情報の科学と技術
Vol. 53
 (2003) ,No.4
特集=Webアプリケーションを背景としたWeb利用


「Webアプリケーションを背景としたWeb利用」の編集にあたって

 インターネットの利用は,電話回線によるデータベース利用などの環境の整っていた図書館や企業の資料室において,それぞれの属する組織内では先駆的だったのではないかと思います。当初,メールやデータベースへのアクセスから始まったインターネットの利用は,今や情報の迅速な発信,収集に不可欠な存在となりました。  
 インターネットの利用の中でも,特にWebアプリケーションの発展・普及を背景としたWeb情報が情報流通に果たす役割はたいへん大きくなりました。今回,情報を扱う担当者の観点からWebアプリケーションを背景にしたWeb情報の現状についての話題を集めました。  Web普及の現状,Web情報の特徴,Web検索の基本,Webを利用して何をするのか,Web利用で注意すること,今後の動向など,技術的背景を含めた興味ある話題を提供いたします。  
 個別の話題として,Web情報を利用した動的事典編纂,Webページのデザイン,電子ジャーナル原文ページへのリンクについて取り上げました。  
 読者の皆様に,膨大なWeb情報の扱いの一端を,技術的な背景に基づいてご紹介できれば幸いです。  
(会誌編集委員会特集担当委員:鈴木響子,上村順一,遠山美香子,村上勝美,茂出木理子)

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情報発信,蓄積,収集ツールとしてのウェブとその利用
上林弥彦* 
*かんばやし やひこ 京都大学大学院情報学研究科
 〒606-8501 京都府京都市左京区吉田本町
 Tel. 075-753-5375(原稿受領 2003.3.10)

 ウェブによる情報発信,蓄積および収集は,新たな情報流通革命を起こし,世界を大きく変えていく力となっている。はじめに,従来型の情報検索との違いに注目して,ウェブ情報処理に関するいくつかの話題をまとめる。ひとつの応用例として,ウェブの内容からの概念抽出とそれを使った概念ナビゲーション,地理情報システムへの構成について述べる。また,効率向上のためのウェブキャッシュや多機能化のためのデータベースとの併用についてもまとめ,最後にその他のいくつかの重要な話題を示した。

キーワード:ウェブ,情報検索,地理情報処理,ウェブキャッシュ,データベース  

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Web情報を用いた事典検索サイトの構築
藤井 敦* 
*ふじい あつし 筑波大学,科学技術振興事業団CREST
 〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2
 Tel. 029-859-1401(原稿受領 2003.3.10)

 インターネットを通じて様々な情報が配信されるようになり,知らない言葉や事柄に日常的に遭遇するようになった。しかし,既存の事典では新語や専門用語を調べられないことが多い。近年は,World Wide Webを事典の代用とする機会も増えてきた。しかし,既存の検索エンジンでは不要な情報が検索されたり,情報が整理されていないといった問題がある。本稿は,Webを事典的に活用するための新しい検索サイトについて紹介する。本サイトは,Webページ群を用いて事典を自動的に編纂・更新し,さらにユーザを飽きさせない様々な検索機能を備えている。

キーワード:ライブラリアン,司書,専門職,人材育成,マネジメント,管理職,組織,適正評価,モチベーション

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Webサイト制作のアプリケーション ―制作現場から見た現状と課題―
中川久典* 
*なかがわ ひさのり コンテンツディレクター
 〒113-0033 東京都文京区本郷5-22-3
 Tel. 03-3837-9858(原稿受領 2003.2.24)
  
 昨今「インターネットブーム」などと言われる事は無い訳だが,これほど短期間で「あたりまえのモノ」として定着した媒体もめずらしいのではないだろうか。インターネットは情報伝達手段としてのベーシックな部分に非常に力を持っており,すべてのメディアを包括するような媒体なので,およそ現在あるアプリケーションのほとんどが,どこかの部分で使われているといっても過言ではない。本稿では,制作側からの視点でWeb業界を取り巻く現状や使用されているアプリケーションおよび,その問題点等について述べていくこととする。

 キーワード:HTML,XHTML,CSS,JavaScript,ブラウザ,デザイン,レイアウト  

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JSTリンクセンター
佐藤恵子* 
**さとう けいこ 科学技術振興事業団
 〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
 Tel. 03-5214-8455(原稿受領 2003.1.20)

 科学技術振興事業団(JST)は,日本の電子ジャーナルサイトが,他の電子ジャーナルサイトやデータベースとのリンクを効率的に行うために,JSTリンクセンターを開発し,2002年9月より運用を開始した。   JSTリンクセンターの中核となるデータベースであるリンクマスタ,リンク情報を管理するためにJSTリンクセンターに登録されたコンテンツに対して付与されるJOI(JST Object Identifier),引用文献の自動解析等を中心にJSTリンクセンターの仕組みについて述べる。また,JSTリンクセンターの利用イメージをJ-STAGEからPubMedへの引用文献リンクを例に挙げて紹介する。

 キーワード:引用文献リンク,電子ジャーナル,二次データベース,メタデータ,情報流通

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投稿
オープンソースの空間情報システムGRASSと空間基盤情報構築
―その可能性の展開―

ベンカテッシュ ラガワン*1,北 克一*1, 岩男弘毅*2,マルカス ネテラー*3
*1ベンカテッシュ ラガワン,きた かついち  大阪市立大学学術情報総合センター
 〒558-8585 大阪府大阪市住吉区杉本3-3-138  Tel. 06-6605-3382  
*2いわお こうき ACRoRS,アジア工科大学,P.O. Box 4, Pathum Thani 12120 タイ
*3科学技術研究センター,テレント 38050,イタリア (原稿受領 2003.2.17)   
 
 オープンソース・ソフトウェア(OSS:Open Source Software)と地理情報システム(GIS:Geographical Information System)について,簡単に概説を行った後,OSSの代表的なソフトウェアであるGRASS(The Geographical Resource Analysis Support System)について基本コンセプト,開発現状,機能等を報告する。併せて,今後の空間情報基盤(Spatial Data Infrastructures:SDI)構築における可能性,GRASSコンソーシアム等についても取り上げる。

 キーワード:オープンソース・ソフトウェア,空間情報システム,GARSS,空間情報基盤 

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連載:第7回 脱!システム便利屋さん宣言(2)
(原稿受領 2003.2.6)
 前回は図書館のシステム管理者向けに,基本的な心構えやワンポイントアドバイス的なものを書きましたが,第二弾となる今回は,デジタルリソースの公開にまつわる,よくある話を中心にまとめました。皆さんが直面するシステムがらみの「?」は,実に多岐にわたることと思いますが,避けては通れないジャンルについて,1歩踏み込んだ形の解説を加えました。是非参考にしてください。

キーワード:インデクシング,分類,自然語,検索システム,再現率,適合率,質問シソーラス,文法,データベース

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