情報の科学と技術
Vol. 52
 (2002) ,No.9
特集=図書館システムと評価


特集「図書館システムと評価」の編集にあたって
(会誌編集委員会特集担当委員:伊藤 淳,遠山美香子,峯尾幸信,村上勝美,山地康志, 山本和雄,吉間仁子)

コンピュータの進歩とともに図書館システムも急速に発展してきました。インターネットの普及により,インターネット対応の図書館システムもごく普通に見られるようになってきています。図書館のホームページからOPACシステムによる蔵書目録の検索,外部ホームページへのリンクによる有益な情報の入手,電子ジャーナルの閲覧も利用者の端末から簡単に行えるようになっています。
 本特集では急速に進歩している現在の図書館システムをどのような視点から評価したらよいかを考えてみました。
 図書館システムの目的を明らかにし,システム化にあたって必要な要件を分析してみます。それを踏まえて現在の図書館システムを分析し,図書館システムに必要な機能を検討します。図書館システムを評価する視点として具体的に10項目挙げ,それぞれ簡潔に論じています。
 実際の図書館システムが機能面でどのような進歩を遂げ,今後どのように発展していくのかをメーカー2社の方に報告していただきました。
 図書館の情報提供サービスとして,コンテンツを見せるサイトとしての重要性が高まっています。そのような学術情報のポータルサイト構築の方法と統合データベースの例も紹介しています。

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図書館システムを評価する視点
黒澤公人*
*くろさわ きみと 国際基督教大学図書館
 〒181-8585 東京都三鷹市大沢3-10-2
 Tel. 0422-33-3302(原稿受領 2002.6.21)

 日本における図書館システムの発展の経緯をたどると,現在,3つのタイプの書誌フォーマットをもつ図書館システムが存在することがわかる。図書館システムが,どの書誌フォーマットを利用し,書誌データを形成していくかは,MARCや書誌ユーティリティーの発展と関係がある。
 現在,ネットワークで結合された図書館は,インターネット上で数多くのシステムを利用できるようになり,利用者は,それらのシステムを積極的に利用している。そのような情報環境の中で,図書館システムのあり方を検討し,図書館システムを評価する視点10項目を取り上げた。

キーワード:図書館システム,評価,歴史,MARC,書誌フォーマット

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図書館システムの機能
石川徹也*
*いしかわ てつや 図書館情報大学 図書館情報学部
〒271-8550 茨城県つくば市春日1丁目2番地
Tel. 0298-59-1399(原稿受領 2002.6.11)

 Internet・携帯電話の普及に伴い,デジタル・コンテンツの提供が盛んに行われだし,さらにポータルサイト・システム(サービス)が普及しだし,従来の図書館システムの意義が問われだしている。そこで,図書館サービスの目的から改めて図書館システム機能に関して再考し,現行の図書館システム機能について概観し,図書館システムのあるべき機能について考察する。

キーワード:図書館システム,あるべき機能,図書館サービス

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日本電子計算鰍フ図書情報ネットワークシステム
LINUS/NCの特色

鳥井伸哉*
*とりい のぶや 日本電子計算 ビジネスソリューション事業部
〒532-0011 大阪府大阪市淀川区西中島2-12-11
Tel. 06-6307-5459(原稿受領 2002.7.2)

 従来からの大学向け図書館システムパッケージはある程度の完成の域に達している。図書館が新しい役割を求められていくのに伴い,図書館システムも変貌していかなければならない。これからは単なる図書館システムを脱皮し,新しいコンセプトの情報システムが求められる。ここでは,大学向け図書情報ネットワークシステムの特色・概要を紹介すると共に,今後の課題に触れる。

キーワード:図書館システム,OPAC,セキュリティ,外部データベース連携,CAT-P

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図書館総合情報管理パッケージソフト
「情報館5.0」の特色と「情報館」関連製品について

佐藤 正*
*さとう ただし 潟uレインテック 営業本部 第二営業部
〒141-0022 東京都品川区東五反田1-7-6 藤和東五反田ビル3F
Tel. 03-3449-7261(原稿受領 2002.6.20)

 図書館システムといえば汎用機やオフコンシステムが主流であった時代に登場した図書館総合情報管理パッケージソフト「情報館」は,システムのダウンサイジング化の時流に乗って導入を増やし,発売当初のDOS版からWindows版「情報館95」のリリースを経て,現在767箇所の図書館で稼動中である。2002年5月,これら「情報館」ユーザーの要望を取り入れて機能の充実を図った後継機「情報館5.0」がリリースされた。さらにライブラリーサポートサービスの一環として,インターネットの普及に対応したインターネット関連製品の開発及びサービスの提供も行われている。ここでは「情報館5.0」の機能特徴と,インターネット技術を応用した「情報館」関連製品を紹介する。

キーワード:図書館システム,図書館総合情報管理パッケージソフト「情報館」,「情報館95」,「情報館5.0」,ライブラリーサポートサービス,インターネット関連製品

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学術情報のポータルサイトK-Port
佐藤高廣*
*さとう たかひろ 葛I伊國屋書店 営業企画部
 〒150-8513 東京都渋谷区東3丁目13-11
 Tel. 03-5469-5911(原稿受領 2002.6.20)

 インターネット上の情報資源へアクセスするため,ポータルサイトが活用される。最近では,図書館Webページのポータル化も顕著である。紀伊國屋書店では1999年10月より,学術情報に特化したポータルサイトK-Portを運営している。K-Portは,利用機関別にカスタマイズが可能なポータルサイトであり,自館専用のデータベースリストや電子ジャーナルのリンクリストを構築することができる。図書館では自舘のWebページの代替的サイトとして,K-Portを活用することができるだろう。本稿は,ポータルサイトの一般的動向を踏まえたうえで,K-Portの基本的特徴や電子ジャーナルへのアクセス支援機能について,解説するものである。

キーワード:ポータルサイト,情報資源,アクセス,学術情報,K-Port,カスタマイズ,電子ジャーナル,リンクリスト

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ISI Web of KnowledgeSM :
高品質な学術情報提供のための総合プラットフォームについて

金子康樹*
*かねこ やすき ISI-Thomson
〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1 パレスサイドビル5F
Tel. 03-5218-6538(原稿受領 2002.7.8)

 研究者の情報ニーズはますます多様化し,様々な情報資源から多様な情報を収集することが必要となっている。図書館や情報サービス機関にとって,こうした情報要求を満たすためには,各種の情報資源を効果的に活用するための統合的情報提供システムを提供していくことが必要になる。統合的情報提供システムには,研究者にとって価値のある情報内容と,検索とナビゲーションを中心とした各種の効果的な情報アクセストゥールを提供することが要求され,これらの情報内容要件と機能要件が満たされることにより,幅広く多様な情報ニーズに応えることが可能となる。本稿ではISIが提供するWeb of Knowledgeを例として,統合的情報提供システムに必要な要件について考察を加えた。

キーワード:統合プラットフォーム,ナビゲーション,引用リンク,横断検索,研究活動支援

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投稿:学術図書館における学術文献の供給可能率に関する研究
気谷陽子*,歳森 敦**
*きたに ようこ 茨城大学附属図書館/図書館情報大学大学院情報メディア研究科
〒310-8512 茨城県水戸市文京2-1-1
Tel. 029-228-8072
**としもり あつし 図書館情報大学
〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2
Tel. 0298-59-1350(原稿受領 2002.6.20)

 学術図書館の目的は,研究者に必要な学術文献を供給することである。この目的を達成するためには,どの程度学術文献を供給できるかを客観的な尺度で把握し,供給が可能である度合を向上させることが課題となる。供給可能率は引用文献の所蔵率である。筑波大学の教員が筆頭著者であって,SCI(Science Citation Index)に採録された197論文から4,390件の引用文献を収集して,供給可能率を計算した。その結果,筑波大学附属図書館は引用文献のうち,75.0%を所蔵していることが明らかになった。また,研究者間の情報利用の違いを供給可能率によって把握することができることがわかった。

キーワード:学術図書館,学術文献,引用分析,蔵書計画,評価尺度

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