情報の科学と技術
Vol. 52
 (2002) ,No.12
特集=モバイル環境と情報


特集「モバイル環境と情報」の編集にあたって

 場所・時間を選ばずに情報にアクセスできる携帯端末の環境が出現し,より身近な情報へのアクセス・ツールとして急速に浸透してきている。
 インターネットを介した機能が主体であるものの,従来の固定端末の利用とは異なる独自の文化が構築され,いわゆる 8おまけ7 的に小型携帯端末からの利用に対応するのではなく,その特性を生かしたサービス・技術の研究・開発も目にする機会が多くなってきたように思える。
 今回の特集では,情報の収集,検索,管理といった面に特に焦点をあて,モバイル環境で既に始まっている,または発展がこれから期待されるサービス・技術の現状及び今後を紹介,解説いただき,こういったサービス・技術の現状を身近に知る機会としていただければ幸いである。
 (会誌編集委員会特集担当委員:遠山美香子,新保佳子,鈴木響子,山本和雄)

目次に戻る


モバイル用検索システムの今後について
渡部聡彦*,中川裕志** 
*わたなべ としひこ,**なかがわ ひろし 東京大学情報基盤センター図書館電子化研究部門
  〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学総合図書館内
  Tel. 03-5841-2619(原稿受領 2002.9.20)

 携帯電話に代表されるモバイルインターネット端末の発達に伴い,既存の情報コンテンツもそれらからのアクセスに対応する必要がある。しかし,既存の検索システムは基本的にPCからのアクセスを前提としているため,そのままでは携帯端末からは利用できない。あるいは表示自体は達成されていても,その可読性には問題がある場合が多い。したがって,携帯端末向けの表示を作成しなければいけないが,各表示デバイス毎に個別に作成しているのでは効率が悪い。本稿ではPC向けのコンテンツを携帯端末向けに変換する方法を概観するとともに,その際に考慮すべき可読性の問題についての概要を述べる。

 キーワード:XML,コンテンツ変換,モバイル,デジタルドキュメント,WWW情報処理,構造化文書,情報検索

目次に戻る


RFIDタグのIT図書館への応用
山崎榮三郎* 
*やまざき えいざぶろう 鞄燗c洋行 ユビキタス事業部
 〒135-8730 東京都江東区潮見2-9-15
 Tel. 03-5634-6757(原稿受領 2002.9.18)

 ユビキタス時代の幕が開き始め,「何時でも,誰でも,何処でも」 ITが使える環境になってきた。一つのモデルとして図書館でのRFID活用が進み始めようとしている。システムを開発してきた視点からIT図書館を紹介する。ここにきて,電波法の規制緩和,ローコストタグの登場,運用ノウハウの蓄積,地域ネットワークの進展等の条件が図書館でのRFIDを推進する上でフォローへの風となってきた。事例を紹介しつつ,最新ITを使った新たな図書館像への期待と今後の見通しについて触れた。

 キーワード:ユビキタス,RFID,非接触ICチップ,貸出/返却システム,蔵書点検,セキュリティゲート,電波法,北方町立図書館,広島平和祈念館,MIT AUTO-IDセンター

目次に戻る


教育分野における携帯電話活用の現状と実践
本間善夫* 
*ほんま よしお 県立新潟女子短期大学 生活科学科生活科学専攻
 〒950-8680 新潟県新潟市海老ケ瀬471
 Tel. 025-270-0299(原稿受領 2002.9.19)

 インターネットが急激に普及する中で,国内では携帯電話によるインターネット利用者が急増している。携帯電話は通信費が高いものの,どこでも膨大なWeb資源にアクセスできる利点を活かして教育分野でも活用が期待される。利用者が個別に調べ学習ができるほかに,教室での講義などにも利用可能である。本稿では携帯電話向けに公開されている自然科学分野のページをいくつか取り上げ,その可能性を述べる。また,筆者らが公開している化学関連ページについても触れ,画像やインタラクティブなコンテンツの重要性に言及する。

 キーワード:インターネット,WWW,携帯電話,IT,eラーニング,常時接続,科学教育,Java言語

目次に戻る


モバイルマルチメディアサービスの現状と今後
山口文久* 
*やまぐち ふみひさ 劾TTドコモMM事業本部MM 企画部サービス企画担当
 〒100-6150 東京都千代田区永田町2-11-1山王パークタワー
 Tel. 03-5156-2365(原稿受領 2002.10.8)

 移動通信における通信形態は「Voice」を中心とした通信からデータ通信を基軸としたインターネット型通信へと「第二の成長」に向け,更なる快適なインターネットアクセスの追及はもとより「情報配信ビジネス」「テレマティックビジネス」など新たなビジネス領域の拡大が見込まれる。その実現にあたって,NTTドコモは更なる付加価値をお客様にご提供するため,最新のテクノロジーを駆使し,お客様ニーズにあった商品・サービスをスピーディにご提供することに挑戦し続ける予定である。
 本稿では,NTTドコモにおけるモバイルマルチメディアサービスの現状と今後の方向について紹介する。

 キーワード:移動通信,モバイルマルチメディア,情報配信,ユビキタス,国際化,動画

目次に戻る


投 稿
インターネット時代の学校図書館員の情報検索

中村百合子*,芳鐘冬樹**
*なかむら ゆりこ 東京大学大学院教育学研究科
 〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
 Tel. 03-5841-3976
**よしかね ふゆき 大学評価・学位授与機構評価研究部
 〒112-0012 東京都文京区大塚3-29-1
 Tel. 03-3942-9488(原稿受領 2002.9.11)

 インターネットは,学校図書館において,レファレンス・サービスの可能性を大きく広げるツールになりうる。ただし,それを使いこなすには,検索システムの仕組みを理解し,検索の思考法を身に付けなければならない。加えて,インターネット上の情報は必ずしもその質が保障されていないため,丁寧な情報の評価が不可欠である。また,学校図書館においては,レファレンス・サービスへのインターネット上の情報の活用だけではなく,児童・生徒らに情報活用能力の育成の中で検索を指導することも重要である。その検索能力育成の取り組みにおいては,検索の思考法(特に,準備過程の思考法)の指導が強調されるべきである。

 キーワード:学校図書館,情報検索,インターネット,ウェブページ,検索エンジン,レファレンス・サービス,情報活用能力の育成

目次に戻る