2000年1月号抄録

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年頭挨拶 2000年を迎えて

社団法人 情報科学技術協会   会長 權藤卓也  
明けましておめでとうございます。   いよいよ2000年という年を迎えて,今年は本当に大きな節目の年になりそうです。まず当協会ですが,1950年にUDC協会として設立されましたので,今年はちょうど50周年にあたります。設立された9月25日を中心に記念式典などの記念行事を計画しております。   一口に50年といいますが,半世紀,長い歴史を刻んできました。その間,情報処理技術の目ざましい進歩発達によって,情報・知識の取扱や管理の手法も随分様変わりしてきました。当協会の活動内容もこれに対応して大きく変化してきていますが,それでも人の持っている,或いは生産した情報や知識を管理,伝達,利用する原理原則の基本については一貫して変わることなく続けてきています。しかしながら,これからの新しい時代に向かって,当協会は如何にあるべきかという新しい行動計画について,一昨年以来いろいろと検討を重ねてまいりました。今年からはその成果を踏まえて,一つ一つ実行に移してゆく予定です。   今年の経済環境は昨年と同じように明るくはなさそうですが,インターネットを利用するビジネスも本格化し,情報の環境もインターネットのウエイトが更に広がりそうです。当協会もいろいろの面で十分に対策をたてて,対応してゆかなければなりません。   昨年のDATABASE '99 TOKYOでは,前年のOUGに引き続いて今回は当協会が出展しました。このデータベース展示会は,1982年に当協会が初めてデータベース・フェアとして開催したものが年々規模が拡大してゆき,1989年に主催を日本データベース協会に委譲したものですが,100社に近い出展社があって,情報の時代を実感させられました。   こういう時代となって文部省も情報教育の強化を打ち出していますが,当協会も大学教育だけでなく,中学高校からの情報の基礎教育や,高齢者も含めた一般社会への情報教育への志向を強めてゆきたいと考えます。

特集「情報検索の新潮流」の編集にあたって

新しいミレニアム,2000年代の幕開けです。 情報検索は,コンピュータの高性能化や検索システムの発達により,大量の全文検索を高速に行うことが可能になるなど,特にここ数年の間に急速な進展を遂げています。 また,インターネット上のいわゆるサーチエンジンの普及により,情報検索というものが,図書館員やサーチャーのためだけのものでなくなり,多くの人々にとってより身近なものとなりました。 一方で,マルチリンガル,マルチメディア検索への対応や,人工知能の導入,検索技術の質的向上などといった,今後さらに研究開発を進め,実用化されるべき課題もあります。   データベースやサーチエンジンを日常的に利用していても,意外とその仕組みは知られていないのではないでしょうか?また,どのような研究開発がなされ,それがどのように生かされようとしているか,といった最新の動向についても興味あるところと思います。 そこで,今回の特集では,以下のような構成により,情報検索をとりまく環境を鳥瞰することにしました。   まず,情報検索の研究やサービスが今まで発展してきた過程を概説していただき,最近のトピックスについても言及していただきました。   次に,サーチエンジンの登場により,すっかりなじみの深いものとなった全文検索エンジンについて,そして,今後ますます進化が予想される,静止画・動画・音声などのマルチメディア情報の検索について,それぞれの検索技術を解説していただきました。   また,検索の「質」を向上させるため,情報検索システムの研究開発には必要不可欠な,性能評価実験のためのテストコレクションについて,報告していただきました。  さらに,学術系と商用系の情報検索サービスからそれぞれ一事例ずつ,注目すべき新たなサービス展開について,ご紹介いただきました。   奇しくも今年は,(社)情報科学技術協会創立50周年に当たり,本誌も第50巻となります。それは,情報検索の発展と共に歩んできた歴史と言っても過言ではありません。 そんな今,情報検索の歴史を振り返るとともに,新たな流れを知ることにより,さらなる発展を期待しつつ21世紀を迎えたいと思います。  
(編集担当委員 小陳左和子,岩澤一男,豊田雄司,長谷川正好,藤本一光,松林正己)

特集:情報検索の新潮流 情報検索の発展過程と新たな動き

岸田和明 (きしだ かずあき) 駿河台大学文化情報学部
本稿では情報検索の発展過程について概観する。具体的にはまず,事後結合索引法・ブール検索・シソーラス・自由語での検索などの伝統的な情報検索技法について述べ,さらに,商用の情報検索サービスにて提供されるデータベースの歴史やインターネット登場以降の最近の情報検索の変化について議論する。次に,情報検索研究の展開に関して,特に,統計的・確率論的検索手法,自然言語処理技術の適用,検索実験プロジェクト,利用者志向アプローチを取り上げて説明する。最後に,最近の情報検索研究の動向について述べる。   
キーワード:情報検索,歴史,データベース,インターネット,検索技法

特集:情報検索の新潮流  全文検索エンジン

*松井 くにお,** 難波 功,***井形伸之 (*まつい くにお, **なんば いさお, ***いがた のぶゆき)  兜x士通研究所   
全文検索技術は,統制語によるキーワード付けを行う方式と比較して,全処理を自動化できることによる低コスト性,検索量の増加による再現率の向上,という特徴を持つ。全文検索を実現するアルゴリズムには,文字列検索,シグネチャファイル,転置ファイルなどがある。日本語の全文検索システムでは特徴素の取り方として,形態素解析(単語)とN-gram(文字)があり,それぞれ得失がある。転置ファイルを用いた全文検索技術では,ランキング検索が用いられることが多いが,これには通常tf-idf法(文書中の単語■度×文書DB中での単語の重要度)により関連度が計算される。  キーワード:全文検索,情報検索,文字列検索,シグネチャファイル,転置ファイル,不要語,ランキング検索,tf-idf,言語横断検索  
キーワード:全文検索,情報検索,文字列検索,シグネチャファイル,転置ファイル,不要語,ランキング検索,tf-idf,言語横断検索  

特集:情報検索の新潮流 マルチメディア検索技術

木本 晴夫 (きもと はるお) NTTサイバースペース研究所
マルチメディア情報の検索技術の最新状況を解説し,今後の課題と技術開発の動向を探る。マルチメディア検索として,画像検索と内容検索,ハミングによる音楽検索,音楽への感情価の自動付与,音声検索,映像検索,感性検索を取りあげる。今後の技術課題や動向として,キーワード検索と内容検索の両者の融合や,マルチメディア情報流通での著作権者保護のための技術や制度についてもふれる。  
キーワード:マルチメディア,情報検索,画像検索,内容検索,音楽検索,音声検索,映像検索,感性検索,キーワード検索,著作権者保護  

特集:情報検索の新潮流 情報検索システムの評価:  テストコレクションと評価ワークショップ

神門典子 (かんど のりこ) 学術情報センター 研究開発部
評価はどのような科学技術分野でも重要な課題である。情報検索システムの検索性能評価には,テストコレクションを用いる。多くの研究者が共通に利用できる標準的テストコレクションは,検索実験の実施を容易にし,システム間の分析的比較を促進することによって,情報検索研究の発展に貢献してきた。本稿は,検索システムの評価を巡る動向をテストコレクションと評価ワークショップを中心に概観し,IREXとNTCIRという日本のプロジェクトを紹介し,今後の課題を展望する。  
キーワード:情報検索,評価,テストコレクション,日本語情報検索,言語横断検索,情報抽出,用語抽出,NTCIR,IREX

特集:情報検索の新潮流 情報検索サービスNACSIS-IRの新たな展開

*木村 優,**吉岡真治,***神門典子,****影浦 峡,*****大山敬三  (*きむら まさる, **よしおか まさはる, ***かんど のりこ, **** かげうら きょう, ***** おおやま けいぞう)   学術情報センター事業部 学術情報センター研究開発部
学術情報センターの情報検索サービスNACSIS-IRにおける検索システム及び検索インタフェースの移行について述べる。センターでは,1987年から汎用機を利用した情報検索サービスを行ってきたが,平成12年1月からオープンシステムに全面的に移行し,全文検索機能による検索システムを提供する。新しい情報検索システムでのデータベースの構造,全文検索に対応する検索機能及びWWWを用いた検索インタフェース等について報告する。  
キーワード:NACSIS-IR,情報検索,全文検索,データベース・サービス  

特集:情報検索の新潮流 Factiva社ウェブサービスの新たな展開  -Factiva社のウェブセンターはビジネスユーザーに  “Best"なものを決めてくれます-

Timothy M. Andrews ティム・アンドリュース ファクティバ (ダウジョーンズ アンド ロイター)
ダウジョーンズインタラクティブのウェブセンターは,ダウジョーンズのエディターが厳選した質の高いビジネス関連サイトへのリンクおよび検索機能を提供する便利な機能です。これらのサイトは定期的にチェックされており,いつでも確実にアクセスできるように管理されています。ユーザーは,ダウジョーンズインタラクティブの画面から優良サイトのみを検索でき,補完情報として利用することができます。  
キーワード:ダウジョーンズインタラクティブ,ウェブセンター,ビジネス,アップデート  

連載:統計の読み方(第8回) 金融編 

上岡 真紀子 (うえおか まきこ) 慶應義塾大学三田メディアセンター
日本における金融に関する統計について紹介する。日本の金融市場の種類と金融政策について説明し,統計との関係について述べる。金融に関する包括的な統計書として日銀が提供する「金融経済統計月報」を取り上げ,そこに掲載される主要な指標についてもふれる。さらに,金融政策の中間目標としてのマネーサプライ統計と,金融全体を鳥瞰する統計として資金循環表を取り上げる。それぞれ統計の定義,枠組み,利用例について紹介する。また,最近の金融をめぐる環境の変化を反映し,今年相次いで発表された両統計の見直しについても紹介する。  
キーワード:金融統計,マネーサプライ統計,資金循環表  

 

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