情報の科学と技術
Vol. 52
 (2002) ,No.4
特集=
海外の情報を提供する専門図書館



特集「海外の情報を提供する専門図書館」の編集にあたって

 (会誌編集委員会特集担当委員:峯尾幸信,伊藤 淳,新保佳子,都築埴雅,遠山美香子)

社会の国際化が進んでいる中,情報部門においても海外の情報を入手する機会は着実に増えてきています。このような状況の中で,海外情報がどのような専門図書館から どのような形で配信されているのかを知っておくことは,非常に役立つ情報源となるでしょう。  そこで本特集では,海外の情報を国内に提供する専門図書館をいくつか紹介することとしました。国別,分野別のさまざまな海外情報が,インターネットを介しホーム ページ上から発信されています。今回の特集構成は従来の形とは変えて,国別,地域別,分野別の情報を提供する専門図書館(情報センター)をとりあげ,アメリカ,ヨ ーロッパ,アジア等のより多くの海外情報が入手できる情報源として活用できる構成にしました。  本特集で,海外への関心がより一層たかまることを期待し,また,年度が変わって新たに情報部門へ来られた方々への情報収集の参考としていただければ幸いです。

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アメリカンセンター・レファレンス資料室
橋本 由希子*
*はしもと ゆきこ 東京アメリカンセンター・レファレンス資料室
  〒105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 ABC会館11階
  Tel. 03-3436-0901(原稿受領 2002.1.21)

アメリカンセンター・レファレンス資料室は在日米国大使館の広報・文化交流部に属する。現代のアメリカを日本の人々に理解してもらうことによって,友好な日米 関係を築くことを目的としている。近年の電子情報の増加に対応するため,ホームページや電子メールによるサービスに重点をおき,日々その改善に努めている。インタ ーネットを活用したレファレンスサービスや,電子メールで発信した情報案内をデータベース化し保存する新しい取り組みを中心に紹介する。

キーワード:パブリック・ディプロマシー,電子メールによる情報サービス,参考業務,ホームページ,アメリカ政府

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現代の英国の情報をすばやく効果的に発信するために〜ライブな英国を見る,聞く,読む〜
小竹悦子*,松元涼子**
*こたけ えつこ,**まつもと りょうこ ブリティッシュ・カウンシル
  〒162-0825 東京都新宿区神楽坂1-2
  Tel. 03-3235-8031(原稿受領 2002.1.21)

ブリティッシュ・カウンシルは英国政府の国際文化交流機関です。教育,英語学習,科学技術,芸術の分野において,日英両国の様々な団体の協力のもと,文化交流 活動を行っています。ブリティッシュ・カウンシルの各センターでは,その活動趣旨に沿って,「今の英国を伝える」情報を日本の皆様にご紹介しています。IT環境の 変化,利用する方のニーズの変化を常に意識し,よりフォーカスされた最新情報の提供を追及しています。物理的なセンターという場所と,バーチャルとを自在に組み合わせ,最もインパクトのある形での提供をめざし活動しています。ここではその戦略をご紹介しています。

キーワード:英国,英国文化,教育,英語学習,国際交流,日英交流,文化交流,留学,インターネット,ブリティッシュ・カウンシル

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東京ドイツ文化センター図書館
吉次基宣*
*よしつぐ もとのり 東京ドイツ文化センター図書館
 〒107-0052 東京都港区赤坂7-5-56 ドイツ文化会館2階
 Tel. 03-3584-3203(原稿受領 2002.1.15)

1951年に設立されたゲーテ・インスティトゥートは,世界76ヶ国に128の支部を持つドイツ最大の国際文化交流機関である。その東京支部が,東京ドイツ文化センターであり,ドイツ語教育,様々な催し物,図書館の活動などを通じてドイツの最新の文化を紹介している。東京ドイツ文化センターの図書館は,図書の貸し出しなどの伝統的な図書館の活動以外にも,ドイツ関連の情報を積極的に提供していて,ドイツ関連の質問であれば,原則的にはどんな形のどんな質問にも対応している。現在,インターネットなどを通じてドイツの重要な情報が,直接入手できるようになっているが,言葉の壁があり,一般にはそう簡単には利用できない。そういう意味で,当館の存在意義は大きい。さしあたって,研究者にとって,重要な情報源として,SUBITOと仮想専門図書館を挙げておこう。

キーワード:キーワード:ゲーテインスティトゥート,ドイツ文化センター,ミュンヘン,東京,大阪,京都,アレグロ,スビト,メーリングリスト,ウーヴェ・ローゼマン,ド イツ研究協会,仮想専門図書館湾

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日仏会館図書室:日本のネットワークにおけるフランス専門図書館の役割
ドミニク・フィリピ*
*ドミニク・フィリピ 日仏会館図書室
 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿3-9-25
 Tel. 03-5421-7643(原稿受領 2002.1.24)

日仏会館図書室は一般公開しているフランス専門図書館としては極東アジアで最も古くかつ最も大きい。まず,蔵書とサービスについて言及し,次に,短期発展計画,すなわち,蔵書の充実に関する基本方針,目録の再機械化,遠隔業務,共同目録(NACSIS-CATおよび在日フランス図書館共同目録(計画))について述べる。日仏会館図書室が参加する2ネットワーク,日本の大学図書館ネットワークおよび在日フランス図書館ネットワークで演じる固有の役割に力点を置く。

キーワード:専門図書館,図書館ネットワーク,収集方針,共同目録

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日本貿易振興会アジア経済研究所図書館
菅原房子*
*すがわら ふさこ 日本貿易振興会アジア経済研究所図書館書誌参考課
 〒203-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-2-2
 Tel. 043-299-9713 (原稿受領 2002.1.24)

日本貿易振興会アジア経済研究所は,アジアをはじめとする開発途上国の経済,政治,社会等に関わる専門的研究機関である。それを支えるアジア経済研究所図書館 は,途上国研究に必要な図書,資料を収集,保存するとともに,設立当初から「途上国研究資料センター」として一般に広く開放し,我が国の途上国研究に貢献している。アジ研図書館は,時代の潮流に応じ,利用者のニーズに応えるべく資料・情報の収集,整理,閲覧の図書館業務全般並びに電子化を中心とした図書館システムの改善につとめている。予算および人的制約の中で,書誌目録や全文情報等の電子化を如何に迅速かつ効果的に実現するかが課題の一つである。

キーワード:日本貿易振興会アジア経済研究所図書館,開発途上国,現地主義,OPAC,書誌情報

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豪日交流基金オーストラリア図書館のサービス
久松晶子*
*ひさまつ あきこ 豪日交流基金オーストラリア図書館
 〒108-8361 東京都港区三田2-1-14 オーストラリア大使館内
 Tel. 03-5232-4006 (原稿受領 2002.1.23)

オーストラリア図書館は,オーストラリア政府の豪日交流基金によって管理・運営されている。オーストラリアに関連する図書,視聴覚資料,電子化された資料など を所蔵する専門図書館である。特に研究者の論文やオーストラリア大使館のメディア・リリースなどの資料は全文電子化され,瞬時に検索できるようになっている。また インターネットのホーム・ページ上での貸出し申込みも実施。さらに,現在のオーストラリアを知ってもうらための企画として,個人の利用者のみならず,団体の見学の 応対やサロン・セミナーの開催もしている。2001年には「アートと文化」のコーナーを設け,オーストラリアの誇る新しい側面の紹介も始めた。

キーワード:オーストラリア図書館,オーストラリア,豪日交流基金,電子化資料,論文,フォト・パネル,サロン・セミナー,アートコーナー

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「機械工業図書館」における海外情報の提供
坂本義実*
*さかもと よしみ (財)機械振興協会経済研究所情報資料部
 〒105-0011 東京都港区芝公園3-5-8
 Tel. 03-3434-8230 (原稿受領 2002.1.22)

機械情報産業の調査研究を行う(財)機械振興協会経済研究所附設の「機械工業図書館」(公開)が提供する海外情報を紹介する。所蔵資料は,海外の新聞・雑誌, 統計,ダイレクトリー,年鑑,便覧類,辞書・事典類を多数所蔵する他,電子媒体資料も所蔵する。国内の調査研究報告書など“灰色文献”に含まれる海外情報も重要。 他に海外の産業企業情報を提供する抄録サービス「KSK SCANNER」及び週刊電子ジャーナル「KSK FLASH」があり,いずれも原文提供も行っている。ウェブによる海外情報提供はまだ行っていない。

キーワード:機械情報産業,図書館,逐次刊行物,統計,ダイレクトリー,灰色文献,抄録サービス,電子ジャーナル

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投 稿:21世紀の図書館:ディジタル化をめざして
森田一子*
*もりた いちこ 米国議会図書館 社会科学目録部長
 Washington, D.C. 20540-4360 USA
 Tel. 001-1-202-707-5281 (原稿受領 2002.2.6)

テクノロジーの急速な発展は,図書館の機能に大きく影響する。現在の図書館はその究極の役割として,それらのテクノロジーの採用によって,必要な情報を時間的,または地理的条件に制限されず,勿論館内に限らず,最小限の時間で最適な情報を供給することが要求される。その機能を最も効果的に行えるかどうかは,如何に図書館にディジタル・テクノロジーを適用するかにかかっている。現稿では資料購入,保管,レファレンス,技術の各面でのディジタル応用の例を数点挙げ,今後の図書館の課題を考える。

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