2000. 3月号 抄録

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特集「バリアフリーとユニバーサルデザイン」の編集にあたって

建築・情報分野におけるバリアフリー技術の研究開発により,身体障害者の活動範囲が広がっている。これまで図書館の利用や,情報アクセスが困難だった人たちの情報環境が変わってきている。   さらに,これらの技術は限られた人ばかりでなく,より多くの人に役立つと考えられる。社会における意識が変わり,障害という概念が,加齢・病気・妊娠を含めたより広い意味で捉えられるようになり,ユニバーサルデザインとして注目されている。   本特集では,加齢,病気を含め身体的障害を持つ利用者を対象にした,図書館・情報分野におけるバリアフリー・ユニバーサルデザインの意義・技術を紹介する。   また,図書館にとっては新たな利用者層への整備ともなるわけで,ハード面ソフト面での図書館整備や運営体制の在り方について,議論していただいた。  
(編集担当委員 友田暁子,豊田恭子,豊田雄司,重田有美)

日本独自のユニバーサルデザインのあり方  

川崎和男 (かわさき かずお) 名古屋市立大学大学院 芸術工学研究科
米国から提唱されたユニバーサルデザインの来歴について,私が体験してきたことの詳細報告から,グッドデザイン商品選定でのユニバーサルデザイン賞設定理由の紹介。さらにデザインコンセプトとしての七原則を日本的に再吟味することで,ユニバーサルデザインを新しい言葉で読み替えていくことができるのではないだろうか。こうした考察を通して日本独自のユニバーサルデザインの新しい定義性を見つけだしていきたい。   日本独自のユニバーサルデザインの具現化,それは本当に豊かな生活のために,生と死を直視していく厳しさの中に,豊潤さを実現していく人間のやさしさがあると考えている。
キーワード:ユニバーサルデザイン,バリアフリー,グッドデザイン,障害者,共用品,ヒューマンセンタードライフデザイン

国立大学図書館と公共図書館の施設設備の設備状況  大学図書館における身体障  害者サービス

篠塚富士男 (しのづか ふじお) 筑波大学図書館部情報サービス課  
大学図書館における身体障害者サービスの現状を,特に施設・設備の問題を中心に述べる。はじめに,国立大学図書館協議会での取り組みとその成果としての報告書について紹介する。次に,大学図書館における身体障害者サービスの特性について論じる。また,施設・設備の実際について,筑波大学の事例をまじえて概観する。
キーワード:身体障害者サービス,大学図書館,施設・設備

学術図書の視覚障害者サービス

田中徹二 (たなか てつじ) 日本点字図書館館長  
視覚障害者は点字図書を指で読み,録音図書を耳で聴いて読書する。全国の盲人図書館は,彼らのために多数の点字図書やカセット図書を所蔵している。しかし,そのほとんどは,小説や随筆など,娯楽性の高い図書である。大学生や研究者,専門的な職種に従事する人などが必要とする専門書,学術書は非常に少ない。  その問題を解決するために,日本点字図書館や視覚障害者総合支援センターでは,個人の希望に応じて点訳したり録音したりするサービス,対面リーディングサービスなどを提供している。
キーワード:日本点字図書館,点字図書,録音図書,専門対面リーディングサービス,個人希望点訳・録音サービス,視覚障害者総合支援センター

資料1 医学情報の患者へのバリアフリー

山室眞知子 (やまむろ まちこ) 医療法人総合病院京都南病院図書館  
 図書館のバリアフリー化が進み,すべての利用者が必要とする資料と知識を得ることが可能となったが,医学関係情報に関しては例外とされ,医療関係者以外の一般市民,とくに患者にとっては非常に得難い状況にある。  インフォームド・コンセントの提唱により,患者が医師の説明を理解するためにも医学情報の提供が望まれている今日,そのバリアの原因を探り,医学情報の利用指導のもとにバリアフリーを試みた一例を紹介する。
キーワード:バリアフリー,医学情報,患者サービス,病院図書館

図書館における共用品・共用サービス

森川美和 (もりかわ みわ) 財団法人 共用品推進機構  
1981年国際連合は,国際障害者年のテーマを,「完全参加と平等」と定め,公共建築物,交通機関,住宅及びその要素である設備,備品などが,障害者の利用を考慮した観点で整備され始め,運動能力や感覚器官などの機能低下にも考慮して,「福祉機器や用具」などの専用品の分野においても,「ユニバーサル・デザイン」や「共用品」の観点で見直しが進められるようになってきた。  90年代に入ると,障害者や高齢者の社会参加やQOL(Quality of life:生活の質)の向上と関連して,日常生活や教育,情報の確保などで「共用品・共用サービス」へのニーズは高まりをみせはじめた。
キーワード:共用品・共用サービス,共用品市場規模調査,不便さ調査,配慮点の検討,普及・啓発活動

第31回夏季特別セミナー サーチャーの社会的役割

山崎久道 (やまざき ひさみち) 宮城大学事業構想学部  
.(注記)以下の小論は,第31回夏季特別セミナーの2日目に私が「サーチャーのSWOT分析」としてお話しさせていただいた内容を,研修委員及び会誌編集委員会の求めに応じて執筆したものである。また,初日のパネルディスカッションで話題になった点や,2日目のワークショップでの議論も随時,参考にした。ただし,他の記事と重複する点があることはご了解をいただきたい。また,せっかく会誌に執筆する機会を与えていただいたので,当日の限られた時間では十分お話しすることができなかった私の意見・考察を加えて構成させていただいた。サーチャーの皆さんが自分自身を振り返って考える上で,また当協会の重要な専門性の源泉について考量する上でなんらかの参考になれば幸いである。  

投稿(翻訳) 雑誌価格に及ぼす出版社合併の影響:予備報告

マーク J. マッケイブ ジョージア工科大学 マークJ. マッケイブ*著,梶田 英知 (かじた ひでとも)**,松浦  茂 (まつうら しげる)***,古賀 香織 (こが かおり)****訳  国立国会図書館   

大学図書館員は,過去十数年以上にわたる間断ない雑誌価格高騰に対するかなりの動揺を抱いている。しかも,図書館員の怒りは少数の大出版社(多数のタイトルを取り込んでいるという意味での「大」出版社)に対して向けられており,それらの大出版社が価格を左右する力が,彼らの予算を目減りさせ,学問を危機に晒しているというのであった。この市場でもし出版社が競争を阻害する方向で動いているのであれば,我々は,それが「どのように」「なぜ」おこっているか,確認するために新しい分野を開拓することが必要となる。

原文はhttp://www.arl.org/newsltr/200/mccabe.htmlを参照。

キーワード:雑誌価格,インフレーション,独占,寡占,反トラスト,合併

連載:統計の読み方(第10回) 商業編

永嶋千夏子 (ながしま ちかこ) 慶應義塾大学三田メディアセンター資料サービス担当  
官庁統計では『商業統計表』,『商業販売統計』,『商工業実態基本調査』,民間統計では『流通統計資料集』,『日本マーケットシェア事典』,『日本百貨店協会統計年報』の概要,利用事例とともに関連する統計,年鑑リストを作成した。その他に,現在官公庁で進められているクリアニング検索システムと新世代統計システムについて紹介する。
キーワード:統計,商業,卸売業,小売業

 

 

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