情報の科学と技術
Vol. 54 (2004), No.7
特集=主題情報


特集「主題情報」の編集にあたって

 主題情報とは,見出し語・件名・シソーラス・分類などを指しているといえます。つまり,ある情報について,別の情報と合わせるためのグルーピングのための,あるいはカテゴライズのための情報であるといえるでしょう。その視点・切り口はさまざまに捉えられますし,またそうでなければ,ある物象を的確に区別することはできないでしょう。  しかしながら,主題情報は,「ある情報」がどのようなものを対象としてきたかによって,捉え方は大きく異なります。文字化されている情報,例えば書籍や論文などと,音楽や画像などの文字化されていない (できない) 情報では,主題を探し出す方法は異なってくると思います。その違いを明らかにすべく,本特集を企画しました。
 (会誌編集委員会特集担当委員 上村順一,大田原章雄,岡谷 大,北島由紀子,吉間仁子)

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主題情報の検索:総論
北 克一*
 *きた かついち 大阪市立大学大学院創造都市研究科兼学術情報総合センター
  〒558-8585 大阪府大阪市住吉杉本3-3-138
  Tel. 06-6605-3382(原稿受領 2004.5.7)

 主題情報の検索について概括する。最初に,図書館界において,書誌レコードの主題検索に使用される分類法や件名標目法の問題について簡単に触れる。続いて,統制語型ツールを使用した事前結合方式,コンピュータ使用による手法について述べる。続いて,検索結果の評価とブール演算の問題点について考える。最後に,音声情報,画像情報の検索について,概括を行う。

キーワード:トピックス,サブジェクト,事前結合方式,コンピュータ検索,マルチメディア情報検索

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図書における主題検索―NDL-OPACでの検索と国立国会図書館の取組み
大場利康*,川鍋道子**
 *おおば としやす,**かわなべ みちこ 国立国会図書館
  〒100-8924 東京都千代田区永田町1-10-1
  Tel. 03-3581-2331(原稿受領 2004.4.28)

 国立国会図書館蔵書目録データベースNDL-OPACには,複数の主題検索方法が用意されているが,その使い勝手には問題もある。国立国会図書館件名標目表(NDLSH)については,「参照指示の不足」「特定性の不足」が問題であったが,国立国会図書館はこれらの解消に着手した。米国の「ベイツ・レポート」,IFLAによるOPAC表示のガイドライン草稿では,利用者本位のOPACのあり方が提唱されており,今後は利用者の観点からOPACを構築することが求められる。

キーワード
:NDL-OPAC,主題検索,NDLSH

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雑誌論文における主題情報の検索:化学・医学分野を中心に
竹内貴広*
 *たけうち たかひろ (財)国際医学情報センター
  〒160-0016 東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館
  Tel. 03-5361-7085(原稿受領 2004.4.21)

 雑誌論文におけるデータベース検索の現状について,実務的な問題の具体例を提示しながら論じた。フリーキーワード検索でのタイトル,抄録の検索については原文と比較した情報量の少なさを問題としてあげ,表記の多様性の問題,日本語文の検索システムにおける処理上の問題について触れた。統制語の問題点としては,その使用における専門性の高さとブール演算子の弱点を上げ,統制語を入力しないでも検索できる,医中誌Web,PubMedの自動マッピング機能についても述べた。最後に現在のデータベース検索における問題点を多く内包すると思われる無作為化比較試験の国内文献の検索について言及した。

キーワード:情報検索,主題情報,問題点,日本語,自由語,統制語,データベース,無作為化比較試験

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特許情報における主題情報の検索:概念検索とその限界
高橋昭公* 
 *たかはし てるあき 泣eル・リサーチ
  〒359 埼玉県入間市上小谷田1-3-4-210
  Tel. 04-2962-6383(原稿受領 2004.5.13)

 概念検索システムを特許情報の主題検索に適用する際の課題を特許調査の目的別に検討した。このシステムは,主題情報を表した文章を入力するだけで簡単に検索が行えるので,従来の特許情報の主題検索が有していた多くの課題を解決できる可能性を持っている。一方,特許権に関る調査は,請求項で使われている文章が複雑なために,概念検索に不向きであると言われている。しかし,高度な検索スキルを習熟して概念検索システムが有している未経験な潜在機能を引出すことによって,特許権に関る調査を実現できる可能性がある。

キーワード:特許情報,主題検索,概念検索,特許調査,特許権,請求項,検索スキル

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音楽研究者の主題情報へのアクセス行動と音楽資料−音楽情報へのアクセスをめぐって
松下 鈞*
 *まつした ひとし 東京芸術大学音楽学部楽理科
  〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
  Tel. 03-5685-7698(原稿受領 2004.5.13)

 国立音楽大学附属図書館が行った「音楽資料・情報の需要と供給」に関する調査によると,音楽資料を求める利用者像には音楽研究と演奏家の二種類のタイプがあることが分かった。また,OPACログの分析研究によって利用者の用いるアクセスポイントは人名とタイトルへの依存性が高く,検索のヒット率は必ずしも高くはない。これは音楽資料の特異性と媒体単位を基本とする音楽目録の作成にも問題があると思われる。  音楽資料の利用者のアクセスビリティを高めるための解決策として,1)目録記述は媒体に収録される作品単位を原則とすること,2)アクセスコントロールの徹底,3)検索エンジン型OPACの開発などが必要である。

キーワード:音楽資料,音楽図書館,OPAC,ログ分析,アクセス行動,利用者研究

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連載:INFOPROのBOOKMARK(第4回)
医薬品情報のBookmark
北島由紀子*
 *きたじま ゆきこ 大正製薬褐、究システム部情報検索グループ
  〒170-8633 東京都豊島区高田3-24-1
  Tel. 03-3985-1181(原稿受領 2004.5.7)

 今月のBookmarkは,主に医薬品情報収集を取り上げました。ライフサイエンスに携わる方も,そうでない方にも応用できるよう,どのようなアプローチ方法があるかをまとめてみました。医薬品は規制が多く存在するため,すでに規制当局のインターネットサイト上に有用な情報が掲載されています。まずは押さえるべきサイトを,日本ばかりでなく医薬品市場にとって重要なアメリカ,ヨーロッパの三極を軸にご紹介いたします。

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