情報の科学と技術
Vol. 53
 (2003) ,No.6
特集=ドキュメンテーションの現在


特集「ドキュメンテーションの現在」の編集にあたって

 今月号は読者の強い要望によって組まれた特集号である。情報技術が目まぐるしく社会に影響を与えつつある昨今,本誌も情況を色濃く反映する特集を組んでいる。そこで改めて当協会の本務を確認しようという要望を容れたものといえよう。
 ドキュメンテーションは,アナログ環境では雑誌論文の情報処理に関連する技術やUDC活動などが主流だったが,最近は学術雑誌が,従来の印刷雑誌に加えて,電子ジャーナルが並行して刊行され,利用面でも大きく変化を生じている。そこで本特集では,これらの動向への対応策の具体的な進展と連関する問題 点を改めてレビューしていただき,次のステップに歩みだしている欧米の動向への架橋としたい。
 欧米ではメタデータ,デジタル・アーカイヴ(ウェッブ・アーカイヴを含む)などとの連携からInformation ArchitectureとKnowledge Managementと の連携で重要視される領域だと考えて,アメリカ情報学会(American Society for Information Science and Technology)を中心に新しいパラダイム構 築が展開し,ワークショップの開催や雑誌での特集論文が掲載され始めている。これは主としてアメリカの動向である。一方では国際ドキュメンテーション連 盟が編集維持に当たってきた国際十進分類法(UDC)が,コンソーシァムとして再出発している。
 特集にあたってドキュメンテーションの基本にたちかえるために,書誌記述と分類に焦点を合わせたのは,ドキュメンテーションが死語になろうとしてい る日本の現状に危惧を感じているからに他ならない。ドキュメンテーションの全貌と将来展望を,原田論文がくまなく映し出していよう。書誌記述に関しては 菅野論文が,ドキュメント世界における複雑な書誌関係性に展望を与えている。斯界で長く利用されてきたUDCの歴史と現状の問題点を整理し,デジタル情報 資源の分類において再評価されている情況に論及頂いた。さらにドキュメンテーションを視野に入れて,情報利用の観点から,情報検索の現在を併せて検討い ただいた。
 幸いにも投稿論文がメタデータの最新動向に関する論考であり,著者に無理をお願いして本号に掲載できた。著者の尽力とご協力に御礼申し上げる。
 末筆になるが本特集号の執筆者と編集子は,くしくも直接間接学恩にあずかった中村幸雄シューレともいえる方々になった。先生の一周忌を前に刊行でき た本特集を中村幸雄先生のご霊前にささげることをお許し願いたい。
(会誌編集委員会特集担当委員:松林正己,越智泰子,遠山美香子,深澤剛靖,吉間仁子)

目次に戻る


ドキュメンテーションの現在
原田 勝*
*はらだ まさる 筑波大学図書館情報学系
 〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2
 Tel. 029-859-1367(原稿受領 2003.3.31)

 ドキュメンテーションに関する最近10年ほどの研究を簡単にふりかえり,その研究の内容,および今後の研究の方向を提示した。まず,ドキュメンテーションから,情報組織化,知識組織化への変化を促した要因について考察し,この流れは,情報の洪水の深刻化,および情報通信技術の進歩が与えた知識の組織 化が可能になるという期待によるものであることを示した。その後,知識の組織化の内容を,収集,組織化,洗練化,表現,配布に分け,これらをさらに細分して示した。最後に今後の研究の視点を,他分野の理論の導入,理論の統合,未解決の問題への取り組み,新しい理論の創出などの視点から論じた。

キーワード:ドキュメンテーション,情報組織化,知識組織化,インデクシング,分類法,主題分析

目次に戻る


UDCに関わる諸問題
光富健一*
*みつとみ けんいち 東京理科大学図書館
 〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3
 Tel. 03-5228-8133(原稿受領 2003.4.18)

 現代図書館分類法は,ファセット分析の手法を内包した,ファセット分類法を指向すべきであると,私は考える。ファセット分類法理論によると,諸学問分野内に共通して見つけられるファセットは,事物―種類―部分―材料―特性―過程―操作―作用因―空間―時間であり,複合主題に対応する番号を構築する ためには,この標準的な順序で引用されるべきであると考えられている。UDCは現在,ファセット分類の手法を果敢に取り入れて,改定の途上にある。諸ファセット間の合成は,ハイフン固有補助標数によって,番号構築が今後,行われると考えられ,将来像が期待される。

キーワード:UDC,国際十進分類法,ファセット分類法,ファセット分析

目次に戻る


「情報とドキュメンテーション」に関する標準化活動の現状
菅野育子*
*すがの いくこ 愛知淑徳大学文学部図書館情報学科
 〒480-1197 愛知県愛知郡長久手町片平9
 Tel. 0561-62-4111(原稿受領 2003.4.17)

 「情報とドキュメンテーション」という領域を対象に,ISO/TC46(国際標準化機構・第46部会)では図書館や情報センター,二次資料作成提供機関,文書館等に関連する国際規格を策定している。TC46の再編成に伴い,各SC(専門委員会)も改称したことから,新体制における各SCの活動内容を見ることから,標準化活動における「ドキュメンテーション」の意味と範囲について考察する。

 キーワード:標準化,ISO/TC46,国際規格,ドキュメンテーション

目次に戻る


ドキュメンテーションにおける情報検索を考える
山ア久道*
*やまざき ひさみち 中央大学文学部(社会情報学)
 〒192-0393 東京都八王子市東中野742-1
 Tel. 0426-74-3744(原稿受領 2003.3.25)

 情報検索には,同様な文字(列)を探す,同様な表現を探す,同様な内容を探す,の3つのレベルがあるが,これらを混同した議論が多い。ドキュメンテーションにおける情報検索は,内容レベルについてのものであるべきである。となれば,インデクシングのプロセスが,ドキュメンテーションにおける情報検 索の前提として必要である。現在の情報整理や情報検索の自動化は,書かれたテキストの分析に終始しており,文献の解釈行為としてのインデクシングの意味が軽視されている。今後は,インデクシング過程を適切にシミュレートするようなシステムの出現が期待される。

キーワード:情報検索,ドキュメンテーション,情報管理,インデクシング,解釈,ブール演算,情報蓄積,自動化,全文検索システム

目次に戻る


ネットワーク情報資源と分類
小林康隆*
*こばやし やすたか 東京農業大学 図書館
 〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1
 Tel. 03-5477-2525(原稿受領 2003.3.25)

 本稿では,インターネットの爆発的な発達により増大したネットワーク情報資源への主題アクセスの問題について論じる。最初に,現在世間で一般的に利用されているサーチエンジンについて概観し,その限界について述べる。次に,その限界に対する対応策として,情報資源の「質」による「すみわけ」を提言 する。さらに,学術情報資源の主題検索における従来の図書館分類法の役割を列挙し,実際の活用例をも紹介する。最後に,知識組織化研究の進展により「変身」をとげつつある図書館分類法のネットワーク情報資源(学術情報資源)に対する主題検索ツールとしての課題について若干の考察を試みる。

キーワード:ネットワーク情報資源,図書館分類法,知識組織化研究,主題アクセス,主題検索,インターネット,サーチエンジン,サブジェクトゲートウェイ

目次に戻る


投 稿
MODS:図書館とメタデータに求める新たなる選択肢

鹿島みづき*
*かしま みづき 愛知淑徳大学図書館
 〒480-1197 愛知県愛知郡長久手町長湫片平9
 Tel. 0561-62-4111(原稿受領 2003.3.25)
 
 2002年10月にNIIメタデータデータベース共同構築事業のスタートとともに,日本でもメタデータという言葉を耳にする機会が増えた。しかしその意味が本当に理解され,浸透するまでにはまだ時間がかかるように思える。メタデータと図書館目録が今後どのような形で共存していくのかも図書館の現場では未だ 不透明な部分が多い。そのような中,米国議会図書館から新たなメタデータの開発が明らかにされた。MODS,Metadata Object Description Schemaである。本稿ではその開発の中心的な人物Rebecca S. Guenther氏によるMODSの紹介論文に焦点を当てながらMODSとはどのようなメタデータなのか,なぜ開発さ れたのか等を解明する。その際,日本で多くの図書館プロジェクトが採用するダブリンコアとの比較を中心にメタデータの図書館との関わりを整理したい。MODSが主張する,古くて新しい図書館の概念は今後どのように日本を含む世界の図書館コミュニティに受け止められるのか,興味深いところである。

キーワード:MODS,Metadata Object Description Schema,メタデータ,図書館目録

目次に戻る


連載:第9回 情報屋さんのスキルアップ
 (原稿受領 2003.4.9)

 図書館や情報センターで働いている私たちにとって,規模の大小や館種の違いこそあれ,効率よく業務を遂行し,利用者に適切なサービスを行うことが最大のミッションです。今月は,どのように自分たちを磨いていけば良いのか?後進の育成はどのようにするべきか?など,スタッフ自身のありかたに対するFAQを考えてみました。

目次に戻る