会長挨拶

年頭のごあいさつ

一般社団法人 情報科学技術協会
会長 清田 陽司(きよた ようじ)

新年あけましておめでとうございます。

2020年から続くコロナ禍は,INFOSTAの活動にも大きな変容をもたらしました。コロナ禍以前のINFOSTAは,理事会や委員会などの多くの会合を対面にて行っていましたが,現在ではほぼ完全にオンライン会合が主体となりました。このような大きな変容を経ても,会誌,検索検定,研究会,標準化,シンポジウム,セミナーなどの諸事業を滞りなく進められているのは,ひとえにINFOSTAの諸活動を支えてくださっている皆さまのお陰です。心より御礼申し上げます。

一方で,昨年は徐々に行動制限が解除されつつある社会情勢を見極めた上で,新春セミナーやINFOPROシンポジウム,検索検定の合格者を祝う会など,いくつかの催事について対面形式(一部,ハイブリッド開催)を徐々に復活いたしました。現地にて久々の交流や議論を楽しまれている皆さまのご様子を拝見して,「人と人がつながる」というコミュニティの価値を,改めて認識いたしました。今後は,オンライン形式と対面形式の両方の利点をうまく取り入れ,メリハリをつけた運営を図ってまいります。

昨年の年頭のごあいさつにて,INFOSTAに対して皆さまが抱かれている期待として,「これからの時代に必要とされるコミュニティを新たに形成していくこと」と,「デジタル・トランスフォーメーション(digital transformation; DX)の推進に必要とされる学びの場を提供すること」の二点を挙げました。これらの期待にお応えすべく,執行部では理事会での議論を経た上で,さまざまな施策を実行いたしました。この場をお借りして,その一部をご紹介いたします。

  • INFOSTAの意思決定を担う理事会の活性化を図るため,毎回何らかの「変化」を取り入れた運営を行いました。一例としては,新春セミナーと同日に,会員の方向けに公開形式で理事会を開催したり,理事の皆さまに新事業のアイディア出しを宿題としてお願いしたりいたしました。また,重要な意思決定を迅速に行うため,必要に応じて臨時理事会を開催しました。
  • INFOSTAと関連の深い分野を扱う学協会との連携を進めました。5月には,人工知能学会と共同で「AI・人工知能EXPO」にブース出展し,ミニワークショップを開催しました。また,11月に開催された「図書館総合展」では,神奈川県資料室研究会,専門図書館協議会との合同イベントを開催しました。今後,こうした連携を通じて築かれた関係を活かし,会員基盤の拡大に資する施策につなげていく予定です。
  • 20周年を迎えたINFOPROシンポジウムにおいて,Webサイトのデザインを刷新するとともに,既存のINFOSTAのコミュニティ外の複数の企業様より,新たに協賛いただきました。
  • 生成AI(generative artificial intelligence)などのAIシステムが急速に社会に普及しつつある状況を踏まえ,AI利活用に関する学びの場を形成していくことを目的として,ChatGPTセミナーを2回にわたり開催し,延べ数百人の方々にご参加いただきました。現在,AI利活用にフォーカスした研究会や,学協会(学会,研究会,協会,協議会,コンソーシアムなど)のDXの課題に取り組む研究会の立ち上げに向けて,準備を進めております。

AIシステムが社会に浸透する中,私たちがこれまで当然のように受け入れてきた「知識・スキルに立脚した学び方」にも,根本的な変容が求められています。前述のChatGPTセミナーでは,AIシステムや情報に向き合う私たちの「態度」(attitude)が,生み出される成果に大きな影響を与えるといった議論がありました。あらゆる知識やスキルがWeb上で簡単にアクセスできるようになり,コモディティ化がますます進行しています。だからこそ,他者との対話,インタラクションの中でこそ可能となる本質的な学びの価値は,これからますます高まるのではないでしょうか。これからのAI社会において,情報専門家を名乗るにふさわしい「態度」をともに研鑽していくコミュニティを,皆さまとともに形成してまいりたいと存じます。

また,INFOSTAの運営自体も,会費やイベント参加費のオンライン決済,スマートフォンによる情報アクセス,オンライン上での会員間のスムーズなコミュニケーションなど,現代社会のニーズを満たす形に変容させていく必要があります。このたび,理事会での議論を経て,プロフェッショナル中心の業務遂行体制への変革,および事務局の移転を決定しました。事務局の移転は,2024年5月頃を予定しております。この変革の目的は,デジタル技術活用を前提とした業務プロセスの簡素化と,新たな潜在会員層の方々へのリソースの振り向けです。INFOSTAの諸事業についても,試験実施の全面CBT化,会誌発行・会員管理などの業務を委託している事業者との連携強化,さらにWebサイトのデザイン・イベント開催・デジタルマーケティングなどの「その道のプロ」に適切なタイミングで力を貸していただける関係性の構築を進めることで,円滑な業務移行に努めてまいります。会員の方々には,一時的にお手間をおかけすることもあろうかと存じますが,多くの先人の方々が綿々と積み上げて来られたINFOSTAの精神を,次の世代に繋いでいくため,皆さまのお力をお貸しいただけるよう,お願い申し上げます。

これらの取り組みを通じて,INFOSTAは皆さまの継続的なご支援,ご協力を賜りながら,新たな挑戦を進めてまいります。皆さま一人ひとりがこのコミュニティを通じて成長し,より良い未来を創造していくことを願っています。新たな一年が皆さまにとって,健康と幸せ,そして成功に満ちたものとなることを,心から祈念しております。

2024年元旦