムソンサイエンティフィックでは莫大な学術雑誌および学会情報を収録している。CISはこれを利用したコンサルテーションサービスで,独特の文献モニタリングおよびデータカスタマイゼーションを提供している。文献による安全性情報を効率よく守秘扱いで管理しており,文献検索,文献の抽出,索引付け(インデキシング),カスタム抄録の作成,文献コピーの提供,翻訳を一連のプロセスで実施している。医薬品の最新情報は一次評価され,利用しやすいかたちで適時に配信される。この論文では医薬品の安全性に関する文献の意義について検討し,CISのファーマコビジランスサービスによって得られる利点を考察する。また,厚生労働省が委託を許可する安全性管理業務について述べる。

キーワード: 安全性情報管理,委託安全性情報管理,文献モニタリング,文献検索,医薬品情報,GVP,インデキシング,第三者抄録

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