2000年4月号

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特集「出版と情報」の編集にあたって

資料・情報の管理にあたる専門家にとっては,出版物は最も基本的な道具です。この道具を使いこなし,適切な情報をそれを求める人に提供するのが図書館・情報センターの基本的な任務でしょう。大雑把に言うと,この任務を適切に行うために,どのような工夫をすればよいのかを探求してきたのが,図書館学であり,ドキュメンテーション理論であり,その他情報学であると位置付けられます。

 通常図書館・情報センターのサービスの中では,出版物は「与件」として,どの出版物を収集し,提供するかを分析して資料の構築を行います。そこでは,制約条件としての収集予算,人員規模,インフラストラクチャー(建物,ハードウェア,ネット設備など),法制度(著作権法や民法・商法上の扱いなど,また契約事項)などを踏まえて,任務を全うするのに最適な資料を取り揃えていくことが重要な企画となります。
 さて,今回はその収集の裏にある構造,つまり出版を簡単に敷衍してみるために,特集を企画しました。出版という行為は,資料・情報の頒布であるために,それを受け取って情報サービスを行う者にとっては,必要なサービスの与件として,内実の検討は通常必要ありませんが,昨今,電子出版物の拡大に伴い,本来の「任務」との関連がなんとなく重要そうだと感じておられる方も増えていると思われます。
 「出版と情報」という問題を情報部門担当者の目から捨象すると,電子出版に代表される出版環境の変化そのものと,その変化による情報担当部門への影響が大きな関心事ではないでしょうか。現在,出版物によって図られる情報の流通と保存が,新しい時代ではどのように変化していくのか,探求するのは大変に意義あることと考えます。
 今後の出版事業はどう変わるのか,その中で情報担当部門はどのような新しい道具を手中にできるのか,ということに焦点を当てて編集しています。読者諸賢の参考になれば幸いです。
 

(編集担当委員 山地康志,岩澤一男,北島由紀子,棚橋佳子,豊田恭子,松林正己)
 

 

,特集:出版と情報  電子出版メディアの変遷  ―パッケージからオンラインへ

仲俣暁生 (なかまた あきお)フリー編集者。オンライン版「本とコンピュータ」デスク

電子出版という言葉は,これまであまりに多くの意味に使われてきたために,共通の土台で論じることが非常にむずかしい。したがって,電子出版とはなにかを考えるためには,まず「電子出版」という言葉を再定義しなければならない。本稿では,「電子出版」を,印刷本に代わる文字情報の流通システムに限定して論じる。また,「本」とはパーソナルなメディアである,という観点から、電子出版とパーソナル・コンピュータとの密接な関係について述べるとともに,現在起こりつつある電子出版のパソコン離れについて考察する。さらに,国内外の電子出版の歴史を概括した上で,現在行われているさまざまな試みを紹介しつつ,その問題点を洗い出す。

キーワード:電子出版,電子本,マルチメディア,パーソナル・メディア,オンライン・コンテンツ

特集:出版と情報 マークアップ技術と電子出版

桧山正幸 (ひやま まさゆき) 桧山正幸事務所
この記事では,マークアップ技術の観点から電子出版の現状と今後について述べる。マークアップ技術の一般論を解説し,いくつかの応用例を紹介する。さらに,電子出版への実際の応用としてOpen eBook, JepaXの活動を紹介し,最後にXHTMLにも触れる。
キーワード:マークアップ技術,電子出版,XML,SGML,Open eBook,JepaX,XHTML

特集:出版と情報 納本制度改革の動向 ―国立国会図書館の電子出版物への対応―

田中嘉彦 (たなか よしひこ) 国立国会図書館収集部
納本制度は,国内で刊行された出版物を国立国会図書館に納入させる制度として昭和23年に創設されたものである。これまでの納本の対象は,紙媒体による出版物が中心となっており,近年の電子出版物の増大に対応することが急務である。
国立国会図書館では,国立国会図書館法の改正により,CD-ROM,DVD等の有形の媒体に情報を固定した「パッケージ系電子出版物」を納本制度に組み入れ,あわせて,国,地方公共団体等の出版物の納入部数について所要の見直しを行うこととしている。
キーワード:納本制度,電子出版物,国立国会図書館,国立国会図書館法

特集:出版と情報 ブッキングのオンデマンド出版への挑戦

左田野 渉 (さたの わたる) 潟uッキング
出版大手取次である日販は積年に渡って書籍注文品の流通改善に,物流面から取り組んできた。しかし,商品寿命の短サイクル化による「品切」の増大だけは,卸機能の中では改善にも限界があった。このような中,デジタル印刷機の登場により,小ロットの重版が経済的・技術的に可能となった。一冊からでも,受注生産を可能とするオンデマンド出版である。日販は有志出版社29社と,昨秋,潟uッキングを設立して,オンデマンド出版による書籍の流通改革に第一歩を踏み出した。一方で,WEBに存在するコンテンツや,可変印刷の技術などを,オンデマンド出版のニューウェイブとして育くむことを新しい可能性として見出している。
キーワード:絶版,デジタル印刷,出版ビッグバン,コンテンツ,オンデマンド,インターネット

投稿 特許データベースの選び方

小川裕子 (おがわ ゆうこ) オルガノ梶A深井澄二 (ふかい すみじ) 日本ペイント
インターネットの出現で特許情報の世界は大きく変わった。現時点(平成10年〜11年)において,エンドユーザーおよびサーチャーにとって,コスト面と検索の精度面から最も適切と思われるデータベースを考察した。 また,インターネットで提供されている各種特許データベースの中から,誰もが簡単に最適なものを選択できるシステムを構築した。. (注) この論文は,INFOSTAシンポジウム'99で発表されたものです。 
キーワード:インターネット,特許データベース,特許検索,エンドユーザー,サーチャー,ホームページ

投稿(翻訳) 科学系学術出版の改革:図書館員による見通し

著者: ジョセフ・J.ブラニン ニューヨーク州立大学ストーニー・ブルック校、マリー・ケース 米国研究図書館協会
翻訳:梶田英知 (かじた ひでとも),松浦 茂 (まつうら しげる), 古賀香織(こが かおり); 国立国会図書館
学術出版の大量さ,学術情報への費用の上昇,及び情報科学の進歩により,現在,研究図書館員は,エキサイティングで困難な時代を迎えている。この難問の基礎をなすのは,誰が学術出版を所有するのかという問題である。研究図書館員は,著作者が自らの著作権を商業出版者に引き渡すという科学系学術情報の商業化に悩まされている。アカデミーの枠外に出版所有権を位置づけることにより,学者は自らの業績を研究図書館にとって購入・利用不能なものにする危険を冒している。科学系学術出版をアカデミーの枠内に戻すことにより,学術出版システムは,新しいデジタル情報技術の保管的・分配的潜在性の利点を十全に活かすことが可能になる。
キーワード:学術出版,学術情報の商業化,情報技術,著作権,雑誌価格,インフレーション

連載:統計の読み方(第11回)貿易編

布目和美 (ぬのめ かずみ) 慶應義塾大学三田メディアセンター

日本における貿易に関する統計の読み方についてである。国際間の貿易比較や関税政策,通商政策など我が国の経済政策および民間企業の経済活動を見極めるために重要な統計である。国際貿易に関する資料として最も基本となる「貿易統計」をとりあげて,調査の歴史,調査方法などについて説明する。さらに品別の貿易統計を調査する上で重要なキーであり,毎年改正が行われている「輸出入統計品目表(HS条約に準拠)」の改正状況についても具体的な例をあげてふれる。
キーワード:統計,貿易,輸出入,品目表

 

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